txt:猪蔵・手塚一佳 構成:編集部
会期前に流れる大きな話題はプレスカンファレンスから
Photokinaはドイツ、ケルンメッセで行われるスチルカメラの祭典だ。今年は、9月26日から29日の4日間開催される。時代とともにその潮流に合わせ柔軟に変化してきた展示会の一つでもある。現にスチルカメラとはいえ、一眼動画の原点はこのPhotokinaでの発表にあり、また、スマートフォンのカメラ機能の発表なども行われるなど、今や動画系イベントとしても欠かせないものになっている。
Photokinaは、長らく2年に1度9月に開催されていたが、それも今年までとなり、来年以降は毎年5月開催となることが決定した(来年5月はケルンで開催、それ以降は未定だという)。またAI、VR、MR、ブロックチェーンなどに特化した「Digility 2018」と同時開催となった。実際に会期前に準備追われる会場をに足を踏み入れたが、2年前に比べ展示会城規模が実に約半分となっており、「秋開催は最後なのに縮小傾向なのか?」という驚きを隠せなかった。実際にブース出展を控え、独自に会を設けるメーカもあるという。
開催前日にプレスプレビューデーが開催された。隔年9月開催最後にふさわしく、会期前に大きなニュース発表がいくつか飛び込んできたのでいくつかピックアップしてお知らせしたい。
- Vol.01 会期前に大きな発表が行われたプレスカンファレンスから01
- Vol.02 プレスカンファレンスからみる今年の動向02
- Vol.03 今年最大の目玉はこれ!~Lマウントアライアンス樹立
- Vol.04 スチルカメラの祭典から動画系の情報をお届け
Sony
Sonyのプレスカンファレンスでは、動画系の新機種の発表こそ無かったが「G Master FE 24mm F1.4 GM」など一眼動画でも使えそうないくつかのスチル用レンズの発表もあり大変に盛況であった。
同社αシリーズがミラーレス部門で2011~2017年まで一位、2018年前半ではついにフルフレームカメラ全体の売り上げで一位となったことがアナウンスされ、ついにSonyが追う側の挑戦者ではなく、追われる側の王者となった事が示された。
Sonyのカメラは「αシリーズ」のようなアマチュア向け一眼からプロ向け一眼、「FS7 II」などのビデオ機、そして「VENICE」のようなシネマカメラまで全てがEマウントで互換性が保たれているのが特徴であり、このクリエイターの全てのプラットフォームを横断する「1マウント」の力がこうした王者への格上げを後押ししたと言って良いだろう。Photokinaブースではこうした機器に直接触れるコーナーが充実しているということで、Photokina本番が楽しみなプレスカンファレンスであった。
Leica
Leicaのプレスカンファレンスでは、インスタントカメラゾフォートや、カメラコントロールアプリの一本化が発表された。今までLeicaのカメラアプリは機種毎に出ていたのだが、このため複数機種所持者には非常に煩雑であり、またアプリの更新タイミングも機種毎にばらばらで保存方法もまちまちであったため、この一本化でのメリットは大変大きいものとなる。Leicaはプロユーザーやハイアマチュアユーザーも多いため、遠隔操作が強化されるメリットは非常に大きい。
続いて、中判カメラ「Leica S3」の発表も大きい。フルサイズとされる今の感光部サイズは、元々ライカのオスカー・バルナックが映画用フィルムを横に使う事で高性能を保ったまま持ち運びの出来るカメラを作ろう、としたときに誕生したものだ。
そこからライカ判、と呼ばれている。それよりも大きい受光部を持つカメラが中判カメラであり、LeicaのSシリーズは中判カメラを代表する1台だ。このLeica S3は中判カメラとして初めて4K撮影機能を搭載する予定であり、2019年春の発売が待たれる。
さて、しかしこうした商品発表よりも、今年のLeica最大のニュースは「Lマウントアライアンス」の誕生に尽きるだろう。会場には予め右前方にSIGMA、Leica、Panasonicそれぞれのロゴが入った演台が置かれ、集まったマスコミ陣の期待を煽っていた。
各社のプロジェクトリーダーがLマウント採用の意義を語るムービーが流れた後、演壇に現れた、ライカのカウフマン博士、Panasonicの北川海外マーケティング本部長、SIGMAの山木社長が現れると、会場は一気に湧き上がった。フルサイズ(ライカ判)の「Leica SL」やAPS-Cサイズセンサーの「Leica TL/CL」などに採用されていた「Leica Lマウント」がこの3社の共通マウント「Lマウント」となった瞬間であった。
Panasonic 山根洋介氏とLeica アンディー・カウフマン博士
詳細はまた続報でお伝えするが、「Lマウント」はフランジバック20mm、直径51mmとミラーレスカメラにしてはやや大きい。
しかし、この大きさに実はオールドレンズやシネレンズを使う場合にレッドシフトやパープルフリンジを減らす効果がある事がわかってきており、その為、オールドレンズを敢えて使いたい撮影者にとっては「Leica SL」は外せないカメラの1台となっていた。
こうした余裕のあるマウントを採用した「Lマウントアライアンス」各社には、ユーザーの現場をきちんと見て居るからこその判断、という実感がある。
さっそくLeicaからは2019年中の「APO-SUMMICRON-SL 35 f/2 APSH.」や「APO-SUMMICRON-SL 50 f/2 APSH.」さらには2020年予定のレンズ群ロードマップも発表され「Lマウント」の将来性を強く打ち出していた。各社製品の実売は来春からになるようだが、事実上のミラーレスカメラの標準規格の誕生であり、大いに歓迎したい。
Panasonic
Panasonicのプレスカンファレンスでは、同社100周年、そしてミラーレス参加10周年として、同社の山根氏による過去のLumixシリーズの流れがプレゼンされ、そして、光の線と共にPanasonic製「Lマウント」カメラ「LUMIX S1/S1R」の開発が発表された。
LUMIX S1が24Mピクセルの動画兼用ハイブリッド機、LUMIX S1Rが47Mピクセルの高精細スチル機と位置づけられ、それぞれ、4K60Pでのシネマ4K撮影、高速AF、ボディ内手ぶれ防止、高性能大型EVF、XQDとSDのデュアルスロット収録、3軸ティルト背面モニタ、全周防滴防塵、極低温耐性の機能が搭載される。
同カメラに、はじめから24Mピクセル機がラインナップされてのは、動画人としては大変に嬉しい。動画機ではどうしてもピクセルあたりの光量が必要なため、同面積あたりで光量の増える低画素センサーは必須といえる。この辺も非常に「わかっている」内容で、さすがはPanasonicという発表であった。
また、2020年に向けて8Kのロードマップも発表され「Lマウント」に賭けるPanasonicの本気が良く伝わるプレスカンファレンスであった。
txt:猪蔵・手塚一佳 構成:編集部