IBC 2026のソニーブースにて、第4世代へ進化するプロフェッショナル向けデジタルワイヤレスマイクロホンシステム「DWXシリーズ」を見た。今回、実機を目の前にして感じたのは、単純に性能を引き上げるのではなく、放送や制作の現場で長く使われるワイヤレスシステムを、実際の運用に合わせてどう更新していくかという考え方が随所に盛り込まれていることだ。
今回ソニーブースで見たものは、ボディパックトランスミッター「DWT-B40」とラックマウントレシーバー「DWR-R40Q」の2機種。いずれも2027年2月発売予定で、価格はオープンとなる。
第4世代では、伝送信頼性の向上に加え、送信機での32bit Float内部録音、タイムコード同期、受信機の4チャンネル化、セットアップの簡略化、既存DWXシリーズとの互換性など、収録から運用までのワークフロー全体を見直している。
ソニー担当者によると、国内では約10年前に報道局などへ導入されたDWXシリーズが更新時期を迎えつつあるという。そうした既存ユーザーが現在の設備を生かしながら次世代へ移行できることも、第4世代DWXの重要なポイントになっている。

32bit Float内部録音に対応した「DWT-B40」

DWT-B40は小型・軽量のボディを維持しながら、送信機内音声レコーディング機能を新たに搭載した。
内部録音は32bit Floatに対応し、記録メディアにはmicroSDカードを使用する。ソニーによれば、独自のアルゴリズムによりクリアでノイズのない内部録音を実現するという。ワイヤレス伝送とは別に送信機側でも音声を記録できるため、DWT-B40は音声を送信する機器だけでなく、収録データそのものを保持する役割も担う。
録音は送信機本体から行えるほか、PCソフトウェア「Wireless Studio」からリモートでRECをコントロールすることも可能だ。多数の送信機を使用する現場でも、個々の送信機へ直接触れることなく録音をコントロールできる。
タイムコード同期にも対応する。カメラやタイムコードジェネレーターと送信機のタイムコードを同期でき、内部録音した音声を映像と組み合わせる際のポストプロダクション作業を効率化する。タイムコード同期にはUSBおよびアナログ接続を利用できる。
伝送面では、波形品質や変調精度を向上させ、伝送信頼性を高めた。送信電力は1mW、5mW、10mW、50mWの4段階から選択でき、使用環境に応じた運用が可能となる。
また、コンデンサーマイク接続のための+48V供給にも対応する。ラベリアマイクを中心とした従来のボディパック運用に加えて、接続可能なマイクの選択肢を広げている。マイクコネクターについても耐久性を強化した。
電源は単3形乾電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン充電池に対応するほか、USB Type-Cからの給電も可能だ。用途や収録時間に合わせて電源方式を選択できる。
装着方法についても見直され、使い勝手を高めたレザーケースと、コンパクトな仕込みを可能にするワイヤークリップが用意される。
1Uで4チャンネル受信に対応する「DWR-R40Q」

受信側のDWR-R40Qは、1Uサイズのラックマウント筐体で4チャンネル受信に対応する。従来の1U・2チャンネル構成から受信チャンネルを倍増し、同じラックスペースでより多くのワイヤレスチャンネルを扱えるようになった。
担当者が今回の大きなポイントとして挙げていたのも、この1U・4チャンネルという構成だ。特に多数のワイヤレスマイクを使用する報道局やスタジオでは、ラックスペースの効率を高められる。
フロントパネルのレイアウトも刷新され、各チャンネルの状態を確認できる視認性の高いLED表示を備える。各チャンネルにはヘッドホンモニターボタンを搭載し、確認したい音声へ素早く切り替えられるほか、送信機内レコーディング機能の状態も受信機側から確認できる。
背面にはアナログXLR出力、DanteによるIP Audio、BNC端子によるデジタルAES出力を備え、用途に応じて3種類の出力方式を選択できる。
Danteについては2ポート、LANも2ポートを搭載し、シンプルなデイジーチェーン接続に対応する。複数台を組み合わせることで、最大32チャンネルの音声を1つのヘッドホンでモニターすることも可能だ。

