txt:手塚一佳 構成:編集部
自腹で買うからこそ見えてくるものがある
2018年9月末ついにBlackmagic Desine社(以下:BMD)からBlackmagic Pocket Cinema Camera 4K(以下:BMPCC 4K)が発売された。筆者もさっそくこのカメラを入手したので、しっかりと実用したレポートを紹介していきたい。
しかし、まだこのBMPCC 4K、一点だけ未実装な重要機能がある。それがBMD社の誇る新機軸の圧縮RAW動画形式「Blackmagic RAW(以下:BMRAW)」だ。ただ圧縮コーデックを1つ搭載していない、というだけの問題ではない。BMRAWはカメラ側の事前処理が大きい仕様のため、収録ファイルの性質や画質などは実装後、大きく変化をする可能性があるのだ。
そこで、実際の細かい運用や画質の云々についてはBMRAW導入後の後編に取っておき、今回はざっと機材の準備、簡単な使い方までおさらいをしておきたい(もちろん現状でもCinema DNG形式のカメラとしては必要充分な機能を持っている!)。
さて、この連載の肝は、「業務ユーザーである筆者が自腹で買った機材を好き勝手に使う」事にある。筆者が自分の自腹で買った機材だからメーカーにまったく配慮をする必要がない。編集部にも遠慮する必要がないことは了承をいただいている。そこを誤解して筆者の使い方にクレームを言ってくる方もたまにいるが、ユーザーの一人として拝聴はしても、それだけだ。恐ろしく実用的且つ筆者の我が儘放題の連載である。今回はその本質を思う存分に活用しているので、まあ、自腹で好き勝手使っているとこういう使い方もあるのだなあ、というつもりで読んで頂ければ幸いだ。
ざっくりとBMPCC 4Kの機能紹介
BMPCC 4Kはマイクロフォーサーズマウントの超小型シネマカメラだ
BMPCC 4Kの機能については既に既報の通りだが、ざっくりとここでも触れておきたい。BMPCC 4Kは、スチルカメラのような外観にマイクロフォーサーズマウントを備えた超小型シネマカメラであり、DCI 4K60PまでのRAW動画撮影が可能な本格的な仕様となっている。音声も、高品位な内蔵ステレオマイクがレンズ両脇から前方に向いているほか、ファンタム電源対応マイクにまで対応しており、そのスチルカメラのような外見に反した本格的なシネマカメラとなっている。
大型タッチパネルは見やすい。明るさを100%にすれば昼間屋外でも使用可能だった
シネマカメラでありながら、オートフォーカスやオートアイリスボタンを持ち、背面の大型タッチパネルでもタッチフォーカスが出来るなど、自在な操作が可能となっている。
収録メディアは、CFast2.0とSD UHS-IIのデュアル構成。ただし、RAWの収録速度を考えればCFast2.0の一択だろう。この他に、USB-C端子からの直接外部収録も可能となっている。こちらはバッテリー残量やUSB-C規格の速度制限の問題もあるので、RAWを本気で撮影する、というよりも圧縮RAWやProRes形式でのビデオ撮影などに向いているだろう(BMRAW実装後には、Q5圧縮がこの外部USB-C収録に非常に適していると思われる。また、SDカード収録も現実的になるだろう)。
収録メディアはBMRAW実装前の現状のところ、速度上の問題でCFast2.0がおすすめ
既存のCinema DNG 1:3で撮影したデータはURLを後述するので、是非とも見て頂きたい。マイクロフォーサーズセンサーとはいえ、しっかりとした映画品質であることが見て取れると思う。
今回の撮影では、レンズはとりあえず、OLYMPUSの「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO」を使用した。 このレンズ以外では、Panasonicの「LUMIX G X VARIO 35-100mm/F2.8/POWER O.I.S.」も試したが、発売直後に購入したままファームアップをしていなかったため、当初このBMPCC 4Kに装着しても全くフォーカスが合わず、まったく撮影が不可能であって大いに焦った。ファームアップ後にもちろん何の問題も無く使えるようになったのでレンズのファームアップの確認はしっかりとしておいた方がいいだろう。今やレンズもコンピュータ内蔵の精密電子機器なのだなあと実感する出来事であった。
現状の大きな問題の1つ。それは電源
現状の大きな問題の1つが電源だ。グリップに内蔵してメインに使うLP-E6タイプのバッテリーは、4K DCI 60Pでバックモニター100%では10分程度しか持たない。4K DCI 24P、バックモニター50%程度で、ざっくり20分弱持つ。撮影をしない待機状態で30分程度は持つだろうか?
