最近は小型ビデオカメラが各社から発売され、そうしたカメラに対応した周辺機器も市場をにぎわせている。今回は肩乗せタイプのカメラに適合した三脚を取り上げてみたい。というのも小型ビデオカメラでのオンボードライトやレコーダー、外付けのバッテリーなどを装着するとこのクラスの三脚が必要になるために使い回しを考えるとこのチョイスは外せない。小型ビデオカメラのみという限定用途では、もちろん別の選択肢があり、また別の機会に取り上げたい。

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今回の検証は、つい先ごろ発売されたばかりの平和精機工業Libec RS-450と、このクラスの三脚としては定番といえるVinten Vision 6-AP2Sachtler DV8SB/2Dの計3機種で、全て75mmボール径の三脚を使用した。写真は、基本Vision 6-AP2、DV8SB/2D、Libec RS-450の順になっている。

また三脚に搭載したカメラは、ソニーHVR-S270Jと日本ビクターGY-HM700、パナソニックAG-HPX305の3機種で、いずれも最近発売された1/3型の撮像素子を採用したモデルだ。これらはいずれも5~7kgの重量となっているが、外観デザインも重心位置も異なる。

脚部の段数はいずれも同じで、最大高や最小高などは、表のようにほぼ同様な仕様で、極端に大きな違いはない。

* 数値は全て実測値(cm)

 

最大高

最小高

開脚最小高

収納

Vision 6-AP2

170

72

55

84

DV8SB/2D

163

76

50

83

Libec RS-450

166

76

60

85

ヘッド部分は、パン/ティルトのドラッグ調節やカウンターバランス、ロックなど各社各様で、もっとも特徴的なところなので、簡単にそれぞれの特徴を紹介しよう。

  • Vinten Vision6AP2:カウンターバランス、ドラッグ調節ともに無段階調節が可能で、ドラッグ調節は歯車状のダイアルで調節するようになっている。ティルト角は今回取り上げた3機種のうち唯一±90°まで可能だが、最大荷重付近では範囲が狭まる。
  • Sachtler DV8SB/2D:カウンターバランスは12段階、ドラッグ調節は大きなダイアルで5段階およびフリーに切り替えることができる。カウンターバランス、ドラッグ調節ともにダイアル位置に関係なく同じフィーリングで切り替えることが可能で、すぐにまったくドラッグが利かないフリーに切り替えることも可能だ。
  • Libec RS-450:カウンターバランスは無段階調節、ドラッグ調節はダイアル操作で3段階およびフリーに切り替えることができる。ドラッグ調節が3段階/フリーというのはちょっと寂しい気もするが価格を考えると、いたしかないところだろう。なお、Vision6と同様、カウンターバランスを最大荷重付近までいっぱいにするとティルト角の範囲は狭まる。

以上の特徴を表にすると以下のようになるが、Vinten Vision6-AP2はカウンターバランス、ドラッグ調節ともに無段階調節なのに対し、Sachtler DV8SBはカウンターバランス12段階、ドラッグ調節5段階/フリーとなっており、調節方法に統一性がある。一方Libec RS-450はその間をとるように、カウンターバランス無段階調節、ドラッグ調節3段階/フリーとなっている。

*重心高100mm

 

ティルト角

カウンターバランス

ドラッグ調節

最大荷重*

Vision 6-AP2

±90°

無段階

無段階

10kg

DV8SB/2D

+90/-75°

12段階

5段階/フリー

13.4kg

Libec RS-450

+90/-70°

無段階

3段階/フリー

10.5kg

三機種とも水準器のライトアップが装備されているほか、パン棒は左右に装着することができるようになっている。なお、いずれの機種もカメラの前後位置の調節ができるようになっているが、Sachtler DV8SB/2Dはカメラプレート部分全体が前後する方式で、他の2機種はスライドプレート方式だ。

