Lexar CFexpress 4.0 Type B Diamond 1TBの発表

LexarはCES2024にて次世代の規格CFexpress 4.0対応のカード 「Lexar CFexpress 4.0 Type B Diamond 1TB」を発表した。日本では、12月下旬より順次大手家電量販店やECサイトで販売を開始する。
今回はこのカードを8K RAW動画を収録可能なNikon Z9とZ8で検証する。

Lexarは1996年に設立された会社で、デジタル記憶メディアを 製造販売している。長く映像や写真をやっている方は 一度はお世話になったことがあるだろう。 私もCFastカード時代に使用しており、特にトラブルは記憶になく信頼がおけるメーカーの1つだ。

もちろん、現代のハイスペックなカメラに採用されている CFexpressカードも製品化している。

CFexpress 4.0とは

今回試す「Lexar CFexpress 4.0 Type B Diamond 1TB」だが、そもそもCFexpress 4.0とはどんな規格だろうか。

この規格は、PCIe 4.0インターフェースとNVMe 1.4プロトコルに基づいており、従来のCFexpress 2.0と比較して2倍の速度向上を実現。最大4GB/sの転送速度(理論値)で、8K動画や高解像度RAW写真の高速書き込みが可能となっている。また、従来のCFexpress 2.0との下位互換性も確保されている。

CFexpressカードの選び方

CFexpressカードを選ぶ際のポイントは、「書き込み速度」「連続した書き込み速度の維持」「低発熱」の3点に注目すると良い。

キャッシュ容量が少ないと、書き込み速度が低下し、記録が停止してしまう可能性がある。Lexar CFexpress 4.0 Type B Diamond 1TBはVPG400規格に認定されており、400MB/sの最低持続書き込み速度が保証され、カードへの連続的な高速書き込みが可能だ。

私的に最低持続書き込み速度を保証しているカードは信頼ができる。また、CFexpressカードの発熱は非常に大きく、カメラの熱停止の要因の一つとなることがある。初期のカードは特に発熱が大きかったものの、最近のカードは発熱を抑える設計が施されているものが多くなっている。

過酷な環境下での連続書き込みを検証

さて、CFexpressカードに関する前知識はこの辺にして、 いよいよLexar CFexpress 4.0 Type B Diamond 1TBの検証に入る。

実はこの記事の依頼を受けた際、使用するカメラはNikon Z9と指定されていた。 しかし、Z9は放熱性に非常に優れており、発表時のキャッチコピーが 「UNSTOPPABLE」というほど、停止しないカメラだ。

一方、Z9を小型化したZ8は放熱に関して少しシビアで、 熱による停止が発生することもある。そこで、より過酷な環境での テストとして、Z8でも併せて検証を行った。

Nikon Z9 / Z8は8.3K60PのRAW動画を撮影できる。 画質は高画質と標準画質から選択できるが、今回はなるべく厳しい条件で 検証するため高画質で記録を行った。この条件で記録をすると 約5780Mbps(722.5MB/s)となりカメラやカードに対する負担も大きい。

1TBのこのカードで約22.5分の記録が可能だ。 短いと感じるかもしれないが、普段は8.3K30P 標準画質で撮影することが多く、 約78分記録できる。

Z9 / Z8は何段階か警告が出た後に録画を停止する。 まずカードが熱くなると「Hotcard」、その後3段階の熱警告が出て 最終的にカウントダウンが始まり停止する。

検証結果

計測の結果は下記の通りである。Z9 / Z8共にカードがフルになるまで 問題なく記録をすることができた。まだまだ余裕そうだったので 間髪入れずにフォーマットをし、熱を持った状態で再度録画を開始した。

結果Z9では125分、Z8では89分連続して記録することができた。 Z9では1度も警告が出ず2時間以上の記録ができたため記録を終了した。

カメラ別の検証結果

項目 Z9 Z8
連続録画時間 125分 89分
Hotcard 22分
CameraHot 黄 36分
CameraHot 赤 50分
CameraHot High 66分
備考 熱停止せず 89分で停止

