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映像分野でフリーランス・テクニカルオペレーターとして、都内および近県の配信現場を中心に活躍している中村コウヘイ氏。規模の大きさに関わらず多岐に渡る業界のライブ配信に関わり、年間100件以上の案件を担当している。そんな中村氏へTriCasterに魅了された理由や、TriCasterオペレーターとしてライブ配信に臨む際のノウハウについて伺った。

TriCasterとは?

TriCaster(トライキャスター)は、米国NewTek社が開発した、番組作りの基本となるスイッチング・収録・配信・合成・テロップ作成の機能が1台に詰め込まれたオールインワンのビデオ制作システム。コンパクトなシステムの中に、テレビ放送やインターネット配信用の番組作りに必要とされる機能が搭載されており、eスポーツ配信や企業イベント、セミナー、教育機関など幅広いフィールドのライブ配信・収録で活用されている。

――中村さんが普段されている業務について教えてください

中村氏:

2017年頃から本格的にTriCasterオペレーターとして活動するようになりました。スタジオやイベント会場でライブ配信がある際には、設置されているTriCasterを操作するために呼ばれます。テレビスタジオなどとは違って、私の仕事は主にリアルタイムでTriCasterを操作し、その場で配信するスタイルが多いです。担当する配信は、eスポーツからエンターテイメント、学会、企業イベントまで規模もジャンルもさまざまです。

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――TriCasterとの出会いについて教えてください

中村氏:

TriCasterを初めて知ったのは、元マイクロソフト日本法人の社長 古川享さんのSNS投稿がきっかけでした。古川さんが「海外では、TriCasterという、素材出しから合成、配信、収録までマルチにできる高機能なソフトウェアスイッチャーが使われているんだよ」という内容のツイートをしていて、それを見て興味を持ったのが始まりでした。
当時、私も一般的なスイッチャーは使っていましたが、ライブ配信のオペレーションはカメラ映像を切り替えたり、動画や写真、テロップなどのインサート素材を出したりと、さまざまな要素が複雑に絡み合っています。そのため、カメラだけをスイッチングできるような単純なスイッチャーにはあまり魅力を感じていませんでした。
でも古川さんのツイートを見て、「あ、これだ!TriCasterなら1台でまとめてできるんだ!」と思いました。それから自分で調べて使ってみるようになり、TriCaster Miniが登場した時にはそのコンパクトさに衝撃を受けて、個人的に購入しました(笑)。その後、触れば触るほど面白くて、実際のライブ配信で使いたいという思いが高まり、それが現在の仕事に繋がっています。

NewTekでライブ映像制作

――面白いというのは具体的にどのような部分がですか?

中村氏:

何と言ってもTriCasterの多機能性とその進化性が魅力ですね。各機能が現場のニーズに細かく応えた形で備わっていて、さらには新しい機能がどんどん追加されていくのです。その機能を実際に現場へ取り入れた際に、作業効率を一気に上げられたり、作業のクオリティが格段に向上したりする体験がTriCasterの面白いところだと思います。
あと、「あ、こんな機能があったんだ!」と新たな発見が今でもまだまだ出てきます。もちろん、すべての機能が実践で使えるわけではありませんが、一つ一つの機能がとてもよく考えられていると感じています。新しい機能が追加されるたびに、それがどう現場にフィットするのか試すのは、新しい遊びを見つけているような感覚でとても楽しいです。

――その中でも特に気に入っている機能を教えてください。

マクロ機能

中村氏:

一番好きな機能は、なんと言ってもマクロ機能ですね。使った場合と使わない場合では、現場でのオペレーションに大きな違いが生まれます。
マクロ機能は一連の動作を記録して、それをボタン一つで再現できる機能です。このような機能は他のスイッチャーにも搭載されていますが、TriCasterのマクロ機能は特に使いやすいと感じています。
例えば、一連の動作をマクロとして登録し、それをコントロールパネルやキーボードなど特定のボタンに割り当てます。すると、ボタン一つ押すだけで、登録した動作を瞬時に実行できます。ライブ配信中、スイッチャー担当者はカメラの切り替えやインサートの素材出しなど、数多くの操作を適切なタイミングで実行することが求められます。複雑な操作を手動で行うとミスに繋がることもありますが、マクロ機能を使うと一部の操作を自動化できるので、配信中のオペレーションを大幅に効率化させることができます。マクロ機能を使いこなすようになってからは操作ミスによるトラブルが激減しました。

チュートリアル動画:Stream DeckでTriCasterのマクロをトリガーする方法(日本語字幕付き)

PREVIZ(プレビジュアライゼーション)機能

中村氏:

