新技術にいち早く触れる事が出来る家電展示会
10月7日から千葉の幕張メッセで日本で最大のIT・エレクトロニクス先進技術の展示会「CEATEC JAPAN 2014」がスタートした。10月11日までの5日間にわたって開催される。CEATECは、メジャーな家電メーカーから会期に合わせて多数の新製品が発表され、映像関連で言えば、4K関連や最近は8K関連の製品が数多く展示される。さらに新製品の展示だけでなく、驚くような技術を実際に体験できるというのもCEATECならではの魅力だ。
ただ残念な点は、今年、ソニーが出展を見合わせたことだ。ソニーは毎年、CEATECの開催を機会に4K関連の新製品を発表してきたり、毎年9月にドイツのベルリンで行われるエレクトロニクスショーの「IFA」で発表した新製品をCEATECのブースでもいち早く展示するなど大注目のメーカーであった。今年のCEATEC全体を見てみると、今年の出展社数は547社で、2013年の587社から若干減少傾向にある。
ただ、大手家電関連メーカーではパナソニック、シャープ、三菱電機、富士通、東芝、パイオニアは例年と変わらず広いブースを構えて出展している。通信機器関連では、NTTドコモや技術大国日本といったところが健在だ。まずは大手メーカーのブースの様子から紹介していこう。
幅広い4K関連製品を展示 パナソニック
ブースの前面に「4K WORLD」を掲げて、4k関連製品を多数展示
■4K対応のフラグシップモデルVARICAM 35を展示
新開発のスーパー35mm MOSセンサーと独自の「AVC-ULTRA」映像コーデックファミリーを搭載した4Kカメラ / レコーダー「VARICAM 35」
パナソニックブースは「4K WORLD」というテーマを掲げて、液晶テレビからカメラまでさまざまな4K対応製品を展示していた。その中でもブースの注目の展示は、発売開始のプレスリリースを6日に発表したばかりのデジタルシネマ用4Kカメラ / レコーダー「VARICAM 35」だ。特徴は、スーパー35mm MOSセンサー搭載で14+ストップの4K映像収録が可能なことだ。
4KカメラモジュールのマウントはPLレンズマウントが採用されている
ブースのスタッフによると、もちろん競合製品は、ソニーの場合はF65、ARRIのALEXAを意識しているとことだ。特にアピールをしていたのは、ワークフローの部分だ。たとえば、撮影とポストプロダクションで一貫した映像のトーンの統一を図るということをやるために、あらかじめテストシューティングをしていったんポストプロダクションに送ってルックアップテーブルを調整し、その値をカメラに戻してやることができるということがVARICAM 35では可能であるという。つまり、撮影監督が、「こんな絵にしよう」といったものをカメラに最初から落として、そのトーンで撮影を行うことができる。制作のフローを効率化できるとことが大きいとアピールをしていた。
レコーディングモジュールの「AU-VREC1G」。高いビットレートを記録するためにexpressP2カードというメモリカードを採用。カードスロットは「expressP2」と「P2カード」の兼用が2基、このほか「microP2カード」用2基の計4基を装備
また、モジュール構造を採用していることについては、カメラを買って何年も使用するうち、カメラヘッドのラインナップも増えてきたり、レコーダーの部分もいろいろ登場したときに、レコーダーは生かして、カメラヘッドを更新するといったニーズにこたえられるためというふうにアピールをしていた。
■民生用で4K60pに対応したビデオカメラ「X1000」
SDカードに4K60pで撮影可能なデジタル4Kビデオカメラ「HC-X1000」
9月11日に発表された民生用の4K対応ビデオカメラ「X1000」も早速展示されていた。SDカードに4K60pの収録可能というところも特徴だ。ただし、SDカードに対応ではあるが100Mbps以上のMOV / MP4記録モードにはUHS-I Speed Class3、50Mbps以上のMOV/MP4記録モードにはUHS-I Speed Class1、Class10以上のSDカードが必要となる。64GBのSDXCメモリーを使えば、3840×2160の150Mbpsで約55分の撮影が可能だ。
