txt:猪蔵・手塚一佳 構成:編集部
富士フイルムプレスカンファレンス
富士フイルムのプレスカンファレンスでは、和製ジョブズとの名も高い飯田年久事業部長の演出に凝った内容でプレゼンテーションが進行された。飯田氏は、二条城で「デジタルカメラの大政奉還」のプレゼンを行うなどして一気に同社製ミラーレス中判カメラ「GFX 50S」の名前を業界に知らしめた人物として知られる。
富士フイルム 代表取締役会長・CEOの古森重隆氏が高らかに富士フイルムの理念を謳い上げた「NEVER STOP」の演説から始まったプレゼンは、飯田氏にバトンタッチした後、放送用カメラのレンズを持ち出して磨き込みの精度を東京ドーム上に乗った一本の髪の毛に喩えて解説するなど、一気にエンタメ要素を多くした。余りに多数の製品が紹介されたので、動画関係部分だけをかいつまんで取り上げたい。
まず、同社製新型中判カメラ「GFX 50R」の新製品発表は、猿人から人への進化図を模倣して機材の軽量化の大切さを語る、大胆なプレゼンから始まった。同カメラは前述のミラーレス中盤カメラ「GFX 50S」と全く同機能ながら、外形サイズを厚さで25mmも大幅に縮小し、重量も145gも大幅に軽量化した上で、ノスタルジーを感じるお洒落なオールドカメラスタイルにまとめ上げた素晴らしいものだ。
動画機能こそフルHDまでと寂しいものの、中盤から来るその強烈なボケと高画質さは旧機種GFX 50Sで定評が高く、その映像は多くの場面で効果的に使われている。同性能を凝縮させた同社製新型中判カメラGFX 50Rにおいても、11月の発売日以降、必ずやその映像は多くの人の目を楽しませてくれることだろう。しかもお値段も4,500ドルと極めて安い価格帯だ。
しかし、旧機種の小型軽量化で手をこまねいている富士フイルムでは無い。「NEVER STOP」のテーマそのままに繰り出されてきたのが新型高画素中判ミラーレスカメラ「GFX 100」だ。GFX 100はその名の通り100Mピクセルの高画素センサーを持つ、超高精細の中判ミラーレスカメラである。
その高画素だけでもとんでもないことで、それだけではなく同カメラはボディ内手ブレ補正機構や像面位相差AFなど数多くの魅力を持つが、映像業界から見たポイントは二つ。GFX 100こそが、ついにシネマ4Kを撮れるミラーレス中判カメラであり、しかも元がミラーレスカメラであるだけに容易に扱えるハンディサイズである、ということだ。
GFX 100はまだ開発発表であり、実機は来年とのことだが、富士フイルムのシネマレンズでの実績とカラーグレーディング方面での定評を考えるに、ゲームチェンジャーになり得るカメラだと考えざるを得ない。発売が大変に楽しみだ。
また、プレスカンファレンスの最後には、富士フイルム製の新型3軸ティルトプロジェクターの開発発表がアナウンスされた。実機は持ち運びが可能なサイズながら様々な方向へと極近距離から映写を行う事が出来ており、これが発売になれば一気に映像の用途も広がると考えられる。こちらも合わせて、発売が楽しみだ。
シグマプレスカンファレンス
シグマ社のプレスカンファレンスは、近隣の植物園の宮殿風ガーデンハウスを借り切って優雅に執り行われた。プレゼンテーションは山木和人社長自らが行い、見事な演出と、同社工場がある会津への愛情溢れる映像の数々で、集まったプレス関係者の心を強く捉えていた。プレスカンファレンスでは互換レンズを多数製造するシグマの多くの製品が(余り関係のない同社製ビールも)紹介されていたが、その中から動画に関係ある部分だけをピックアップしてご紹介したい。
まず、シグマと言えば最近目立つのが、シネマレンズ群だ。これがついに28mm T1.5、40mm T1.5、105mm T1.5の三本のプライムシネマレンズを追加し、通常映画で使われるフルレンジが揃ったことが挙げられる。
続いて、やはり「Lマウントアライアンス」参加は外せない話題だ。シグマはSA-L、EF-Lのマウント変換アダプタを来年発売し、これと、ライカの持つPL-L、M-Lアダプタを組み合わせることで、Lマウント上での、ありとあらゆるオールドレンズ(ミラーレス時代以前の大半のレンズ)の利用を実現しようとしている。
もちろんそうした変換アダプタだけが同社の「Lマウントアライアンス」参加での仕事では無い。山木社長は「1、新しいフォベオンセンサーのフルフレームカメラ本体を2019年中に出す」「2、新規SAマウントカメラの開発は行わない予定」「3、SAマウントのレンズ生産は継続する」「4、SA-L、EF-Lの変換アダプターを2019年中に出す」「5、ネイティブなLマウントレンズを2019年中に出す」「6、最近発売したアートラインなどのレンズのLマウントへのマウント交換サービスを2019年にスタートする」という6つの目標を掲げた。
どれもこれも魅力的かつ、動画世界への影響が大きいものばかりだが、中でも、もし可能であればフォベオンセンサー搭載のフルフレームカメラの4K等の実用サイズでの動画対応が出来れば嬉しいところだ。もちろんフォベオンセンサーはかつての3板センサー並みのデータ量を持つため、高画素化された現在ではその処理が余りに膨大であり、困難なのは間違いがないところではある。いずれにしても、この6つの目標が無事に達成される事を強く願わざるを得ない。
txt:猪蔵・手塚一佳 構成:編集部