取材・文:編集部 撮影:小山田有作
この緑のエリアは何?若者や女性に支持される新型カメラを本気で展示予定だった
毎年、CP+展示会場の中でも圧倒的な存在感のキヤノンブース。今年のCP+2020でも、新機種「EOS R5」の展示予告で話題を起こしていた。しかし、CP+の中止でEOS R5の先行展示が見られなくて残念に思っている人も多いはずだ。そこで、今年のCP+キヤノンブース出展内容について、キヤノン本社で話を聞いてみた。
まずは、ブースの出展内容について。実は、キヤノンに話を伺うまでは、「今年はキヤノンブースの目玉はEOS R5」と一方的に思い込んでいた。ところが、キヤノンブースのレイアウトを見せていただくと、いつものキヤノンブースとは様子が違う。見たことのないゾーン(ブースのレイアウトの左側)の存在が気になった。
幻のCP+2020キヤノンブースのレイアウト
「この緑色のファンゾーンというのは…何ですか?!」
「今年はコンセプトカメラを中心にフォトスポットなどを展示するファンゾーンを開設し、こちらでカメラをご紹介する予定でした」
「ええっ!」という感じだ。キヤノンブースといえば一眼レフカメラのEOSだ。毎年ブースには、Kiss系、5D系、1D系が並べられて、写真に真剣に取り組む熱心な人たちが集まり、最新機種を本気で評価するというイメージが強かった。もちろん、今年もEOS系を中心とした最新のカメラ・レンズを撮影体験できる「プロフェッショナルゾーン」は存在する。しかし、今年のキヤノンブースは新たな撮影スタイルのカメラで、一眼レフを使わないスマートフォンが当たり前の世代や、女性へのアピールを本気になって考えていたようだ。
ファンゾーンは、空間の雰囲気もユニークだ。壁から床、スタッフの着るTシャツまでこの空間だけ自由で気軽な雰囲気が感じられる統一したデザインで、これまでのキヤノンブースらしくないともいえる。ファンゾーンの狙いについてキヤノンはこう言う。
「プロフェッショナルゾーンにはこれまで通り赤いシャツを着たスタッフが居まして、一眼レフカメラやミラーレスカメラを展示する予定でした。しかし、ファンゾーンは全く違います。どちらかというと、今まで私達がなかなか接して頂く機会が少なかった若い方々など、カメラに馴染みのない方も含めて体験して頂くゾーンを予定しておりました」
昨年のCP+では小さいコーナーだったコンセプトカメラの展示が、今年はスペースを増やしてファンゾーンとして展示を予定していた
CP+2020キヤノンブースの全体パース図
コンパクトデジカメとは違う、新たな撮影スタイルを提供できるカメラを展示
■超小型で望遠撮影が可能なマルチファンクショナルテレフォトカメラ
ファンゾーンに展示されるはずだった新コンセプトのカメラを紹介しよう。1つ目が、単眼鏡のような形の超望遠カメラ「マルチファンクショナルテレフォトカメラ」。コンセプトは「ポケットに望遠を」。本体は手のひらサイズなのに100mmと400mmの光学切り替えが可能で、さらにデジタルズームによる最大800mmの撮影が可能。スポーツ観戦やコンサートなどで便利そうだ。
ファインダーはEVFで、覗くと100mm/400mmの超望遠の世界を手軽に楽しむことができる
■カメラが被写体を自動で撮影するインテリジェントコンパクトカメラ
もう1つ見せて頂いたのは、インテリジェントコンパクトカメラ。自分だけのカメラマンのようなカメラだ。いろんなところに連れて歩くと、最適なシーンを自動で撮ってくれる。
みんなで集まるところに持って行けば、カメラは自動に撮ってお勧めが撮れれば教えてくれる。人を覚える機能があり、さらに覚えた人の中から優先順位を上げて撮影してくれる。常に持ち歩くことで、カメラ自体も育っていく感じなのもユニークだ。他にも、キッズミッションカメラなど、計5種類の展示を予定していた。
プロフォトグラファー向けの5.5K 12bit RAW動画撮影に対応した「EOS-1D X Mark III」
最高約16コマ/秒、ライブビュー撮影時は最高約20コマ/秒の高速連続撮影に対応のEOS-1D X Mark III
プロフェッショナルゾーンでは、オリンピックのフィールドのデザインを再現。そこで、プロがどのような環境で撮影をしているかを、擬似体験できる展示を予定していたという。
