PTZカメラ本体の性能に注目が集まりがちだが、コントローラーまで気を配る方は少ないのではないか。今回は、国内の大手PTZカメラメーカーから、ソニー「RM-IP500」、キヤノン「RC-IP1000」、パナソニック「AW-RP150GJ」の実機をお借りしたのでレポートしたいと思う。
サイズ感の比較
サイズ感から見ていこうと思う。縦横の大きさは各社ほぼ同じで、横に長方形のサイズとなっていて、手前側は左からズームコントロール、中央がカメラ選択またはプリセット選択、右がパンチルトのジョイスティックという並びだ。
サイドから眺めてみると、どの機種も手前側が低く、奥に行くにつれて角度がついている。RM-IP500は手前から奥までストレートの構造だが、RC-IP1000は手前側と真ん中から奥側で角度が異なる構造、AW-RP150GJはモニター部のみ角度が強くついている印象だ。
サイズと重量の比較 | |||
パナソニック「AW-RP150GJ」 | ソニー「RM-IP500」 | キヤノン「RC-IP1000」 | |
外形寸法(突起物除く) | 342mm×178mm×245mm | 306mm×159.3mm×224.1mm | 342mm×145mm×245mm |
質量 | 約3.2kg | 約2.4kg | 約3.4kg |
ソニー「RM-IP500」
まずは、ソニー「RM-IP500」から見ていこう。
RM-IP500は2017年に発売されたコントローラーで、今回の比較の中では最も歴史が長く、PTZカメラ業界ではよく知られているコントローラーなのではないだろうか。そのため、近年発売の一部の機種では一部表示名や機能が異なるため、使用する場合はファームウェアの更新だけでなく、「ILME-FR7用パネルシート」と呼ばれる本体に被せるシートが必要となる。
また、入出力端子は、ソニーが開発したカメラ制御プロトコルVISCA対応のRS-422ポートが1つ、LANポートが1つ、さらにGPI端子も備えている。
コントローラーへのカメラの登録は、RM-IP500本体のみでも可能だが、ソニーから提供されているソフトウェア「RM-IP Setup Tool」を使うことでより簡単にカメラ登録が可能だ。
まず、RM-IP500本体とPTZカメラ、設定PCを同一ネットワークに設定し、RM-IP500をアップデートモードに設定する。すると、RM-IP Setup Tool上でRM-IP500の設定が触れるようになり、カメラを登録する流れとなる。
実際にコントローラーを操作してみようと思う。まず感じたのが、ジョイスティックの軽さである。他の機種に比べて遊びが多いため、少し倒さないと反応しない。そのため、不意にスティックに手が当たっても動いてしまうことは少ないだろう。ただ、軽い分、反応してからの感度も良いので、少々慣れが必要に感じた。
キヤノン「RC-IP1000」
次に、キヤノンから発売されている「RC-IP1000」コントローラーを見ていこう。
PTZカメラコントローラーの中では最後発で、その分各社のコントローラーを研究している印象を受けた。本体中央には大型のタッチパネル画面を備えており、カメラの設定だけでなく、キヤノン独自の「XCプロトコル」を経由して映像受信を行い、映像確認も可能だ。昨年のアップデートで、受信した映像をマルチ画面で出力することも可能となり、映像制作の現場でさらに便利になった。
入出力端子は拡張性に優れ、12G-SDIでの4K60P映像入出力や、IPスイッチを介したIP映像入力、HDMI出力に対応。SDI/HDMIで外部モニターへの出力が可能で、ライブオペレーション時の大画面確認にも便利だ。
スイッチャーとの連携をSDI/GPIO経由で可能で、カメラ選択と映像切り替え、タリーランプの同期を実現できる。電源供給はPoE+とDC 12V入力の4ピンXLRコネクターに対応しており、設置環境に応じた選択が可能だ。
また、コントローラー本体から自動追尾機能のON/OFF操作が可能で、2024年6月のファームウェアアップデートにより、追尾対象の表示位置を変更できるシルエットを表示しての操作も可能になったことで、今まで以上にPC不要でスムーズに操作が可能だ。
実際に操作してみたところ、ジョイスティックの反応は非常に良く、より精密な動きにも機敏に反応してくれる印象だ。センターパネルはカメラのプリセットと選択が切り替えできるので、用途に応じて使い分けが可能だ。
パナソニック「AW-RP150GJ」+「Media Production Suite」
最後に、パナソニックの「AW-RP150GJ」とソフトウェアプラットフォーム「Media Production Suite」について見ていこう。
まず、AW-RP150GJの特徴的な部分はジョイスティックだ。他社のジョイスティックはズームコントロールを回すことで対応しているが、AW-RP150GJはジョイスティック部にシーソーレバーが搭載されており、より精密なズームコントロールが実現されている。
実機を操作してみると、ジョイスティックは今回比較した中で最も大きく、握りやすくコントロールしやすいと感じた。
プリセット切り替え時のパン・チルト・ズームを同期させる「PRESET PTZ SYNC MODE」はOFFになっています。この機能について、詳しくはこちらをチェック
豊富な入出力端子を備え、2系統のGPIO端子と3G-SDI入力およびスルーアウト、LANポート、5ポートのRS-422により、柔軟な現場システムの構築が可能だ。また、PoE+とDC 12Vによる電源供給にも対応している。
次に「Media Production Suite」についてだが、これはIntel Core第7世代(Kaby Lake)以降のPCでインストールして動作するサーバーソフトウェアだ。基本的にはWebUIで操作するが、サーバーソフトウェアを起動した上でGUIソフトを立ち上げる必要がある。
立ち上げると、画面中央上部にはリアルタイム映像、下部にはプリセット、サイドパネルにはPTZコントロールやAuto Tracking機能の操作ツールが表示され※1、直感的に操作が可能だ。サイドパネルのツールは用途に応じて全体に拡張して表示もできるため、詳細な設定が必要な場合に便利だ。
※1:同ツールが有効になるのは、カメラが内蔵自動追尾に対応している場合、またはMedia Production Suite上でAuto Trackingプラグインが有効になっている場合です。
Media Production Suiteのカメラ登録も非常に簡単で、サーバーPCとPTZカメラを同じネットワーク内に設定し、カメラ検索を行えば登録できる。
まとめ
今回、各社のPTZコントローラーやソフトウェアを触ってみたが、用途に応じて使い分けが可能だと感じた。ソニーのRM-IP500はセンサー精度が高く、プロの撮影現場にマッチしそうだ。キヤノンのRC-IP1000は、タッチパネルモニターやジョイスティックの操作が簡単で、初心者でも扱いやすいだろう。
パナソニックのAW-RP150GJは、コンサート会場などの高度な映像演出の現場で活躍しそうだ。一方でMedia Production Suiteは、UIがすっきりしており、学校や一般企業での利用にも適しているだろう。
泉悠斗|プロフィール
神成株式会社、AVC事業部 部長。マルチカムでの収録および配信をはじめとする映像制作全般を得意とし、最新の機材を取り入れた映像制作に取り組む。近年では、西日本一の長さを誇る水上スターマインを打ち上げる「福山あしだ川花火大会」の生中継をはじめ、「TOYAMA GAMERSDAY」などのe-Sports映像制作まで幅広く手掛ける。また、高校放送機器展事務局長として、学生の映像制作活動支援を行う。