もう一つ、PREVIZ(プレビジュアライゼーション)機能もお気に入りです。PREVIZとは、ある一連の動作やシーンを視覚化することで、事前に関係者同士でイメージを共有できる機能です。映画制作などの世界でよく使われています。最初は取っつきにくい機能だったのですが、使い始めてみると非常に便利だと気がつきました。
以前は、M/E(ミックス/エフェクト)を保存して他のM/Eに移すためには、エクスポートとインポートの作業を行う必要がありました。しかし、それを行うと、TriCasterのインターフェース上でWindows Explorerが開き、その画面が背後に移動して操作ができなくなることがありました。しかも、セッションを閉じるまで続いてしまうので、M/Eの書き出しと読み込みの作業が少し怖かったんです。
PREVIZ機能が出てきてからは、M/EをPREVIZに一度送り、そこで作業を行った後に、他のM/Eへコピーできるようになりました。これにより、セッションを抜けずにM/Eのコピーやペーストが安全かつ簡単に実行できるようになりました。

充実の入出力端子

中村氏:

これはハードウェアが持つスペックの話になりますが、TriCaster 2 Eliteで実装された8系統のSDI出力端子も重宝しています。TriCaster 2 Eliteが登場する前の機種はSDI出力端子が最大でも4系統だったので、ライブ配信の現場では、正副のエンコーダー用に2系統、映像ルーター用に1系統、収録用に1系統という具合に4系統があっという間に埋まっていました。
TriCaster 2 Eliteではさらに4系統使えるようになったので、自分の仕込み作業用に外部モニターへスイッチングプレビューを出力したり、テロップ素材だけを出力してミスの削減に役立てたり、余っているM/Eで複数のゲーム画面を合成したものをディレクター用に出力したり、ビジョン用に出力したりと、現場のニーズに応じて出力先を追加できるのでとても便利です。

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――どのような案件でTriCasterを使用したいですか?

中村氏:

画面合成を含むライブ配信の案件ですね。他社のスイッチャーと比べてTriCasterが持つ最大の違いは、画面合成に対する性能の高さとその使いやすさだと感じています。TriCasterは複数のM/Eを同時に操作しながら、画面の高度なレイアウト構成が可能です。さらに、その操作性やカスタマイズ性も高く、あらかじめ設定したマクロ機能を使って、複雑な操作をボタン一つで呼び出せます。
確かにTriCasterよりも低価格のハードウェアスイッチャーもありますが、インサート素材が多く、洗練された映像作りが求められるライブ配信ではTriCasterを使う価値があると感じています。

チュートリアル動画:ミックスエフェクト(M/E)のリエントリー方法(日本語字幕付き)

――これまでの経験から、TriCasterを上手く使いこなす"コツ"があれば教えてください。

中村氏:

TriCasterを導入する現場では、合成やテロップ、素材などを駆使した画作りや映像演出が求められます。そのためスイッチングだけではなく、画面レイアウトなどの準備もTriCasterオペレーターが担うことになります。
本番中は複数のクライアントや大勢の視聴者の前で、進行に合わせてスイッチングを行いながら、多数の素材を間違えずに出しつつ、テロップをのせるというタスクがあります。そのため、TriCasterの機能を最大限に活用したいと思いつつも、スイッチャーとしての基本的な動作をしっかりと守る必要があります。ですから、準備の段階でディレクターやクライアントからさまざまな要望が来るものの、自分の能力を見極め、それを超えないように準備をすることが重要だと思います。
TriCasterのオペレーションはそれほど複雑なものではありません。基本的な操作はすぐに習得できます。しかし、本番中にミスなくスムーズに操作するにはコツが必要で、その部分でオペレーターとしての差が出ると思います。

――最後に、TriCasterを使い続けたいと思う理由を聞かせてください

中村氏:

私がTriCasterの最大の魅力だと感じているのは、高機能なソフトウェアスイッチャーであると同時に、映像制作の現場で一般的な入出力端子を一通り備えているハードウェアスイッチャーであるということです。
TriCasterはあらゆる現場で活用できるターンキーシステムとして提供されています。多機能なソフトウェアスイッチャーは他にもありますが、TriCasterは音声や映像の入出力など、必要な機能が物理的に装備されているので、基本的なスイッチャーとしても確固たる機能を果たしてくれます。
また、「ライブプロダクションスイッチャー」と称されているように、TriCasterはプロダクション編集をリアルタイムに行いつつ、完成品として映像制作を仕上げられるスイッチャーです。TriCasterでしかできない機能が多く、個人的にはライブ配信に欠かせない存在だと感じています。
TriCasterは本当に機能が豊富で、国内外を問わず活用方法も多種多様です。そのため、幅広いジャンルの配信・収録に対応できるのが特徴です。何度使用してもその魅力が増すTriCasterだからこそ、長く使い続けたいと思っています。

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PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。