いずれにしても、現状では1回の撮影で10個程度のバッテリーを用意する必要があるだろう。今回は実収録時間1時間を切る撮影時間であったが、待機時間が3時間程度あったこともあって7個のバッテリーを使い果たしてしまい、危ないところであった。
なお、BMPCC 4K標準付属のバッテリーでは残量%表示が出ないが、Canon製やROWA製のバッテリーなら%表示が出る。いずれにしても電源の不足の問題は、外付け電源ケーブルが発売になれば外部バッテリーなどからの給電で解消されると思われる。
バッテリー位置がバックモニターから右に寄っているため、雲台が干渉しなければ撮影の合間にドンドン交換できるのも大きなメリットの1つだ。反面、私がメインで使っているManfrottoのナイトロテックN8フルードビデオ雲台では、リリースレバーが干渉して雲台に載せたままのバッテリー交換が出来なかった為、予備の三脚として持ってきていたLIBEC ALLEXの出番となった。BMPCC4Kは非常に独特な形状なのでこの辺も要確認だ。
バッテリーはこれだけ用意しても実収録1時間、待機3時間で使い果たしてしまった!
今回は、BMRAW実装前ということもあり、今まではURSA系にしか付いていなかった新しいLogカラーモードであるBlackmagic Film to Extended Video v4で、試しに撮影してみた。URSA mini PROでは「Blackmagic 4.6K Film to Extended Video v4」だが、このBMPCC 4Kでは「Blackmagic 4K Film to Extended Video v4」になるので注意が必要だ。この2つはセンサーが違うため色味もだいぶ違う。
さて、この「Blackmagic 4K Film to Extended Video v4」では、LUTを当てるだけで通常部の色戻しだけでなく、明部と暗部の鮮明化も済んでいて、ほとんどの作業が終わってしまう。後は特徴的な部分にセカンダリを噛ませばいいだけで、非常に「賢い」カラー傾斜配分をされていると思われる。今回は敢えて色を弄らずにLUTを当てたままにしてあるのでご覧頂ければと思う。
元データは、4K DCI 60P、余程複雑な被写体でない限りは視覚的にほぼロスレスとされる3:1圧縮での撮影なので、単純に公称値であるCinemaDNG RAW 3:1 30fps=129MB/sの2倍、大体260MB/sのデータ流量だと思われる(これが近い将来BMRAWが入れば、常用形式となるQ5圧縮で 30fps平均=約50MB/s弱と予想されるので、60fpsでも100MB/s弱で済む!視覚的に完全にロスレスなQ0では3.5倍程度なので、30fps=175MB/s弱 60fps=350MB/s弱くらいが予想され、Cinema DNG形式での3:1より若干データ量が増える程度でCG合成にも耐えうる視覚的ロスレスを保障するデータ形式になると思われる)。
今回の被写体は、町田時代祭での、全日本戸山流居合道長谷川剣士による太巻き藁の試し斬りだ。BMRAW導入後にローリングシャッターの出方などがどう変わるかわからないので、今回はFIXにて撮影した。
青眼に構えた場面での戦前の靖国鋼と思われる青みがかった華やかな刀の刃紋から、刀を振る長谷川剣士の皮膚の動きまでが克明に描写され、4K DCI 60Pの魅力が存分に出ているのではないだろうか?また、煙などの例として、同じ町田時代祭での森重流砲術の演武を収録した。
全日本戸山流居合道 長谷川剣士による太巻き藁試し斬り。余談だが、同剣士は同世代最強の男の一人だと筆者は考えている。筆者は若い頃に運良く何度かご指導賜ったが、いかなる奇襲をしても簡単にいなされ、全く手も足も出なかったのが記憶にある。あれから15年、更に腕を上げられているのがレンズ越しに見て取れるので、もう、本当にとんでもない腕前となられているのがわかる(DCI4K 60P シャッター速度1/125 ISO 125)
森重流砲術による火縄銃演武。本物の銃の煙やマズルフラッシュがしっかりと写っていることに注目されたい(DCI4K 60P シャッター速度1/125 ISO 125)
DaVinch Resolveが付いてくる!
