日本でも現場で活躍するMagewell「Ultra Encode AIO」
2022年8月に発表、9月にアムステルダムのIBC2022でお披露目となったMagewell「Ultra Encode AIO」が、技術基準適合証明の取得を経て2023年4月末から日本でも発売がされている(AmazonのDPSJ Storeでの価格は税込142,000円)。参考:Magewell to Launch Advanced Live Encoder for Streaming and IP Workflows at IBC2022
参考:Magewell 社のストリーミングと IP ワークフロー向けライブエンコーダ「Ultra Encode AIO」の販売を開始しました
RTMPやHLS、SRT、NDI|HX2などのエンコードに対応したMagewellのライブエンコーダーには、HDMI入力ができる「Ultra Encode HDMI」とSDI入力ができる「Ultra Encode SDI」の2つの製品があるが、このUltra Encodeシリーズをベースに、機能強化を施されて登場したのが「Ultra Encode AIO」だ。
Ultra Encode AIOはHDMI(最大4096×2160 60fps 4:2:0; 4096×2160 30fps 4:4:4/4:2:2)とSDI(最大2048×1080 60fps 4:2:2)のどちらも入力することが可能となった。
HDMIとSDIで入力されたソースを「ピクチャー・イン・ピクチャー」や「サイド・バイ・サイド」でミックスして出力することもできるが、基本的には、HDMIまたはSDIのいずれか1つのソースを選択して出力することがほとんどとなるだろう。なお、最大8つのオーバーレイ(テキスト、画像、時計)を乗せることも可能だ。
Ultra Encode HDMI/SDIと同様、本体の背面にはHDMI、SDIそれぞれのLOOP THRU端子も備わっているので、Ultra Encode AIOへ入力したソースをモニターなど別の機器へ渡したいときなどに活用ができるだろう。
また、LINE IN/OUT端子で音声の入力と出力ができるほか、付属されるWi-Fiアンテナを接続するソケットや、RJ-45のギガビットイーサネットポート、4G/5GのUSBモデムなどを接続するためのUSB-A端子や設定用のUSB-C端子も備わっている。
一方、本体の前面にはUltra Encode AIOの特徴のひとつである「録画機能」を利用するときに使うSDカードスロットと、USB接続の外部ストレージを接続するUSB-A端子がある。
録画機能ではSDカードやUSB接続の外部ストレージのほかNAS(NFS、CIFS、SMB)も利用可能で、このうち最大2つまでを記録先として選択し、MP4/MOV フォーマットでファイル保存ができる。
そして、小さいながらも1.9インチのLCDタッチスクリーンが備わった。これによって、ストリーミングや録画、ネットワークの状況をスクリーンをタッチして切り替えながら確認できるのは便利だ。
特に、設定をするためにUltra Encode AIO本体内蔵のWEB UI管理画面へログインするとき、LCDタッチスクリーンを見れば本体へ割り当てられたIPアドレスを確認することができ、さらには、表示されるQRコードをスマートフォンのカメラアプリで読めば、スマートフォンのブラウザでも容易にアクセスすることもできる。
これによって、LanScanのような(LAN上のすべてのデバイスを自動検出して一覧表示する)ソフトウェアを使ってUltra Encode AIOのIPアドレスを調べたり、「コレのIPアドレスってなんだっけ?」と現場で考えることは無くなるだろう。
Ultra Encode AIOのWEB UI管理画面では、Ultra Encode HDMI/SDIと同じように「MAIN STREAM(メインストリーム)」と「SUB STREAM(サブストリーム)」と呼ばれる2つのエンコーダー設定を、メニューの「Encode」タブから行うことができる。
メインストリームには4096×2160 30fpsまで、サブストリームは1920×1080 60fpsまでの設定が可能。
さらに、メインストリームが16Mbps、サブストリームは2Mbpsが最大となっていたUltra Encode HDMI/SDIのビットレート設定に対し、Ultra Encode AIOではメインストリームとサブストリームともに32Mbpsまでのビットレートを段階的に選択できるようになった。
