txt:千葉 孝 構成:編集部
千葉 孝
(株)ソニーPCL入社。ハイビジョン推進部にて、ハイビジョンカメラの研究開発に関わる。その後、撮影技術プロダクションを経て、1998−2007年渡米。ニューヨークに本拠を構え、テレビ、映画、PVなどの数々の作品に関わる。日本に帰国後はCMを中心にDP、DITとして活躍する。カメラマンとしてだけでなく、4K撮影とデジタルワークフローの構築を得意分野とし、多数の映画、ドラマなどのテクニカルアドバイザーを手がける傍ら、自らDaVinci Resolveを私用したカラリストとしても活躍する。現在フリーランス。
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フェラーリ+ランボルギーニ+ポルシェ≒フェランボルシェ?!
いやはや、トンデモナイことになってきた。
前回のメジャーアップデートでFairlightと統合された時もかなり驚いたが、DaVinci Resolve 15からはFusionだと?!まったくもって今回の異常事態をどう捉えたらいいのか。下手なたとえを承知であえて表現すると…
ある日突然、高級スポーツカーであるフェラーリがタダ(同然)で買えることになった!うひょー!
で、ブイブイ(死語)言わせて喜んで乗ってたのもつかの間、あの高級外車ランボルギーニと統合!
そして今回、あのポルシェと合体!ここにきてめでたく、3車一体のフェランボルシェがタダ同然で乗ることができるようになった!という感じか。
っていうかお前それ乗りこなせるんか?→今ココ
自分は正直、日常の業務でDaVinci Resolveを使用する際、Fairlightページはほぼスルーだ。それは自分が音のプロではないからだ。しかしFusionは非常に興味がある。のだが…。正直、Fusionは本業であるカメラマン仕事の範疇を越えてるのは確かだ。しかしこの時代、本業とか言ってしまっている時点で感覚が古いのでは?とここで自問自答が始まる。
なぜならColorのページを覚えるだけでも一苦労、知れば知るほど奥の深い世界が待っているというのに、さらに究極の奥地、前人未到の未開地Fusionの世界を提示されて、映像界に生息する全人類がぼう然としているところではないだろうか。
というわけで、とりあえず自分は(まだ)Colorページを中心にした使い方をしている。皆さんご存知だと思うがせっかくなのでここでいくつか強化された部分をご紹介したいと思う。
筆者が参加した撮影現場より
LUTブラウザとShared Nodesに注目
まず今回のアップデートで超絶便利になった機能が、LUTブラウザだ。
これまでLUTは「当ててみないと分からない」という困った仕様だったのだが、今回から任意のテイクに借りに当ててみた状態でLUTを選択できる。これは凄い。望んでいるLOOKを得るためのスピード感が全く変わってくる。個人的には今回一番大きな変更点だと思っている。
その他に超絶便利なのが新しいShared Nodes機能だ。
あるクリップの任意のノードをシェア(共有)することで他のクリップにも自動的に影響される超絶便利な機能だ。こいつも劇的に作業効率を上げてくれるだろう。たとえば自分の使い方としてはマスターショットに対しLOOKを作成し、そのノードを他のクリップにシェア、それぞれのクリップの微調整をしてタイムライン全体のLUTとNRとFilmGrainはTimeLineモードで作成。という具合だ。
単純な考えだが作業効率が上がる=作業時間の短縮=余った時間はより細かなブラッシュアップのための時間が作れると考えると、今回の変更点は単に新機能の追加にとどまらず、より緻密なグレーディングが可能になったと(無理すれば)言えるだろう。
GTX 1080を搭載したノートPCで出張グレーディング
ちなみに筆者は普段の作業は自宅PCだが、外ではGTX 1080を搭載したノートPC「Razer Blade Pro」を持ち歩き、制作会社などで出張グレーディングを行うことが増えてきた。その場合、電車移動など以外はDaVinci Resolve Mini Panelも携行している。
きちんとキャリブレーションされたモニターさえあれば高度なグレーディングもお気に入りのカフェでできる時代になった(パブリックスペースの場合、守秘義務があるので人目につかないような座席限定ではあるが)。
実際、ポスプロのマシンスペックだとCUDA漢の8枚差し!というのも実際あるのだろうが、今のところ筆者はGTX 1080一枚でも何とか仕事はこなせている。ノートPCの場合、スペックの貧弱さを上回る携行性の高さを評価したい。
また最近いろんな制作会社とお仕事をさせて頂いていると、ポスプロに入るまでもない案件でも、ある程度素敵なLOOKは作りたいという要望を良く聞く。
DaVinci Resolveの性能が上がり、ノートPCのスペックも上がっていくことを考えると今後はそのような「出張グレーディング」というニーズがますます増えて行くのではないだろうか。
とまあ、つらつらと書いてしまったが、完全にユーザーの理解度を飛び越えていると感じるDaVinci Resolve 15である。この超絶モンスター級スーパーカーをいつかは完全に乗りこなしたいものである。
txt:千葉 孝 構成:編集部