青が収録していない状態で、赤が収録中の状態
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面白いのは、ボディの中央部に光るLEDリングを搭載しており、通常時は青だが、収録時は赤になる。つまり、撮影する側もされる側もひと目で状況の確認ができるようになるという機能だ。この機能はX1000が初めてではなく、海外の業務向けモデルですでに搭載されていたことがある機能で、そちらのモデルで非常に評判がよかったので取り入れたとのことだ。
マニュアルリングを3つ搭載していて、前からフォーカス、ズーム、アイリスを操作できるようになっている
ブースのスタッフに同じ民生機でソニーの4K対応のFDR-AX100と比べてどのあたりがアドバンテージかを聞いてみたところ、やはり4Kで60p対応の部分をだという。30pでは動きのあるものを撮るとどうしてもぱらぱらして見えてしまうが、60pはそのあたりは強いとしてメリットを紹介していた。また、サイズも民生機としては大きいけれども、4K60p対応機としてみるとこのサイズは非常に小さく、取り回しがきくサイズが実現できているという。さらに、4K60p対応といえども民生機なので、なるべくオートで気軽に撮れるカメラを実現することを意識をしており、固定のレンズを採用することで非常にフォーカスやAEが優秀であることをアピールしていた。
SDカードを使って収録することが可能だ。SDカードは2基搭載している
2基のXLR端子を搭載している
ライカの光学ズーム20倍の「ライカディコマーレンズ」を採用
■ブース前面でオリンピックの歴史と歴代モデルを展示
オリンピックの歴史とその時期の放送の技術が各回ごとに紹介されていた
パナソニックブースの前面には、2020年の東京オリンピックもスポンサーとして応援すると共に、1994年のアトランタオリンピックから2014年のソチオリンピックまでの放送の技術や撮影に使われた代表的なカメラが展示されていた。過去の映像も紹介されていて、こちらも非常に興味深い展示だった。
3機種展示されていて、もっとも古いのがD-3カメラとD-3カセットテープ。もう1機種は、P2カメラとP2メモリカード。もう1つは3Dカメラ
■4K対応のセットトップボックスも参考出品
来るべきケーブルテレビの4K化にいち早く対応した「4K対応RF/IPハイブリッドセットトップボックス」
ケーブルテレビの「4K対応RF/IPハイブリッドセットトップボックス」も参考出品されていた。第3世代STBの用仕様とガイドラインに基づいたものとのことだ。ケーブルテレビが4Kに対応すると、広い解像度を生かして144ものチャンネルを一度に表示できるのではないかという技術デモが行われていた。
4Kの解像度を使って12×12番組を一度に表示した技術デモが行われていた
■「Technics」ブランドの復活
パナソニックブースの中にTechnics専用のブースを設けて展示されていた
パナソニックは、今年9月4日にオーディオ専用ブランド「Technics」の復活を発表し、ブースでは専用のコーナーを設けて展示されていた。リファレンスシステム「R1シリーズ」と、プレミアムシステム「C700シリーズ」が展示されていた。
こちらはリファレンスシステム「R1シリーズ」
こちらはプレミアムシステム「C700シリーズ」
8K高精細ディスプレイをアピール シャープ
■85インチのスーパーハイビジョン対応液晶モニタ
シャープのブースに展示されていた85インチのスーパーハイビジョン対応液晶モニタ
シャープのブースでは、85インチのスーパーハイビジョン対応液晶モニタを参考出展。シャープは過去のCEATECやその他のイベントなどで自社製の8Kモニタを定期的に展示しているが、今回展示したモデルは過去のモデルから色域やフレームレート、8Kの解像度をさらに生かすための臨場感など、いくつも改良が加えられたものだという。ブースのスタッフによると、「8Kは解像度だけではありません。色域であるとかいろいろなところの表現の幅が広がっています。そこにフル対応していくというような目的で開発を続けている最中です。今回はその途中段階のものを展示しました」と紹介していた。
■自由な形のモニタを実現するフリーフォームディスプレイ