また、Ultra Encode AIOは最大8チャンネルのオーディオをAACフォーマットでエンコードすることが可能で、AUDIO STREAM項目ではHDMIやSDIにエンベデッドされたオーディオのチャンネルを割り当てることができる。
多言語の同時通訳音声を、配信先によって必要な言語の音声を割り当てたいといったシチュエーションのときに活用ができる設定だ。
RTMPやSRT、NDI|HX2、そしてNDI|HX3に対応
Ultra Encode AIOでは「YouTube」「Facebook」「Twitch」のライブ配信プラットフォームと、「RTMP(RTMPS)」「RTSP」「SRT(Caller/Listener)」「HLS」「TS over UDP」「TS over RTP」「TVU ISSP」のストリーミングプロトコル、そして、NDIは「NDI|HX2」に加えて「NDI|HX3」が新たに対応となった。
※ファームウェアバージョン2.2.98では「Wowza over RTMP」「Wowza orver SRT」も追加されている。
「Live」タブでDESTINATIONSの一覧のなかから有効化できる(=同時にストリーミングができる)配信先の数は最大で6つまで。
ただし「NDI|HX3」は他のストリーミングプロトコルとの同時併用はできない(=「NDI|HX3」を利用したいときは「NDI|HX3」だけを有効にする)ことと、「NDI|HX2」は最大2つ、「RTSP」「SRT Listener」「HLS」「TVU ISSP」は1つのみ有効化できることに注意が必要だろう。
なお、ストリーミングの開始や停止の処理は一括で行うことも、配信先個別にひとつずつ行うことも可能だ。
今回のレビューにあたり、動作の検証の際に用いたエンコーダー設定は、
- MAIN STREAM 「1920×1080/59.94fps/8Mbps」
- SUB STREAM 「640×360/59.94fps/1Mbps」
を「Encode」タブで選択し、フレームレートの値を変更した以外はデフォルトの設定値で検証。
「Live」タブのDESTINATIONS項目にはそれぞれ、
- RTMP(MAIN STREAM)
- RTMP(MAIN STREAM)
- RTMP(MAIN STREAM)
- HLS(MAIN STREAM)
- SRT Listener(MAIN STREAM)
- NDI|HX2(Program Stream項目で MAIN STREAM、Preview Stream項目で SUB STREAM を指定)
の合計6つの配信先を設定し、ストリーミングのテストをおおむね4時間30分行ってみたところ、問題なく良好に稼働していた。
この他、さまざまなストリーミングプロトコルを混ぜた状態での配信も試みたが、上記のような解像度・フレームレート・ビットレート設定ならば配信先を6つフルに設定・運用をしても大丈夫そうな印象を受ける。
ただ、今回、実機の動作テストにかけることができた時間は限られていたこと、そして、実際に現場で使用する人たちの設定はそれぞれで異なることから、現場へ持ち出す前にあらかじめ想定されるシチュエーションでのテストを十分に行っておく必要はあるだろう。
高い負荷のエンコーダー設定、配信先の数やストリーミングプロトコルの組み合わせによって、メモリー使用率が100%となってUltra Encode AIOの再起動がかかってしまわないよう、「Dashboard」タブのSTATUS項目でCPU使用率やメモリー使用率などを確認しつつ、バランスの良い適切な設定をしてあげたほうが良さそうだ。
なお、文中でも少し触れたが、検証を行っている期間中の2023年7月20日に、Ultra Encode AIOのファームウェアバージョンが2.1.35から2.2.98へアップデートされた。
前のバージョンでは起動直後のメモリー使用率が60%ほどとなり、メモリー使用率が若干高めに推移しがちなことは気になっていたのだが、最新の2.2.98では起動直後のメモリー使用率は40%ほどに低下し、メモリー使用の挙動が改善されたように感じる。
Ultra Encode AIOを手に入れたなら、ファームウェアのバージョンを確認し、もし最新でなければ、タイミングをみてアップデートをしてみたほうが良さそうだ。