さて、このようにしてBMPCC4Kで撮影した映像データは、RAWが基本であるだけに、後処理をしなければ使い物にならない。従来であれば、この後処理には高額なカラーグレーディング環境と高品位でこれまた高額なコンピュータ、さらには4KRAWのビットレートにあわせての超高速で高額なんて言うレベルではない価格のストレージとが必須であった。しかし、このBMPCC 4Kでは少なくともカラーグレーディング環境については安心して良い。
なんと、この価格帯の安価なカメラでありながら、フルパッケージのカラーグレーディングソフト、DaVinch Resolveのライセンスが付いてくるのである。15万円前後のカメラでDaVinch Resolveがフルライセンスで付いてくるというのは極めて破格だ。
カラーグレーディングソフトがあるのであれば、後はPCとストレージ、そしてなによりもビデオモニタ出力さえ整備すればRAWからの現像編集環境が実現出来ることになる。この章からは、そのあたりにフォーカスして話を進めいく。
さて、DaVinch Resolveを既にプロユースで使って来ている人はMac Pro等でちゃんとしたこのソフト専用のターンキーシステムを組んでいると思われるが、このBMPCC 4Kのターゲットユーザー層から見れば、ノートPC、それもWindows機での他のソフトウェアとの混在運用が現実的だろう。
しかし、ノートPCではビデオモニタプレビューが出来ず、正確な色味が取れない、という欠点がある。ノートPCでのビデオモニタの業界標準機「AJA iO4K」も、BMD社とライバル会社関係ということもあり、DaVinch Resolveでは利用できない。BMDのビデオアウト機器類も、PC拡張ボードのDeck Linkシリーズやラックマウントタイプのものばかりで、ノートPCに対応した手軽なビデオ信号出力方法は存在しないのが実情だ。また、当然にストレージボードもさせないため、再生方法にも問題がある。
で。諦めの悪い筆者は、BMPCC 4KをNABShow2018で触らせて貰ってからこの方、この存在しないやり方を実現すべく、色々と試してみていたのであった。
まず、ベースとなるノートPCには、市販で手に入りやすいノートの中で最もクリエイティブ性能に優れた1台である「HP SPECTRE 15 x360 2in1 ch-000」を用意した。これはIntel Core i7-8705Gという、Radeon RX Vega M GPUを内蔵した変わり物ノートPCで、素晴らしいGPU性能を持つ上にペン入力もタッチ入力も可能で、更にsRGBカバー率95%のHDR 4Kモニタ、テンキーまで付いているという、とても便利なマシンだ。なお、同じIntel Core i7-8705Gで似た性能でテンキー無し、代わりにWacom製ペン入力を搭載した「Dell XPS 15 2in1 9575」でも下記システムの動作は確認済みだ。
ノートPC上でちゃんと「DaVinch Resolve」が動くことを確認したら、まず何はなくともビデオ信号出力を実現してみたい。
安価で小型軽量なBMPCC4K。出来ればノートPCで運用したい。そこで筆者が組んでみたシステムがこれ
メーカー非推奨の機材試用方法その1:「DeckLink 4K StudioをThunderbolt3ビデオカードボックスで使う」
で、ここでいきなりメーカー非推奨のやり方に突入する。この章のタイトルの「DeckLinkをThunderbolt3ビデオカードボックスで使う」と言う文字列を見ただけで、詳しければ詳しい人ほど「おいやめろバカ」と思ったに違いない。自腹コーナーならではの唐突さである。
このやり方はBMPCC 4Kの国内発表会の際にBMDのこのあたりに超詳しいスタッフ氏に直接問い合わせたが、はっきりと「推奨しない」「データ流量が膨大なのでたぶん動かない」「突然接続が切れれば壊れるかも知れないからやめて」と繰り返し念を押して言われたやり方だ。
質問に回答をしてくださった方が「DeckLink 8K Pro」を最高速のビデオカードボックスに入れて実機検証をしてみて実際コマ落ちしまくっててんでダメだった、という話なので、DeckLinkをThunderbolt3ビデオカードボックスで使うのは、実行する方がバカ、全くの推奨外だ。
しかし、ここには1つ落とし穴がある。実は、Thunderbolt3接続の規格上の速度上限はPCIe3.0x4なのである。そのため、市場製品での最高速度のPCIe3.0x16を謳う多くのビデオカードボックスは、嘘だとまでは言わないが多少大げさなスペックを語っている。そして「DeckLink 8K Pro」の動作速度はPCIe3.0x16。BMD担当氏の実証実験で同ボードを最高速度のボックスに入れて試したということは、PCIe3.0x16を謳うビデオカードボックスで使って動作しなかった、という話であると考えられるのだ。
つまり、Boxに入れるボードの速度上限をThunderbolt3規格上限であるPCIe3.0x4上限のボードに制限すれば、外付けThunderbolt3接続でもDeckLinkは動作する可能性が高い(と筆者は思い込んでいる)のだ!
