マックレイが誇るプレントユニットがProduction Premiumで手に入れる ものとは?
やはり同じソリューション内で、一気通貫に完結する事は、多岐に別々のアプリケーションを渡り歩くよりも煩雑な事なく、効率的にクリエイティブ作業に邁進できる事は言うまでもない。Adobe Creative Suite 5.5 Production Premiumがリリースされてほぼ半年になるが、多くの現場でもAdobeCS5.5のソリューションが多く見られるようになった。実際に使用している現場からその声に迫ってみた。今回はその二回目。
映像制作者にとってマックレイと言えば、ビジュアル・クリエイティブ・サポートを行っているマックレイユニットが知られている。このマックレイユニットとは別に、もう1つの事業の柱として、各種イベントに向けた映像音響演出サービスを行っているのがプレントユニット(東京事業所=東京都大田区)だ。このプレントユニットは、ステージ演出をはじめ、展示会のサポートや、HD撮影なども行っている。機材レンタルと、その技術サービスを中心に提供して来たが、近年はイベントで使用するための映像制作も行い、イベント全体で一貫したサポートを提供してきている。
プレントユニットが映像制作業務を開始したのは、社内の人事異動がきっかけだった。マックレイユニットでポストプロ業務を行っていた有木優氏がプレントユニットのショーテクニカルグループに異動となったためだ。プレントユニットではそれまで、イベント映像部分に関しては外部クリエイターに発注して制作を行っていたのだという。マックレイユニットから制作経験のある有木氏が異動となったことで、Production Premium環境を導入。社内での制作業務を開始した。 有木氏は、Production Premiumの導入について次のように話した。
WindowsもMacも使用していたことがあるのですが、マックレイユニットでMacを使っていたと言うこともあり、今回は連携をとる可能性を考慮してMacを優先に考えました。Premiere Pro、After Effects、Photoshopの連携がスムースで、EncoreでDVDやBlu-rayディスクに書き出しも可能なことからProduction Premiumの導入を決めました。現在、CS5.5で使用していますが、64-bitアプリケーションになってからレスポンスの向上は目を見張るものがあります。フルHDパネル16面を用いて表示させる映像の制作をPremiere Proを使って作業していたのですが、Adobe Mercury Playback Engineのおかげで、表示解像度を落としてはいたものの16ストリームのHD映像を同時にリアルタイム再生できたことは驚きでした。After EffectsもRAM空間を有効に使用できるようになり、RAMプレビュー生成が速く、しかも長時間プレビューできるようになり、使い勝手がかなり改善しました
プレントユニットだから可能になるイベント映像
制作している映像は、マックレイユニットでの作業が追いつかない時に作業を依頼されるものを除けば、プレントユニットがサポートするイベントの映像制作に関するものが中心だ。
ポストプロの作業とは異なり、イベント内容に合わせて映像を企画して、編集、コンポジット&エフェクト、最終出力まで、自分で映像制作しているという実感と醍醐味があります
と有木氏は話す。
イベント映像は、マルチスクリーンでの分割上映や分散配置したディスプレイへの同期表示、縦置きディスプレイの活用など、テレビやスクリーンの枠に縛られない、さまざまな映像活用の取り組みがあることから、映像クリエイターとしてかき立てられるものがあるようだ。映像制作は、Premiere Proで映像を並べ、楽曲に合わせて調整を行い、Dynamic Link機能やクリップのコピー&ペーストを活用しながらAfter Effectsでエフェクト追加やタイトル作業を行っている。3DCGが必要な場合は、After Effectsとの連携がスムースなMAXON Computer製3DCGアニメーションソフトウェアCINEMA 4Dで制作し、After Effectsに素材としてインポートしているそうだ。
プレントユニットでは、2011年2月19日にナゴヤドームで開催された「東京ガールズコレクション in 名古屋」(主催=中日新聞社、ナゴヤドーム、東京ガールズコレクション実行委員会、演出=DRUMCAN、企画・制作=F1メディア)の映像音響機材レンタルと技術サポートを行った。さらに、ファッションショーやライブステージにおいてメインステージ後方のLEDパネルに流されるオープニング映像をはじめとする演出映像についても制作した。