Vision 6-AP2、DV8SB/2DそしてLibec RS-450の細部を比較してみると…

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左からVision 6-AP2、DV8SB/2D、Libec RS-450のヘッド調節部分



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オワン留めネジ。Libec RS-450、Vision 6は、大き目のダイアルノブだが、指先で操作が必要で、いまいち力が入らない。Sachtler DV8SBは、細長い棒状で、しっかり握ることができる


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オワン部分は水平出しの要である。各社しっかりとした構造になっている


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スプレッダーはいずれも樹脂製で、Sachtler DV8SB以外は目盛りが付いている



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石突き部分の形状はいずれもほぼ同じラバー製のバンドで固定する。Vision6-AP2はつまむタイプだが、他の2機種は指を入れて楽に装着できる



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バックへの収納状態。Vision6-AP2のバッグは周囲がウレタンで覆われ、内側と外側にカメラアダプター(ふね)やパン棒なども収納できる

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三脚にカメラを実装してみる

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さて、ソニーHVR-S270J、日本ビクターGY-HM700、パナソニックAG-HPX305の3種類のカメラをそれぞれの三脚に載せてみたところ、いずれも問題なくバランスをとることができた。当初Sachtler DV8SB/2Dのカウンターバランスが無段階ではないので、ピッタリと合わせることができないのではないかと思われたが、重量級のカメラで、ドラッグ調節をフリーにしたときに、ティルト角が大きくなると問題がある程度であった。ただしこれは、カウンターバランスが無段階のVision6-AP2やLibec RS-450でも程度の差こそあるものの同様である。

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パン/ティルトの操作フィーリングは、非常に重要な項目であると同時に操作するカメラマンの好みで意見の分かれるところでもあるが、斜めパンやバックラッシュなどに関しては共通する事柄だろう。今回取り上げた3種類の三脚はいずれも業務用のビデオ三脚のメーカーとして定評のある老舗の製品だけあって非常にスムースであった。ただし、Sachtler DV8SB/2Dは、ほかの2機種よりも脚部が弱いようで、最大まで脚を伸ばした状態での望遠撮影はちょっと問題がありそうだ。この点ではLibec RS-450が一番しっかりしているように感じた。だだ、Libec RS-450は残念なことにドラッグ調節が3段階となっており、この点を割り切って使う必要がありそうだ。

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Libec RS-450のスライドプレートはVision6-AP2と同じタイプ。ヘッド部分には1/4と3/8のスペアネジを収納できるのは便利。また水準器照明部分はユニットごと取り外すことができる

三脚選びは、納得のいくまで慎重に…

三脚に何を求めるかは人それぞれである。操作性を重視する人もいれば、運搬や取り回しを重視する人、コストを重視する人などである。HDの時代に突入して久しいが、カメラが高性能化し、価格も下がった現在、三脚へかけるコストもおのずと限られてくる。もちろん、カメラより高価な三脚をチョイスする人もいるだろうが、ビジネス的に考えればかなり特殊な存在であろう。

今回取り上げた三脚の価格は以下のとおりだが、Sachtler DV8SB/2D、VintenVision6-AP2が実売で30万円台なのに対し、Libec RS-450は何と半額以下の価格設定となっている。ドラッグ調節が3段階という部分を除けば、ほぼ互角の性能と機能をもっており、非常にコストパフォーマンスの高い製品といえる。

  • Vinten Vision6-AP2 参考販売価格 ¥320,145(税込)[メーカー希望小売価格¥381,150 (税込)]
  • Sachtler DV8SB/2D 参考販売価格 ¥359,058(税込)[メーカー希望小売価格 ¥432,600(税込)]
  • Libec RS-450 参考販売価格 ¥136,000(税込)[メーカー希望小売価格 ¥194,250(税込)]

WRITER PROFILE

稲田出

稲田出

映像専門雑誌編集者を経てPRONEWSに寄稿中。スチルカメラから動画までカメラと名のつくものであればなんでも乗りこなす。