そこでこのPCIe3.0x4のビデオ信号出力ボードを探すと、DeckLinkシリーズで言うと「DeckLink 4K Studio」がそれにあたる。4K DCIでは25Pが最大という少し前のスペックの同ボードだが、PCIe3.0x4駆動という点1つだけで、(筆者にとっては)とてつもない価値がある。
結論から言えば、ぶっちゃけ筆者の環境では、「DeckLink 4K Studio」は何の問題も無くThunderbolt3外付けBox「AKiTiO Node」で動作しているのである。これで、ノートPCでのビデオカラーのモニタリングはバッチリ。完璧だ。映画などのエフェクト業務がメイン業務であり、自社制作においても基本的に24P世界の生き物である筆者には、これ以上の環境は必要無いので何の問題も無い(60PでもフルHDにスケールダウンすれば出力できるのでDaVinch Resolve側のプロジェクト設定でHD表示であればどうとでもなる)。
しかも、同ボードを4K DCI 24Pで使う場合には若干Thunderbolt3のデータ流量速度に余裕があるので、グラフィックボードと違い、PC直接接続でデイジーチェーンも禁止、というほど厳密な運用は求められないと思う(思い込んでいるだけなので本当かどうかは保障しない、注意!)。
DeckLink 4K StudioをThunderbolt3ビデオカードボックスで使うやり方は簡単。普通にThunderbolt3ビデオカードボックスに「DeckLink 4K Studio」を差して接続し、ネットから「DeckLink 4K Studio」のデバイスドライバ「Desktop Video」を落としてインストールするだけ。運が良ければこれで普通に外付けモニタが運用できるはずだ。
AKiTiOの安価なThunderbolt3ビデオカードボックス「AkiTiO NODE」にBMD製「DeckLink 4K Studio」をぶち込んだ。筆者の環境では無事に起動している。今回は色味を見たいのでそこから更にBMDの「SDI to Analog 4K」を通してHDの業務モニターに出力して色味を確認している。4KのままATOMOS社製収録機の「SUMO19」に表示させるという方法も便利だ
ただし、繰り返して言うが、これはBMD非推奨のやり方であり、全く動作保証はされないし、筆者も保障も推奨もする気は無い。もし試してみる気になった場合にも、失敗して当たり前、DeckLinkボードの故障のみならず、PCの故障可能性もしっかりと覚悟の上で自己責任でやって欲しい。
メーカー非推奨の機材利用方法その2:「M.2 SSDをThunderbolt3変換ケースで使う」
懸案だったビデオアウトに成功したとなると今度はノートPCで不足するのが、ストレージの容量と速度だ。ぶっちゃけ、Thunderbolt3のSSD RAIDストレージは高価すぎる上に巨大且つ電源を別途必要とするため、ノートPCでの運用はかなり困難だ。省電力なM.2 SSDをThunderbolt3に変換してThunderbolt3電源供給から使うためのミニアダプタも販売されているが、精々が256GB程度までの容量を想定したもので、ストレージに使うような1TB以上の大容量では当然に電力が足りず、その動作は保証されない。しかし、ここは自腹コーナー。とりあえず試してみる価値があることはやってみて、その結果をご報告しよう。
試してみたのは、M.2 SSD最高峰の「Samsung SSD 2TB 970 EVO M.2 Type2280 PCIe3.0×4 NVMe1.3」。試したThunderbolt3変換ケースはAmazonで適当に買った「世界最小 ポータブル Thunderbolt 3 外付け M.2 NVMe PCIe3.0×4 に対応 SSDケース 最大読込速度:2800MB/s HDDケース 外付ハードディスクケース」というノンブランドケースだ(また「おいせっかくの970EVOに何するんだ!やめろバカ!」という幻聴が聞こえた気がするが、無視する)。
結論から言うと、動作した。