プロフェッショナルゾーンの目玉の1つが2020年2月14日に発売したばかりのEOS-1D X Mark IIIの展示だ。EOS-1D X Mark IIIは、「1」の名前を冠したキヤノンのフラッグシップモデル。動きが激しいモータースポーツでも意のまま撮影できる、静止画、動画もどちらも究極を目指して開発したモデルだ。1D X Mark IIIでは全体性能が大幅に進化しており、その中でも特にオートフォーカスの性能と画質の向上、ネットワーク性能に注力している。
これまでのEOS-1D X Mark IIには、いろんなシーンに対応できる「AFカスタム設定ガイド機能」に「CASE1」から「CASE6」までのさまざまな設定が用意されていた。EOS-1D X Mark IIIではAFカスタム設定ガイドに「Case A(Auto」を搭載し、カメラ任せでより幅広いシーンに対応できるようになった。
また、一眼レフカメラで5.5K 12bit RAW動画の内部記録に対応も話題だ。2枚のカードを使ってRAW動画と通常動画/Canon Logを同時記録することも可能。これまでRAW動画は特別な機材を用意する必要があったが、静止画を撮るカメラマンでもそのままRAW動画撮影が可能になったというのは大きなポイントといえるだろう。
有効画素数約2010万画素の35mmフルサイズCMOSセンサーを搭載
CFexpressメモリーカードに対応。デュアルスロットを搭載する
専用ワイヤレスファイルトランスミッターやEthernet 1000BASE-T対応の有線LANインターフェース
8K動画撮影対応フルサイズミラーレスカメラ「EOS R5」や「 RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」を展示
もちろん、先行で告知されていた「EOS R5」や「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」などの開発発表機展示も目玉の予定だった。CP+でのお披露目は触れることができない形を予定していたという。EOS R5は、新開発のCMOSセンサーにより、電子シャッターで最高約20コマ/秒、メカシャッターで最高約12コマ/秒の連写性能を実現し、スポーツなど高速で動く被写体にも対応予定。
また、8K動画の撮影が可能となることで、高精細な静止画の切り出しやより高画質な4K動画に加工できるとしている。その他にもボディ内手ブレ補正機構とレンズ内手ブレ補正機構の協調制御や、デュアルスロット対応、クラウドプラットフォームimage.canonへの画像自動転送機能搭載が公開されている。
■8K動画撮影
- フレームレート29.97fpsを実現
- 水平方向クロップなしでの撮影可能
- 全モードでデュアルピクセルCMOS AF可能
- 内部記録可能
■AF被写体検出
- 「犬・猫・鳥」の「全身・顔・瞳」に対応
「EOS R」「EOS RP」はペンタプリズム部のデザインが個性的だったが、EOS R5では一眼レフシリーズに近いデザインになった
本体前面の右側端子カバーには、「MIC」「USB」「HDMI」「ヘッドホン」の文字やマークが見える
RFレンズの「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」。超望遠ズームは100-400mmがポピュラーな存在だったが、100-500mmになることでテレ側を延長している
鏡胴のスイッチ類はこれまでのズームレンズと同等のものが見られる。「撮影距離範囲切り替えスイッチ」「フォーカスモードスイッチ」「手ブレ補正スイッチ」「手ブレ補正モード選択スイッチ」
焦点距離は100-500mmを実現。エクステンダーの「RF1.4×」や「RF2×」と組み合わせることで幅広い範囲をカバーできそうだ
最後に、新型コロナウイルスの影響について。キヤノンマーケティングジャパンは2020年2月28日、「ショールーム」や「ギャラリー」「持ち込み修理窓口」「あんしんメンテ スタンダード受付窓口」の臨時休館を発表。2020年3月12日には、4月上旬まで休館延長を発表している。電話、Webでの修理受付は3月16日より再開が発表された。
ショールームの利用や修理を希望の方は、キヤノンの「新型コロナウイルス感染症への対応について」で状況をチェックしてほしい。
取材・文:編集部 撮影:小山田有作