txt:石川幸宏 構成:編集部
AVC ULTRAの全貌が明らかに
4K、ステレオ3Dといったハイエンド・テクノロジーが、一通りの方向性を見いだし、確定されてきた現状において、今後の映像技術は一体どこに向かうのか?IBC2011ではこうした点に着目してみた。その中で特に今後の映像制作クオリティを左右するポイントとして考えられるのが、圧縮技術の更なる追求だろう。
IBC2011では、今年4月のNABで発表されたパナソニックの業務用映像コーデックAVC-Intra/AVCHDを再定義するコーデック体系”AVC ULTRA”のサンプル映像のデモンストレーション上映とその詳細仕様の体系構成が初公開された。NAB時点ではコンセプトのみの発表で、その概要はよく掴めない状況だったが、今回発表されたAVC ULTRAの全貌は、非常に判りやすいものだ。
AVC ULTRAとは、AVC-Intraを核とするAVC/H.264コーデックの全体を表す、パナソニックの業務用コーデック全体の世界観と定義され、AVC-Intraをベースに低圧縮/高速転送レートで4KやRGB 4:4:4などの非圧縮に近い高解像度を保持するハイエンド向きのコーデックから、従来のDVと同じ25Mbps以下の低ビットレートでもAVC/H.264独自の圧縮技術により高画質かつ運用効率の良いコーデックとして展開できるものまで、幅広いレンジに対応する。
圧縮効率が今後のキーワード
ハイエンドの部分では、これまでのAVC-Intraをさらに拡張しマスタリング対応のRGB4:4:4、4K/2Kなど、大型映像でより非圧縮に近い高解像度を目指す『AVC-Intra Class 4:4:4(4:4:4 12bit/200M、400M)』と『AVC-Intra Class 200(4:2:2 10bit/200M)』を新たに拡張。会場のデモンストレーションの映像では非圧縮映像とClass 200の映像との比較が表示されていたが、既存のモニター環境ではその差異はほとんど感じられない。
またパナソニックとして初めてLong GOP対応の独自コーデック『AVC LONG G』を新たに設定。Long GOPの優位性を取り込みつつ、AVC/H.264の利点を活かした新しい圧縮技術を用いて4:2:2 10bit/25Mbpsでも4:2:2 50Mbpsと比較しても遜色ない画質を維持出来る。会場ではその映像デモも行われ、こちらもほとんど見分けがつかない鮮明な画像に注目が集まっていた。さらにAVCHDよりも低ビットレートをサポートする800K/3.5Mの『AVC Proxy』を新たに設定。こちらはオフライン編集を始め、ニュース映像、Web展開用等に向けたコーデックとなる。
マスタリング向け/クオリティ重視の高画質志向のハイエンド・コーデックから、コスト重視でスピーディな運用を目指すハイオペレーション・コーデックまでを包括するのが『AVC ULTRA』の世界だ。
ただし高位コーデックは現状では運用システム環境に左右される点が多く、圧縮技術の優位だけでは運用への選択にはいくつかのハードルがある。このAVC ULTRAで特に注目されるのはAVC LONG Gなどの低位コーデックで、25Mbpsなど使い熟れた帯域でもAVC/H.264で充分な画質が保持されることは、今後の映像をあらゆる分野でより運用面において活性化できるなど、非常に期待が高まる。AVC ULTRA対応機器の発売は未定だが、機器発売とともに今後このコーデックが広くオープン化されれば、さらに圧縮効率の恩恵を広く享受することができるだろう。
その他、パナソニックブースでの新製品では、NAB2011で発表した一体型二眼式3DカメラレコーダーAG-3DP1の実機や、一体型ニ眼式で1/4型3MOSを2セット搭載、12倍光学ズームレンズ(インテリジェントズームで23倍まで対応)搭載のS3Dカメラ『HDC-Z10000』(民生機)が初登場、またP2HDハンドヘルドカメラのAG-HPX250と、AVCHDハンドヘルドAG-AC160/AC130の実機を展示、新たに新型HDインテグレーテッドカメラAW-HE120、新型ライブスイッチャーAV-HS410などを展示。またパナソニックは2012年のロンドン五輪の放送において、オリンピック初の3Dライブ中継を行うことも発表している。
S3Dカメラ『HDC-Z10000』