受信性能では、最新の高性能RFデバイスと高性能なRF回路を採用し、ノイズの多い電波環境でも安定した受信性能を発揮するという。
さらに、受信安定性を高める「4-Diversity mode」を搭載する。このモードでは4系統を利用し、DWR-R40Qを2チャンネル受信機として動作させることで、より安定したワイヤレス運用を可能にする。
Quick Setupでセットアップ工程を約80%削減
DWR-R40Qでは、セットアップ方法にも大きく手が入った。従来は現場入りしてから周波数や送信機の設定に手間がかかっていたが、新たな「Quick Setup」によって設定工程を簡略化している。
Quick Setupボタンを長押しすると、使用可能な周波数をAutoスキャンして自動設定。その後、4台の送信機を順番にペアリングすることで運用を開始できる。ソニーによれば、従来と比較してセットアップのステップ数を約80%削減したという。
ワイヤレスマイクはチャンネル数が増えるほど、周波数の選定やペアリングなどの準備作業が複雑になりやすい。DWR-R40Qでは受信チャンネルを4チャンネルへ増やす一方、セットアップ工程を簡略化することで、多チャンネル運用時の負担軽減を図っている。
既存シリーズとの互換性で段階的な移行に対応
第4世代DWXを既存ユーザーが導入するうえで重要になるのが、従来シリーズとの互換性である。DWT-B40とDWR-R40Qは、既存コーデックモードである「Mode 2~4」に対応し、新旧の送受信機を組み合わせた運用が可能だ。
既存の送信機と新しいDWR-R40Q、新しいDWT-B40と既存の受信機という組み合わせでも、対応するコーデックモードを使用して音声伝送できる。放送局や制作会社がシステム全体を一度に入れ替えるのではなく、現在の設備を生かしながら段階的に第4世代へ移行できる。
この互換性は、国内で長年DWXシリーズを使用してきたユーザーにとっても重要になる。既存システムの更新時期を迎えるなか、新旧機器を組み合わせながら必要な部分から更新できることは、設備更新のハードルを下げる要素となる。
国内設計・生産と環境に配慮した取り組み
今回の説明では、製品機能だけでなく設計・生産体制についても紹介された。国内顧客からの声を設計担当者を含むチームで直接収集し、製品へ反映する体制をとるほか、シミュレーション技術の活用と多岐にわたる信頼性評価によって品質を高めている。設計・生産も国内で行う。
環境面では、ソニーが開発した再生プラスチック「SORPLAS」を採用するほか、プラスチック使用量を抑えた包装設計を進める。ソニーグループが掲げる長期環境計画「Road to Zero」の考え方に沿って、製品だけでなく設計、生産、包装まで含めた環境負荷低減に取り組む。
現場運用を見直した第4世代DWX
今回の展示を見て印象に残ったのは、個々のスペックアップ以上に、長期間使用される業務用ワイヤレスシステムの運用全体を見直している点だ。
DWT-B40では、送信機そのものに32bit Float内部録音とタイムコード同期を追加し、単なる音声伝送機器から収録機能まで担う機器へと役割を広げた。一方のDWR-R40Qは、1Uサイズで4チャンネル受信に対応しながら、LEDによる状態確認、ヘッドホンモニター、Quick Setupによって多チャンネル運用の扱いやすさを高めている。
さらに、既存DWXシリーズとの互換性を維持することで、現在使用している設備を生かしながら新世代へ移行できる。見た目はこれまでのDWXシリーズから大きく離れていないが、内部では録音、伝送、受信、モニタリング、セットアップまで、現場でワイヤレスシステムを使用する一連の流れが見直されている。
第4世代DWXは、単純な性能向上だけを目的とした世代交代ではなく、長年使われてきたシステムを次の世代へどうつないでいくかまで含めて設計されたモデルだと感じた。