実際の現場での使用感

せっかくなので、実際の現場で使用してみた。私は主に山岳映像を撮影しており、 屋外での撮影がメインだ。ちょうど夏の終わりの炎天下での撮影があったので、 実際に使用してみた。1TB分フルに撮影したが、全くトラブルなく 撮影を終えることができた。

8K RAWでの収録は、主に8.3K30P標準画質で行うことが多く、 1つのカットも数秒から長くても数分程度だ。

前項で述べた室内での耐久テストに比べ、カードやカメラへの負担は少ないのは当然だが、実際に使用してトラブルが起きないと、安心感と信頼感がさらに高まる。

スチール連写撮影時の書き込み速度検証

Nikonのカメラを使う理由の一つとして、動画とスチールの両方を 高いレベルで撮影できる点が挙げられる。スチール連射時のカードへの 書き込み速度は非常に重要だ。

Z9 / Z8はCFexpress 2.0対応のカードスロットを持つため、 Lexar CFexpress 4.0 Type B Diamond 1TBの性能を最大限に活かせる わけではないが、検証を行った。最高画質のRAW+FINE★設定で、 最高速度20コマ/秒の連射を実施した結果、Z9 / Z8共に 約45〜50枚程度の速度を維持できた。

PCへの読み込み速度検証

MacBook Pro M1 MaxにLexarのCFexpress 4.0対応のカードリーダー 「WF740」を使用し、Blackmagic Speed Testで計測を行った。 書き込み2435MB/s、読み込み2920MB/sととても高速で快適だ。

Lexar CFexpress 4.0対応カードリーダー「WF740」

普段使用している2.0対応のリーダーを使用した場合と比較した。書き込み速度は約2.5倍、読み込み速度は約3.2倍と、CFexpress 4.0対応のカードリーダーの方が圧倒的に速かった。

Lexar CFexpress 4.0対応カードリーダー「WF740」(左)、CFexpress 2.0対応カードリーダー(右)。
両方ともカードはLexar CFexpress 4.0 Type B Diamondを使用。

CFexpress 2.0のカードを比較したところ、規格通り約2倍の速度で転送ができた。

Lexar CFexpress 4.0 Type B Diamond(左)、CFexpress 2.0カード(右)。
両方ともカードリーダーはLexar CFexpress 4.0対応カードリーダー「WF740」を使用。

実はWindowsでも転送速度を計測したが、私のWindows機はUSB4対応しておらず、USB3.2 Gen2 x2 までしか装備していないため、CFexpress 2.0対応のリーダーと同じ程度の速度しか出なかった。

Blackmagic Speed Testは、高速なPCの内部ストレージへの読み込みと、カードへの書き込み速度を計測するツールである。しかし、実際の運用において1TBものデータを内部ストレージに保存するのは非現実的であり、バックアップするメディアの転送速度も重要な要素となる。

まとめ

Lexar CFexpress 4.0 Type B Diamond 1TBは、次世代のメディア規格に対応した 高性能カードとして、様々な角度から検証を行った。その結果、高速性能、信頼性、 互換性、熱対策など、多くの面で優れた特性を示した。

実際の撮影現場でもトラブルなく動作し、高い信頼性を証明した。 CFexpress 2.0対応機器との互換性も確保されており、現在の機器でも 使用可能である。

ただし、CFexpress 4.0の恩恵をフルに受けるためには、CFexpress 4.0対応のカードリーダーとUSB4対応のPC、そして3000MB/sの転送速度が出るデータストレージ(SSDやRAIDディスクなど)が必要である。これらの条件が揃った時、映像編集の現場で本領を発揮する。

総じて、このカードは高品質な映像制作や写真撮影を行うプロフェッショナルにとって、信頼性が高く将来性のある選択肢と言える。現在の機材構成や将来的なアップグレード計画を考慮しつつ、導入を検討すると良いだろう。

Lexar CFexpress 4.0 Type B Diamond 1TB 製品情報

容量:1TB

書き込み速度:3400MB/s

読み込み速度:3700MB/s

ビデオクラス:VPG400