txt:石川幸宏 構成:編集部

4K/2Kカメラの台頭を再確認

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撮影機材に関しては、4K/2Kカメラの台頭が華々しい。また今年初頭のPMW-F3、AG-AF105などの大判センサーカメラも含めて、撮像素子は大きくて単板、そして安価というのがトレンドになりつつあるようだ。その中でもARRIのALEXAは活況で、すでに全世界で2,000台を超える台数を出荷しているという。IBCではNABで発表された新機種のうち、ALEXA Mの実機とその映像が初公開されていた。

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JVC KENWOODの4Kポータブルカメラはまだ参考出品だが、製品名が『GY-HMQ10』に決定したようだ。若干の詳細情報が公開され、4K/2Kプログレッシブ3840×2160/60p、50p、24p記録が可能、コニカミノルタ製の10倍レンズが搭載予定で、144MbpsのAVC/H.264記録となるようだ。

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ソニーは、IBC直前の9月6日に8Kの新型CMOSセンサーを搭載した、ソニー初の4Kカメラ”F65“の詳細をハリウッドのディレクターズ・ギルドのシアターで発表した。IBCでは初の実機一般公開展示が行われ、F65の収録の要となるSRMASTERの仕様詳細も公開されている。来年1月に発売されるF65は、新たに発表されたCMOS特有のローリングシャッター現象を抑えるためのロータリーシャッターとNDフィルターを搭載したモデル『F65RS』も公開。ほとんどのユーザーがこの機能を欲することからも、ほぼこちらのモデルがスタンダードになると思われる。

このF65の登場をきっかけに“CineAlta”のロゴマークも一新。今後は4Kに対応する機種にのみこのマークが使用されるという。F65の発表とともに4Kの画像データを記録するポータブルレコーダー『SR-R4』も実機展示。SRMASTERの仕様詳細が公開され、同時にSRMASTERフォーマットを他社ノンリニアシステムなどでも使用出来るように仕様公開し、オープンプラットフォーム化した各社とのアライアンスも発表した。

F65は、価格がスタンダードモデルで500万、ロータリーシャッター&NDフィルター付きでも600万を切るという破格の価格設定には驚かされるが、ALEXAに対抗する市場戦略だとしても、今後もこの廉価傾向は続いて行くだろう。

気になるREDだが、今回ブース出展はしたものの1コマにEPIC実機2台とバナーのみというシンプルな物。大きな発表は特に無く、初日と二日目に会場中央の大型シアター施設”Big Screen”でEPICの最新事情などのプレゼンが行われたのみだった。さらにキヤノンも大きなブースながら、NABで発表されたシネレンズが欧州初展示というだけでその他の動きは無かった。

ステレオ3Dカメラ事情とHSカメラの隆盛

またステレオ3Dカメラに関しては今回、NABに引き続きCPG(キャメロン/ペース・グループ)の代表としてキャメロン監督とペース氏両人がIBCのキーノート講演にも登場している。ただし今回は映画監督と撮影監督としてではなく、本人曰く『セールスマンとして!』CPGのシステムセールスとしてIBCへ参加してきた。3Dはそれなりの活況を呈しているが、新しい機材としての目新しさは少ないようだ。

ソニーのXDCAM EXの3Dカメラ『PMW-TD300』の詳細情報が公開され、二眼レンズ部の左側の操作系の詳細で、前後方のコンバージェンス破綻領域の像が、赤や青ラインの縁取りで表示されるなど、ワンマンオペレーションで3D撮影がしやすい操作性を追求した製品に仕上がった。

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もう一つ面白いのは、ソニー初のデジタル双眼鏡カメラ『DEV-5K』。いわゆる双眼鏡タイプの筐体にカメラ機能が付いているといった状態だが、どうせニ眼あるので3Dも撮れるようにしてみたら?といった発想の新商品だ。内部は小型3Dカメラの『HDR-TD10』なのだが、これが意外と目から鱗の製品で、両手でホールドする安定感と光学10倍/デジタルズーム20倍とはいえ、双眼鏡換算で考えると、光学倍率で66mm~660mm、デジタルズーム20倍だとなんと1320mm換算になる。さすがにデジタルズーム時は解像度が落ちるが、それでも様々な用途で使えそうな新しいタイプのカメラと言えそうだ。民生機のDEV-3(1400米ドル、10倍のみ)とDVE-5(2000米ドル)、業務機のDVE-5K(2150米ドル)の3モデルが出る予定。

4K、3Dの次にカメラに求められてくる機能が、HS=いわゆるハイスピードカメラだ。これまで高価で取り扱いにくいイメージのあったハイスピードの世界。この世界で顕著なのはこれまで産業用カメラとして活用されて来た技術がエンターテインメント用として移植されて来ている点だろう。

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朋栄の『VFC7000 Flash EYE』は395万円という低価格でありながら秒間24~700コマまでのHD収録(1280×720p)が可能で、昨年のIBCで発表されて以来、大きな注目を浴びている。中でもあまり公開されていない事実としては、あのジェームズ・キャメロン監督とペース氏の共同経営によるCPGがすでに『VFC-7000』を4台購入している。やはり現行のHSカメラが高価なゆえに3DでのHS撮影など台数を必要とする際にはこうした安価でかつ一定のクオリティを持ったカメラの期待値が高いようだ。今回はニコンFマウント部分にB4マウント変換アダプターで放送用レンズを装着出来るようになった。これにより今後、放送局などのレンズ資産が活かせるだろう。

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さらに注目はHSカメラの専門WEISSCAM(ヴァイスカム)から新しい別プロジェクトとして立ち上がった”T-1″。 PLレンズ対応で2/3型CMOSを搭載し、秒間350コマ撮影可能。価格も5000米ドル内外で、4Kも撮れるように鋭意開発中のようだが、発売はまだ来年以降になる模様。また従来のP+S Technik社での取り扱いではなく、米国の販社BandPro社の経由ルートでの販売になる模様。さらにBandProはInterBEE2011に出展し、今後は日本でも直販事業を開始するようだ。


Vol.01 [IBC2011] Vol.03