新しいディスプレイのデザインを提案できる「フリーフォームディスプレイ」が展示されていた。従来のディスプレイは一定の額縁幅が必要のために、四角形状が一般的だ。しかし、新ディスプレイは、額縁を極めて細くすることによって、表示領域に合わせた自由な形状のディスプレイを設計することが可能になるというものだ。具体的な例として、スピードメーターとその他のモニターを1つのディスプレイに組み合わせたインパネなどが展示されていた。
自動車のメーターをイメージしたディスプレイ
角型のモニタだが縁がないために映像が浮遊しているようにも見える
■360度フリービューシステム
奥にあるモニタに注目してほしい。模型の車の上空にはカメラがないにも関わらず、車を上空から見た映像が映し出されている
同じくシャープブースで、天から見下ろしたカメラは設置されていないのに、上空から車を俯瞰した映像が観られるというユニークな技術デモが行われていた。仕組みは、車の前後左右に190度とかなり広角な4つのカメラを搭載して、4つのカメラの共通する部分というのを境界面にしてつなぎ合わせて映像を生成する。車の映像はテクスチャを貼って再現している。その広角の映像をつなぎ合わせたものが上から見下ろした映像になるとのことだ。
からくりは、車の前後左右に設置された広角の4台のカメラの映像を1つの映像にしたものだ
その他にシャープブースの展示で興味深かったのは、フレームレスが特徴のスマートフォン「AQUOS CRYSTAL」を72台使って大きな映像を流したデモだ。元はスマートフォンにも関わらず、見事に1つの大きな映像を実現していた
ウェアラブル端末から野菜、アンドロイドまで見どころ満載 東芝
■今年のCEATECで大注目の東芝グラス
東芝グラスを実際に装着した例
ここ数年のCEATEC東芝ブースといえば、液晶テレビのREGZAを前面に押し出して展示が行われていた。ところが今年は東芝ブースではREGZAの展示は行われていなかった。その代わりに大々的に注目を浴びていたのが参考展示されていた小型軽量で普通のメガネのような外観と装着感が特徴のメガネ型ウェアラブル端末機器「東芝グラス」だ。投影範囲が視界を邪魔せず、小型で軽量。折りたたみも可能で、持ち運びが簡単。めがねとしての外観や装着感を追及しているのが特徴だ。実際に体験することが可能で、ブースには長い行列ができていた。
体験することができた東芝グラスの外観。右側に映像を投影する機構が搭載されいて、右側のレンズに投影する構造になっていた
■東芝が野菜作りをスタート
「今秋デビュー!東芝の野菜作り」というふうにアピールをしていた
REGZAの展示がないかわりにブースで異様に目を引いたのは、野菜作りのコーナーだ。なぜ東芝が野菜作りなのか?そのあたりを聞いてみると、事業部はカンパニー制になり、現状の事業もあるが、もっと広く見渡せばマーケットがあるのではないか?農業、水、空気、教育、ヘルスケア、いろいろなテーマが上がる中で、農業をピックアップし事業をスタートしたという。東芝は、グループの技術を見渡せば、照明、空調、コンピューターで制御する技術など、農業を行うのに必要な技術をすでにいくつも持っている。それらを農業に生かしてできるのではないかということも決め手でもあるという。
ブースには横須賀で実際に作っている棚の一部が持ち込まれ、栽培中の植物が展示されていた
以前フロッピーディスクを生産するための工程で使っていたクリーンルームが横須賀に残っていて、そこを活用して生産を行っているとのことだ。クリーンルームなので雑菌が入らないため、腐敗が遅く、長くにわたって鮮度が保持できる。長期鮮度保持の野菜というのが売りだという。
東芝の文字が入った野菜のパッケージも展示されていた
驚いたのは、野菜自身の販売も予定しているとのことだ。将来は植物工場のプラントそのものを請け負うソリューション事業というものを想定しているが、それには東芝自身も勉強をしなければいけないということで、まずは野菜そのものを売って事業として成功させて、その先に植物工場のソリューション事業をやっていこう、といったことを考えていると説明をしていた。
■コミュニケーションアンドロイド 地平アイこ
手話ができるロボットの実現を目的に誕生したコミュニケーションアンドロイド「地平アイこ」
