ASEAN地域で沸騰中の映像産業の熱さとは?

夏は35℃を超える気温と湿気でここシンガポールはとにかく暑い。ここ数年の経済成長著しく、まさにASEANの中心であり何もかもまさに熱い!ASEAN諸国を初めてとして、近隣のインド等を含め、まだまだ経済成長が見込まれる実に多くの諸島があり、映像産業も近年盛んになっている。ケーブルテレビや通信が日常に欠かせないインフラである事は言うまでもない。商法や税制優遇措置で国家を上げて戦略的にビジネスの拠点を誘致するためASEANやアジアでの拠点とする海外企業も多い。

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マリーナ地区にあるマリーナ・ベイ・サンズ・ホテルのコンベンションセンターが会場。ちなみにNABが開催されるラスベガスのSandsグループが運営している

成長著しく、好景気に湧くシンガポールで毎年6月に開催されるのが、BroadcastAsia2014(以下:BCA)だ。会場は、マリーナ・ベイ・サンズ・コンベンションセンター。今年のBCAは6月17日から20日まで開催され、規模は非常にコンパクトだ。同時開催されているCommunicAsia2014(国際通信機器展)やEnterpriseIT 2014(クラウド、ビジネスとITソリューション展)を合わせるとInterBEEぐらいの規模となる。来場者数の熱気はどこか日本とは違って非常に熱いものを感じる。

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入場にはドレスコードも設けられている(亜熱帯地域ではあるが、半ズボン、サンダルは厳禁)

BroadcastAsia2014でも4Kを中心に…

ASEAN地区では、NAB後に最新映像機器を見る事が出来るのがBCAになる。映像業界のトレンドを追う指標は、展示会を追ってみるとよくわかる。4月のNAB Showで新しい商品の発表が行われ、日本においては、秋のInterBEE開催で実機を確認するのが通例だ。ここシンガポールでも同様にNABで発表されたものを確認する意味での展示会として、ASEAN地域の人にとっては、BCAはその役割を大きく担っている。

コンシューマを含めNABで発表された最新の製品や機材を、コンパクトにまとめた会場に注目の製品が抽出されたカタチで一気に見ることができる。またメーカーが直接展示するのではなく現地ディーラがメーカーを冠にブースを出展する事が少なくない。取り扱う商品を展示するので、競合メーカー製品も仲良く肩を並べる事もある。ユーザーからすれば嬉しい限りだ。

BCAでもやはり関心は4Kである。しかしながらアジア地区とは異なり、4Kもテレビ放送(UHD)よりも映画側での関心が高い。“The Cinematography FILM Production Zone”が設けられ、デジタルシネマに関する制作のプロセスを一堂に会したコーナーがあり、多くの人が関心を寄せていた。キヤノンは、4Kシアターを設け連日スクリーニングを行っていた。

■Panasonic
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パナソニックは会場をスイートで貸し切り、教育、ビジネス、小売と各業種に合わせたソリューションを個別展示。なかでも4K撮影に関するソリューションは分かりやすく、完成間近のVARICAM 35/HS、GH4そして先日発表された4K撮影可能なデジタルカメラDMC-FZ1000も展示され、多くの人だかりができていた。

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4K撮影ソリューションが勢揃い

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LUMIX DMC-FZ1000は、撮像素子に1.0型のMOSセンサーを採用し、レンズ一体型のデジカメでは世界で初めて4K動画撮影に対応。発売は7月を予定

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CCC(CUSTOMER CARE CARAVAN)ASEAN地区特定で、パナソニック自身が行うユーザーサポートサービス

■SONY
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現在開催中のワールドカップの開催国であるブラジルをフィーチャーしたハンズオンブースを設け多くの人だかりが出来ていた。なぜか途中からサンバダンサーとの撮影会となりその模様をPXW-X180やF55などで試す事が出来た。こういう構成も御国柄なのか…。

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注目のα7Sの展示も人気であったが、やはり、カムコーダーに人気が集まる。PXW-X180に続き、先日発表された PXW-X160もBCAで初お披露目。1/3型フルHD Exmor3CMOSイメージセンサーと、広角26.0mm、光学25倍のGレンズを搭載したハンディタイプのXDCAMメモリーカムコーダー。電子制御により濃度を変えられる新しいバリアブルNDフィルターデバイスにより、連続的に1/4 – 1/128の設定が可能になる。

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4KハンディカムFDR-AX100をベースとして開発中のXDCAMのハンドヘルドサイズカムコーダーを参考出展

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ASEANでは、非常に人気のあるHXR-MC1500P。その需要は未だ衰えず

■Canon
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CINEMA EOS SYSTEMシリーズの展示を始め、先日7月に発売されることが発表されたXF205の展示が人気だった。

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XF305と105の丁度中間に収まるXF205。小型でありながら広角 / 高倍率化を達成した、26.8-576mm、光学20倍ズームレンズを搭載し期待される製品

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会場横に4Kシアターを設けて、CINEMA EOS SYSTEMシリーズで撮影された作品を上映

■The Cinematography FILM Production Zone
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まさに映画製作に必要な機材が一堂に介したゾーン。カメラは、ARRI、AJA CIONを始め、レンズは、ライカ、Cooke、Zeiss、Angénieuxなど、その他にも周辺機器が一カ所にまとめられているのもメーカーではなく、ASEAN地区のディーラーがこのゾーンを運営しているためだ。

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ARRI ALEXAやAMIRAにAngénieuxの各種レンズ

BCA2014_993.jpg 日本未発売のZEISS Cinemizerも展示されていた。
■ATOMOS
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今年からブースを構えたATOMOS社。注目はやはりこの秋に発売になる4KレコーダーSHOGUN。展示されていたSHOGUNはモックだったが、GH4やα7S等との組み合わせでカジュアルな4K制作の提案を展示していた。

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会場入り口の大きなバナーで迎えてくれるSHOGUN

■Blackmagic Design
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NABでもInterBEEでも毎回最大面積でブースを出展する同社。BCAでは、会場エントランスに出展。御馴染みのブラックマジックデザイン・ウォールで全商品を紹介。

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NAB Showでセンセーショナルに発表されたBlackmagic URSAとBlackmagic Studio Camera

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Blackmagic Pocket Cinema CameraとBlackmagic Production Camera 4Kも人気

■DJI
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NABで発表されたジンバルスタビライザーRONINやカメラ部分が刷新された最新のPHANTOM 2 VISION+を展示。会場が狭いながらもブース内にデモゾーンを設けテストフライトを行っていた。

■Roland
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音響ブースゾーンにRolandも出展。日本でも先日プライベートショーが開催されたが、BCAも同じ内容でコンパクトに展示。ASEAN地区でもRolandファンは多く、特にマルチフォーマット・マトリクス・スイッチャーXS-84HやAVミキサーVR-50HDに注目が集まっていた。

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新製品のXS-84Hは、映像マトリクス・スイッチャーだが、音声もタブレットでコントロール可能で、音声映像オールインワンのマルチフォーマット・マトリクス・スイッチャー

WRITER PROFILE

猪蔵

猪蔵

いつも腹ペコ。世の中の面白いことを常に探っている在野の雑誌編集者。