ただし、このストレージ構成は接続時に電源が不足することが多く、その場合にはThunderbolt3の規格上最大速度の半分以上を食い潰すこのSSDは上手く接続しないので、接続してディスクとして認識されるまで挿し直すと良い。1度認識されれば電源を切ったり再起動するまで接続は有効だ。面倒だが、メーカー非推奨なのでしょうがない。このノンブランドケースの場合、インジケータランプが4つ点灯すれば無事に繋がった証拠であり、この表示には非常に助かっている。
つまらないコツだが、電源投入後ある程度時間が経って主要なデバイスやソフトが立ち上がり終わり、他に電源を使わない状態の時の方がこうした無茶なデバイスの接続は上手く行きやすい。動作さえすれば極めて快適で、なんと、ノートPCでCinema DNG形式のDCI4Kがシングルストリームなら何度か回していれば何とか再生できる。RAWではなくProPesであれば、カラーを弄ろうがタイムラインに並べようが、余裕でなんの突っかかりもなく動く。SSDケースからはゆで卵が作れそうなくらいの放熱があるが、上手く放熱できている証拠と考え、気にしてはダメだ。少なくとも、近い将来のBMRAW実装時には、ほとんどのフォーマットで全くリアルタイムで動作することが予想される。
ただし、繰り返して言うが、これはBMD非推奨であることはもちろん、Thunderbolt3変換アダプタメーカーすら想定外のやり方であり、全く動作保障はされないし、筆者も保障も推奨もする気は無い。もし試してみる気になった場合にも、失敗して当たり前、高価なM,2 SSDの故障はもちろん、PCの故障可能性が極めて高いのもしっかりと覚悟の上でやって欲しい。
間違ってもバックアップのない生データをこのストレージに入れるようなことはしないように!なお、抜き差ししている内にストレージの電源すら入らなくなり、そのThunderbolt3ポートそのものがどんなデバイスを付けても無反応になった場合、該当ポートが保護モードに入っている可能性が高い。
その場合には、一度シャットダウンしてから電源ボタンを15秒程度長押しすると保護モードから抜ける機種が多いのでどうしようもなくなったときには試してみてほしい。
フィジカルコントローラは無いと不便
さて、上記で最低限のカラーグレーディングと4K RAW編集の環境は整ったが、ここで、出来ればあった方が良いものが一つある。それはフィジカルコントローラだ。DaVinch Resolveの機能は余りに複雑で複数のGUIパネルに渡るため、フィジカルコントローラが無いと大変に不便なのだ。
筆者は、昔から使っている「Tangent Wave」をこのBMPCC4K対応システムでも使っている。このフィジカルコントローラはUSB一本で接続できるため、電源などの余計な取り回しの必要性がないのが魅力だ(反面、ノートPCのバッテリの減りは早くなるのでPC本体はなるべく電源接続を推奨する)。
「Tangent Wave」シリーズは、現在はよりコンパクトで同機能の「Tangent Wave2」が発売されているので、そちらでも動作をするものと思われる。もちろんBMD社からも「DaVinci Resolve Micro Panel」が出ているので、それでもいいだろう(筆者はDaVinci Resolve Micro Panelをまだ試したことがないので自己責任で!)。
さて、前半の締めとして、上記のような環境を使って、ざっくりと釣り場で撮った映像を繋いでみた。
特に弄ることもなく、撮った映像を繋いだだけでこの迫力。釣れた魚が映る手持ちのカメラ撮影カットではDa Vinch Resolveのスタビライズ機能を使って揺れを押さえている。
BMPCC 4K特有のDual ISO(400,3200の2点がネイティブISO)のお陰で、昼なお暗い堰堤下の深い谷底でもISO 1600でノイズ無しで撮影でき、同じカメラで直射日光の河原でISO 125で撮影できるのが大変に面白い。従来のシネマカメラであれば、大規模な照明とNDフィルタ無しでは対応困難な撮影だ。 BMPCC 4Kは極めて小型なので、従来であれば撮影困難だった渓流へも持ち込めている事が見て取れると思う。本当に素晴らしいカメラだ。
画質やカメラ特性などの部分は、BMRAW導入後にまた、後編でお話出来ればと思う。