東芝ブースの端でひときわ人を集めていたのが手話ができるロボットの展示だ。名前は「地平アイこ」というカタカナとひらがなが混ざった名前がつけられていた。東京大学や湘南工科大学、芝浦大学をはじめとする社外のたくさんの協力を得て、人間らしい表情を実現したり、滑らかな動きを実現しているというのが特徴となっている。
ついに4K対応レーザー液晶テレビが登場 三菱電機
■4K対応レーザー液晶テレビ「REAL」LS1シリーズ
バックライトに赤色レーザーを採用しているのが特徴の4K対応三菱レーザー液晶テレビ「REAL」LS1シリーズ
三菱電機の目玉の展示は、新製品の4K対応レーザー液晶テレビ「REAL」LS1シリーズだ。4Kの液晶テレビを大手メーカーでは発売していなかった三菱電機がついに4K対応レーザー液晶テレビを発表し、展示を行っていた。
左がLEDで、右はレーザー。色の違いがわかるような例も展示されていた。写真ではわかりにくいが、確かに赤の色がわかるようになっていた
特徴は、4K液晶パネルのバックライトに濁りのない赤を実現する赤色レーザーと純度の高い青・緑色を実現するシアン色LEDを採用していて、深い赤系色(赤、ピンク、紫)を鮮やかに再現することを可能としているところだ。また、4Kの高精細と広色域によりさまざまな色のグラデーションを自然に映し出し、白色LEDバックライトでは再現できない立体感のある映像を実現しているのも特徴だ。
写真ではわかりにくいが、このような光源の比較でもLEDとレーザーの赤の表現の違いがわかるようになっていた
シースループロジェクションや有機EL照明に注目 パイオニア
■シースループロジェクションが強化されて今年も展示
透明の窓にグラフィックが描かれるようなイメージのデモが行われていた
パイオニアブースはカーエレクトロニクスやオーディオの展示が中心だが、CEATECでは有機EL照明やプロジェクションといった見逃せない技術の展示も行われている。シースループロジェクションは昨年に引き続き、今年のCEATECでさらに強化されて参考出展をしていた。
こちらはシースループロジェクションをゲームに活用した例。手で動くキャラを追いかけるような感じで楽しめるようになっていた
昨年は4面でそれぞれ1面ごとに1台のプロジェクターを使っていたが、今年は9面に増やしてかつ1台のプロジェクターで一気に映すように改良されていた。スクリーンのほうも透明度が上がり、去年よりもさらにアップしているという。ブースの展示のように将来は店舗の窓をスクリーンに変えてしまうような使い方だったり、ショーウィンドウやデジタルサイネージの一部を置き換えるような形で考えているとのことだ。
■有機EL照明を使ったメーキャップ用の照明器具を展示
メーク用有機EL照明「OLE-B01」
パイオニアブースのもう1つの注目は、有機EL照明だ。実際に有機EL照明を使った商品の例として、自然光に近い光でメークができるのが売りの資生堂のメーキャップ用の照明器具が展示されていた。気になるのが、パイオニアと照明という関係だ。パイオニアが有機EL照明を手がけられる経緯を聞いてみると、実は、1997年から有機ELディスプレイの量産を開始、累計1億5000万枚の出荷台数を誇っており、有機ELデバイスを量産するノウハウがある。
OLE-B01はリモコンで、オフィスやパーティーなど、明るさや色を変えてさまざまな場面の光を再現できる。シーンに合わせて的確なメークができるというのが特徴だ
アクティブマトリクス型は2005年に撤退したが、パッシブマトリクス型のディスプレイは継続していて、その素子の性能が十分に照明として耐えるぐらいに明るくなってきたので、照明用のデバイスを発売や量産を行い始めたというのが経緯だそうだ。
YAMAGIWAで販売中の照明。イチョウの模様がみえるようになっている
有機EL照明のアドバンテージについは、もともと面であるということが、最大の特徴とのことだ。LEDでも面光源を作ることもできる。だけれども、有機ELの一番の優位点は、生まれたときから面光源というところで、十分に性能が上がって安くなった際には、わざざわざLEDなどの光源を使って面を作るよりもはるかに部品が少なく、安くて構造がシンプルなものが作れるということだ。
有機ELを使ったスタンド「WireFrame Solo」
txt:編集部 構成:編集部