有木 優氏(左)とサポート・サービス部部長 早川 峰氏
テレビやスクリーンに流す作品を作る場合は、カラースペースが狭く、落ち着いた配色になります。イベント映像をこのカラースペースで制作してしまうと、イベント会場では地味過ぎる感じに仕上がってしまいます。イベント向けに制作する場合は、コントラストを高めにとり、ビビッドな色使いをするなど、工夫しています(有木氏)
プレントユニットには、カラースペースの確認などで他社にはない強みもあると話すのは、サポート・サービス部の早川峰氏だ。
プロジェクター、ディスプレイ、LEDパネルなど、イベントで使用する表示装置に合わせて、映像を作れます。通常は、実機での確認は現地でしかできないことも多く、作っている時と印象が変わることも多いのですが、映像音響機材レンタルを行っているため、必要な時に随時、実際の上映機材を使用して表示テストを行うことができるのが強みです。イベントで使用する映像が完成した後にも、実機上映した映像を確認してから納品するようにしています
有木氏の異動により映像を社内制作するようになって、実機上映テストと映像制作がスムースに連携するようになり、より効率的な作業が可能になったという。
映像制作本来の部分に集中できるProduction Premium
プレントユニットが制作して、東京ガールズコレクション in 名古屋で使用した映像は約20本。有木氏は、これらの全ての映像をProduction Premiumを駆使して約1カ月で仕上げている。オープニング映像は1分間だが、その他の演出用映像は1本20~30秒だという。確認も含めると、1日に1~2本のペースで制作していくペースだ。イベント映像で、見た目が派手な演出が必要ということもあり、作業の中心はAfter Effectsとなる。有木氏は、業務でProduction Premiumを使うようになって、ポストプロで使用しているハイエンド制作システムにはない使い心地があると話した。
学生時代にPremiereやAfter Effectsを使用していたのですが、マックレイユニットではノードベースのハイエンド合成編集システムを使用していました。ノードベースの作業は工程が分かりやすいのですが時間軸が分かりにくいんです。また、コンポジットをするためのガベージマスクなどは切りやすいのですが、モーショングラフィックスやモーションタイプといった作業は難しかったですね。特にテキストを扱う作業は1文字ずつ画像として作業しなければならないなど、大変なものがありました。
After Effectsはタイムラインベースなので、見た目が分かりやすくていいです。タイトルテキストもPhotoshopやIllustratorなどと同様に扱うことができますので、制作スピードも上がりました。豊富なプラグインもあって作業がしやすいのも特長ですね。マックレイユニットのシステムで作業していた時は3Dコンポジットを終えてからエフェクトを追加する必要があり、作業を切り分ける必要があったのですが、After Effectsではフレアを3D空間で扱えるなど、エフェクトも3D空間上に配置でき、合成とエフェクトを同時に使えるのが便利です
20~30本の映像を同時に制作していくにあたり、素材やバージョンの管理などが重要になる。有木氏は、マックレイユニットでの経験が生きていると言う。
普通なら、さまざまな素材や異なるバージョンのプロジェクトなどが散らかってしまって大変でしょうね。ポストプロでの作業経験もあって、ファイル名の付け方に規則性をもたせたり、プロジェクトのバージョンを整理したりしておくことには慣れているんです。他の人が修正したりすることもあるので、誰でも分かるようにしておかないといけないんです。番号を付けたり、頭に記号を付けたりするなど、ファイル管理にはこだわっていたので間違うことはありません
Production Premiumを使用して一貫したイベント映像制作をするようになって、映像制作本来の作業に集中できるようになったと話す。
ポストプロ作業をしていた時は、クライアントの意向を短時間で実現するためには、ノードをどのように組み立てれば効率的な表現を作れるかと苦心していました。しかし、Production Premiumで映像制作をするようになって感じたのは、クライアントのイベントにふさわしい、より魅力的な映像を企画し、そのための映像をどう仕上げ、新たな表現を創り出していけるかという映像制作本来の部分に集中させてくれるということ。64-bitアプリケーションになって快適に作業ができるようになりましたし、これからもイベントをいっそう盛り上げられる映像を作っていきますよ