10年振りにCine Gearがニューヨークで開催

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Cine Gear Expoが東海岸ニューヨークで2023年3月10日と11日にオフラインで開催された。Cine Gearがニューヨークで開催されるのは2013年以来、10年振りだ。

Cine Gear Expo NY 2023(以下:NY EXPO 2023)は、フィルムメーカーの総合サービス会社AbelCine本部があるIndustry Cityが会場となった。Industry Cityはブルックリン・アッパーベイのサンセットパーク地区にある再開発施設。かつては倉庫街だった建物に現在は多くの飲食店をなど多くの観光客が訪れている。

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会場にはNY EXPO 2023の案内はなく、「会場はどこ?」とカメラを持っている筆者に訪ねる人も多くいた。

Cine Gear CEOジュリアン・グロッソ女史に聞く

Juliane Grosso Co-Founder/CEO Cine Gear EXPO

Cine Gear CEO ジュリアン・グロッソ女史によれば53展示社が参加し13のセミナーが開催される。ニューヨークでの開催は映画産業に関わる人をつなげるハブ(中心)として重要な役割となる。コロナ禍以降での開催には苦労もあったがコミュニティの人間の協力もあり無事に開催できた。日程は決まっていないが来年もNY開催予定で規模は2倍にする予定だという。

東海岸側開催は貴重である機材展の理由

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実際にNY EXPO 2023で新製品発表はなかったが、東海岸のクリエイターにとっては、機材を実際に手に触れる貴重な機会となった。東海岸のクリエイターにとって西海岸への実際に足を運ぶことが簡単ではないらしい。西海岸の展示会開催時期と撮影の繁忙期が重なることが多いという。

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昨年発表され好評のARRI ALEXA35、AbelCineでもまだ在庫が少ない。一番人気は SONY VENICE。数十台あるという在庫が常に貸し出し状態だという。

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SWITで発売中のARR用のBマウントバッテリー(160W $489、290W $789、ホットスワッププレート$888)。まだBマウント自体は一般的とは言えないがプロダクションからの問い合わせは多いという。

照明機材に重きをおいた展示

展示会場で圧倒的に多かったのはAputure、Nanlux、Godoxをはじめとする照明機材のメーカーだった。老舗から新規参入まで52出展社中17社が照明関連メーカーだった。

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「NAB show Product of the year 2022」を受賞したLITEGEAR社のAURORIS。薄型モジュールLEDパネルを組み合わせで薄型モジュールLEDパネルを組み合わせて軽量、広範囲の天井光源を実現する。展示会撤収時にあっという間に畳んで収納された様子が圧巻だった。

出展者や来場者の話から、映像作りに大事なフレーミングはもちろんだが、それを彩るための照明機材こそが大事で、特にフェイストーンを意識しているとのこと。

もともとは照明用のジェルを取り扱っていたメーカーはLEDライトの登場によって色を自在に作れるようになり、そのノウハウを製品作りに生かしているという。来場者は各照明関連のブースを回りながら、そのメーカーが出す独自の色を、まるで画家が絵の具を選ぶように見入っていた印象的だった。

ミドルレンジ向けに気になる製品やサービスも

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Cine Gear Expo NY 2023 にはフリー映像人向けに保険やカメラクルーユニオン(Local 600)・グリップユニオン(IATSE Local 52)のブースや、大型の撮影リグや照明機材の固定やセーフティのために使うロープを提供するSEACO Ropeなど映画産業ならではの出展社も多い。それだけではなくミドルレンジにも興味深いブースもあり、紹介をしたい。


DEITY MICROPHONES

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DEITY MICROPHONESのAndrew氏。メイン商品が音声機材だが新作のタイムコードジェネレーターをアピールしていた。


Hobolite LLC

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2022年から積極的なブランド展開を進めている LED ライトメーカーのHobolite LLC。ハッセルブラッドHasselblad風のデザインでクリエイターの創作意欲喚起を目指したという。手のひらサイズのMINI(20Wは$299から)。ケースもお洒落で日本のビデオグラファーにも人気が出そうな商品だ。


ROSCO Laboratories Inc

ROSCO MYMIX APPのMarttise氏

ROSCO Laboratories Incで2018年発表の色キャプチャー機能。スマートフォンなどで撮影した写真を参照にワンクリックでLEDライトの色温度を設定できる。

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MicroFogger 4 Pro

携帯型スモークマシン。2022年末に発表されたばかりで、多くの来場者が足を止めていた。従来品の2倍の煙出力があるという。$330の基本キットが飛ぶように売れていた。

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AVALABLE APP

グリップなどの撮影スタッフのLocal52に所属するBen NG氏がCEOを務めるチームが開発した撮影クルーを仲介斡旋するアプリ。スケジュール表に自分が仕事に対応できる日程を登録し、その日程と仕事内容の条件が合う人を結びつける。2018年6月にサービス開始され、現在10,000以上のダウンロードがあり多くの企業が参加している。アプリは無料だが企業担当者の利便性に配慮したデスクトップバージョンは月額$150で利用できる。

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NY EXPO 2023現場の声を集めてみた

NY EXPO 2023はどのような意義を持つのであろうか。出展社の方々に実際の展示会を通じて感じたことを聞いてみた。

Xizmo Media

Edward Kostakis Xizmo Media Co-Founder/ Gotham Films

ニューヨーク地区での空撮など特機撮影を行なっているXizmo MediaのEdward Kostakis氏。ラスベガスのNAB Show、ロサンゼルスのCine Gearなどを通じてこれらの機材が一堂に会し、各地で培った様々なアイデアが集まり意見交換できるのがNY EXPO 2023の特徴。また今後自分たちの力で未来のNY EXPOを盛り上げていくこともとても大事なことだという。

遠藤長光(Nagamitsu Endo)氏

Nagamitsu Endo NYC Producer&Director, Photographer

ニューヨークを基点に30年近くプロデューサー兼ディレクターとして活動している遠藤長光(Nagamitsu Endo)氏。西海岸のフィルムメーカーと違い、東海岸のフィルムメーカーは人々の結束がはるかに強い印象があるという。そのためNY EXPO 2023は単なる機材展だけでなく仕事を通じて知り合った多くのフィルムメーカーが再会できる、東海岸の映像クリエイターにとってのハブ(中核)であることが素晴らしいという。

須藤琢磨氏

SWIT Regional Sales Manager

SWITの須藤琢磨氏によれば、ブースを訪れる人間の特徴として西海岸のクリエイターは実際に購入したい商品を見に訪れるビジネスライクな印象があるのに対して、東海岸のクリエイターは芸術家的な印象があり、少しでも気になる商品があれば積極的に学ぼうと声をかけてくると言う。

総括

NY EXPO 2023は展示会であることはもちろんだが、日本の InterBEE などの展示会と同様に、東海岸の映像人たちが現場以外で顔を合わせる貴重な機会になっていた。繰り返しになるが昨年 NAB Show で発表された新製品に実際に触れることができるだけでなく、各地で開催された展示会の集大成になる場所と言えるかもしれない。

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会場で筆者(中央)を案内してくれた NHK Cosmomedia America, Inc.の押野健一氏(左)と前述の遠藤長光氏(右)。押野氏はステディカムオペレーターとしても活躍し、タイムズ・スクエアなどニューヨーク各所でステディカム撮影をしている