BroadcastAsia2007がシンガポール・エキスポで開催されました

去る6月19日から3日間、シンガポール・エキスポにて、アジア放送・マルチメディア技術国際見本市、Broadcast Asia 2007が開催された。Broadcast Asiaは今年で12回目になるが、97年度以前は2年に一回開催されていたもの。

今年のイベントテーマの”Digital: The Journey Forward”のごとく、Broadcast Asia は現在、CommunicAsia、EnterpriseIT、 InteractiveDMEの3つのイベントも抱き合わせで併催され、IT技術の発展に伴って著しく変貌をとげている放送とデジタル放送技術をテーマにした、アジア最大規模の見本市となっている。

NABやIBCのような放送技術に特化した市場から規模を広げ、CESやインフォコム、インターロップの市場まで混在した、デジタル技術を駆使したイベントであった。また今年は新たにコンピュータ・グラフィック市場に執着した「CG Overdrive」というカンファレンスも行われ、CG技術に関したレクチャや作品発表のほか、主にシンガポール出身の企業が参加したブース展示が催されていた。

余談だが、市場リサーチ会社のPricewaterhouseCoopers LLPによると、市場支出に基づくグローバルメディアとエンターテインメント市場の規模は、IT技術の発展に伴いインタラクティブとデジタルメディアの潜在的市場可能性を考慮して、2005年の米国1兆3400億ドルであると見積もられていた。 これが2009年までに1兆7800億USドルまで増強すると予想されている。アジア・パシフィックは世界一高い潜在的成長市場として評価されており、2760億USドル(2005年)から2009年には4310億USドルに上がると予想されている。

Reported by ザッカメッカ・山下香欧

CommunicAsia

併催されたCommunicAsiaは、1979年に初開催以来、多くの展示会を併合し、現在ではアジアで最大規模の情報技術と通信関連の展示会といわれる。英国、米国、韓国など21カ国が参加したグループパビリオンもフロアに登場した。EnterpriseITとInteractiveDMEは、CommunicAsiaに融合されているといってもよい。今年はWiMAXやLTE(long term evolution)などの高速移動体通信技術、DVB-Hなどのモバイル端末向けの映像配信、IPTVについて話題が集中していた。WiMAXに関しては、日本のケーブルテレビ(CATV)事業者も事業化に向けた検討を進めるとしている。中国のファーウエイ・テクノロジーズや韓国サムスン電子など、アジア地域から多数の通信機器ベンダーのブースに並び、日本からはNTTドコモや松下電器産業、三洋電機が出展していた。三洋電機は充電池のeneloopを大きくアピールし、USB端子で電力出力するユニットなどを出展していた。

ノキアのブースでは、DVB-H方式によるモバイルTV放送のデモンストレーションが出荷開始されたばかりの新製品端末で行われていた。モバイル関連といえば、ブースはBroadcast Asia側(ホール8)に出展していたゼンテックは、会期中にDVB-H事業に本格参入することを発表している。

ゼンテックはシンガポールで政府から試験放送ライセンスを付与されたPGK Media 社と、シンガポール・テレコム傘下の最大手システムインテグレータのNCS 社と提携し、TV2GOというモバイル放送事業を始める。大手番組提供社、そして端末提供社を揃え、端末にDVB-H 対応受信端末(USB やSDIO)を提供することで、場所を問わず番組視聴を可能とするサービスを提供する、というもの。主に日本のワンセグ放送に対して、世界初のSDIO ワンセグ受信端末の商品化やワンセグ・モジュール開発など先進的な取組みを展開している。

第3世代携帯電話(3G)がアジア諸国で少しずつ普及しはじめていることから、3G向けの機器やサービスを出展しているブースも見られた。NTTドコモもその1つで、ブースでは日本市場で展開しているFeliCa機能を使った「おサイフケータイ」や「モバイルSuica」といったサービスや端末シリーズを展示しており、次世代的な端末サービスに興味をもった大勢の入場者で賑わっていた。

Broadcast Asia

これら融合したイベントは、シンガポール・エキスポのホール2から9まで合計69,000スクエアを使っていたが、Broadcast Asiaは7から9までの3ホールのみ。全体的に85%以上が海外からの出展で、今年は65カ国から2413社、その3分の1がBroadcast Asia/ InteractiveDMEへの出展だった。日本からはキャノン、松下、池上通信機、日立国際電気など21社がBroadcast Asiaに出展していた。また、フランス、ドイツ、中国やアメリカら、9カ国がグループパビリオンとして参加した。今年の来場者は12,750人で、そのうち3割がシンガポール以外からの来場者であったと、主催側から発表されている。

BroadcastAsiaは、似通ったイベントが立て続けに開催される時期に開催されることもあり、毎年縮小気味である。また、NABとIBCの中間に開催されることもあり、新しく発表される製品はほとんど見られず、NABの焼きなおしといった感がある。ソニー、Dayang、Sobeyといったベンダー達の姿は見られなかった。反面、各国パビリオンでは、中小規模の企業からも意欲的な製品が出展されていた。また、出展社としてシステムインテグレータや総代理店が多いのも、この展示会の特徴かと思われる。ホールに入って大きいブースを構えて目立っていたのは、Harrisだ。製品ジャンルが多いだけにNABでは2ブースをテーマに分けて出展している。NABほどではないが、それでもHDTVのコンテンツマネージメント系のシステムやIPTVソリューション、そしてNEXIOサーバをコアにした報道システムを展示していた。初出展だという、デンマークからのAxon Digital Design社では、モジュラーシステムとトランジションコンプライアンス・システムを出展していた。後者製品、TRACSシステムは、1台のリクエストサーバと複数のレコーダで構成された、オートメーションでコンテンツを記録、一定期間保存できるハードディスク・システム。Axon Digital Design社はアジア市場でも実績を上げてきており、次期北京オリンピックでもHD-OB中継車に搭載されるなど、数多くの製品の採用が決まっている。日本でもユーザーを有する、という。いつもならば大勢の立ち寄りがみられるクオンテルのブースは閑散としていた。NABで発表した、Genetic Engineeringという、一貫したワークフローを展開できるDIソリューションもあまりアプローチ性はなかったらしい。

今年のメインはやはりHDTVだろう。シンガポールでもHDTVの試験的放送は既に行われており、本放送を年内に実施する予定もでてきている。たとえば、シンガポールのHDTV事情をブースで紹介した3社、メディアコープ、スターハブとシングテル。地上波側ではメディアコープ社が出展しており、ブースでは既に試験的放送をしているHD5を見せていた。またASEAN諸国がDVB-T方式を採用してデジタル放送を実施することもあり、DVB(Digital Video Broadcasting Project)は大きなスペースをとったブースを構えてHDTVのデモを流していた。日本勢では、HDTVに絡み、HDTV関連のカメラ展示が際立った。松下では、メディアコープに納入したというAJ-HPX2100とP2対応のAG-HPX502を展示、池上通信機からは、ENGとしても使える軽量サイズの3CCD、HL-65WやHDカメラのHDK-79EXIII、キャノンはHJ40x14B、日立国際電気もHD軽量サイズのHV-HD30をアピール。

会場ホール8では、HDスタジオ「HD Xpreience」がシステムインテグレータのBES社のもと、1.5億円ほどの機材を集めて設計され、地元のMediaCorp社のオペレーションにより特別番組が放送された。スタジオ設備で協力したベンダーは、松下電気、AKG Media Associate、フジノンやHarrisや17社。番組は会場ホールに設置されたプラズマディスプレイで観ることができ、またWEBキャストとノキア社ブースに設置したモバイル経由でも放送された。