txt:安藤幸央 構成:編集部
CG/VFX制作の現場を知るプロダクションギャラリー
SIGGRAPHの人気展示のひとつ、プロダクションギャラリーは2017年から企画がスタートしたSIGGRAPHの中でも比較的新しい展示コーナーだ。大手CG/VFXプロダクションが制作してきた映像制作のための素材、スケッチ、粘土モデルなど制作過程で作られた素材や映画撮影に用いた小道具などを一同に集めて展示するコーナーである。また、CGアーティストのサイン会や講演、パーティなども開催される華やかな会場の一つでもある。
今年は、ジブリの「紅の豚」や「魔女の宅急便」に影響を受けたと監督が語る「ヒックとドラゴン(4)氷海の呪い(How to Train Your Dragon)」を中心に、大量の設定スケッチ、キャラクタースケッチ、コンセプトアート、背景画などの展示が行われた。
またここでしか見られないマーベル映画系の小道具や衣装、実物大?のピクサー「トイ・ストーリー4」のキャラクター像の展示に、絶好の写真スポットとなった。
プロダクションギャラリー入り口
■DreamWorks展示:ヒックとドラゴン(4)氷海の呪い(How to Train Your Dragon)
ヒックとドラゴン4背景画、コンセプトアート
ヒックとドラゴン4キャラクタ設定、小道具スケッチ等
ヒックとドラゴン4、シーン設計、カラー設計のための素材
細かな設定スケッチ
キャラクターの衣装や鎧、髪型の設定
登場キャラクターの性格、振る舞いを設定したスケッチ
■VR専業のFelix&Paul StudiosからはSPACE EXPLORESの実演展示
SPACE EXPLORESの紹介、撮影に用いた360°カメラの紹介など
■Marvel Studios展示:アベンジャーズ/エンドゲーム
エンドゲーム主要キャラクターの衣装
映画冒頭にでてくる破壊されたアイアンマンのフェイス
割れてしまったキャプテン・アメリカの盾
サノスのインフィニティーストーン
■Sony Pictures Imageworks展示:Spider-Man:Into the Spider-Verse
Spider-Man:Into the Spider-Verseキャラクタ設定
登場キャラクターのクレイ(粘土)モデル。クレイによって量感を検討する
■Pixar Animation Studios 展示:トイ・ストーリー4
「トイ・ストーリー4」の主要キャラクターBuzz Lightyear、Bo Peep、Woody
ちなみにSIGGRAPH 恒例となったPixar/RenderManユーザー会で配布される、ゼンマイ式のティーポット、今年は「トイ・ストーリー4」の主要キャラクターBo PeepとBuzz Lightyearを模したものが、配布された。
基調講演:CG/VFX業界、映画制作の世界で、もっと活躍すべき人がいる
また、今年のキーノート(基調講演)は、マーベル・スタジオの制作担当副社長Victoria Alonso氏によるもので、約1時間対談形式で行われた。そこでの主な提言は、マーベル・スタジオでは、作品においても制作現場においても「多様性」をとても大切にしているとのこと。
CG/VFX業界、映画制作の現場でまだまだ女性は少なく、有能な人材がもっと活躍する場があるはず。そして職場や現場も少し大げさなぐらい環境を整え、多様性が保てるよう気を配ってあげないと、よい制作環境にはなっていかないとのこと。
それは映画作品においても制作現場においても単に多種多様なキャラクターや人種、性別の人がいるということではなく、時には偏りがあったり均質性を欠くことがあったとしても多様性を尊重し、さまざまな視点で物事を見られるようにしておこうというものだ。
参加者からの質問、12歳の少年からの多様性に関する質問には「皆さんには可能性は無限にあり、いつか一緒に働きたい」、自身の環境に悩むインドから来たCGクリエイターには「自分の可能性を信じて、今居るところから羽ばたいて第一線の現場を目指してもいいのではないか」というアドバイスで講演を締めくくった。
基調講演の様子。左がVictoria Alonso氏、右がインタビューアーの映画評論家Matt Donnelly氏
SIGGRAPH 2019 Keynote Session:1時間18分全編公開されている
続くレポートでは、リアルタイム映像系の情報をお届けする予定だ。
txt:安藤幸央 構成:編集部