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DJIから「Osmo Action 5 Pro」が発売となった。「次世代1/1.3インチセンサー」(最大4K60fpsのハイ ダイナミック&低照度撮像性の)、「4K/120fps 4:3&155°超広角レンズ」、「10-bit&D-Log M&HLG」、「360°HorizonSteady」、「色温度センサー」など多彩な機能が搭載され、革新的な高画質を誇る。

専用の「ダイビングアクセサリーキット」を使用し、水中での使用感をリポートする。

外観

今日、海で撮影をしていてもアクションカムを手にしているダイバーは非常に多い。メインで使用するミラーレス一眼の上に、アタッチメントやアダプターを介して接続し、メイン機で写真を撮りながら、アクションカムで動画を抑えるというスタイルが主流か。

もしくはBCという救命胴衣のような機材にカラビナなどを用いてぶら下げて、決定的瞬間が突然やってきたという時に撮影できるようなスタイルが良いのか。

人により好みやスタイルはさまざまではあるが、ただでさえ動きが不自由な水中では、カメラが小型であればあるほど扱いは楽であることは間違いない。このOsmoシリーズのアクションカムは、今回初めて手にしてみたのだが、非常に手に馴染みがよく、初めてのわりに違和感もなく、直感的に使用することができたのは非常に好印象だった。

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基本的な操作は二つのボタンによって完結する。本体左側のパワー/メニューと、上部右側のREC/シャッターボタンのみ。シンプルにもほどがある構造。外観がシンプルであるということは、操作ミスを減らすということにも直結する大切な要素であることは間違いない。

これは身体の動きもそうであるが、陸上に比べて思考領域も狭くなりやすい水中においては、最も重要な要素といえるのかもしれない。要はシンプルで使いやすいということを強く推したい。

高画質

155°の超広角レンズ、4K/60fpsのハイダイナミック&低照度撮像性能、10-bit&D-Log M&HLG搭載と、聞いているだけでワクワクしてくるような、ハイスペックなアクションカムに仕上がったということで、個人的にも今回のテストはとても楽しみにしていた。

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このような小型のカメラでも不具合なく高画質になってくれるのであれば、水中撮影の現場で、これほど心強いものはない。やはり陸上撮影に比べると、環境的にも画質的にも、かなり過酷な状況下に置かれているのは事実。その辺をカメラの性能でなんとかカバーしてくれるのであれば、言うことはない。

今回は限られた時間内でのフィールドテストになったため、Osmo Action 5 Proの全ての機能や要素を把握できた訳ではないのだが、誇張なき感想を綴ると「なかなかいい感じ」。

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確かにワイコンを付けていない状態でも、かなりの広角であることは間違いない。まず海中でも見たモニター上の画角は、使用前に想像していたよりも十分に広いものだったが、四隅に出るディストーションは結構気になってしまったのは否めない。

カメラの構造上、仕方のないことなのかもしれないが、専用の水中ワイドコンバージョンレンズをオプションで作るのか? それともカメラ自体の精度を高めていくのか? 今後どれだけ緩和されていくのか、とても楽しみではある。

しかし、このコンパクトなボディの中に1/1.3インチセンサーを搭載したというだけあって、画質という点では現状でも全く問題はない。僕らのようなプロの現場でもサブ機としては十分に成り立つし、スノーケリングや水面下での撮影は、その機動力も相まってメイン機となり得るシチュエーションもあるのかもしれない。

水中撮影においてのオートホワイトバランスは、これまでの他社製品なども含め、特に浅場の逆光下などはかなり赤味が不自然なほど強く出過ぎる傾向を感じていた。だが、このOsmo Action 5 Proのオートホワイトバランスは極めて優秀で、違和感を覚えるような赤味を感じることはなかった。

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これが外部ライトを使用するとどうなってくるのか、また検証は必要ではあるが、浅場の自然光下で使用する分には、非常にナチュラルで見た目に近い映像を撮ることができていたと思う。

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また今回は撮りっぱなし、所謂撮って出しの映像でも十分と思えるほどのクオリティーで撮影することができると分かった。さらに10-bit&D-Log M&HLGで撮影できるということはソフトウェア上でLUTを当てこんだり、精密でスピーディーなカラーコレクションにも対応できると考えると、このOsmo Action 5 Proが持つ可能性は途方もないほど広がってくるのかと思う。

専用水中ケース

Osmo Action 5 Proには専用の水中防水ケースが用意されている。中身の本体のままの状態でも水深20mまで潜っていくことが可能ということだが、ダイビング中の流れでは、もしかして20mを超えるダイビングもあるのかもしれない。

そこを考えると、防水ケースにあらかじめ入れ込んで海に入ったほうが安心感は何倍にも増すだろう。防水ケースと、専用グリップのマッチングは比較的よく、極端に浮きも沈みもしない、ややプラス浮力が保たれた状態。個人的にはもう少しマイナス浮力であっても良いかと思ったが、これは重めのカラビナなどを付けたりすることによって、随時調整することができるだろう。

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とにかく、多くの人がこのアクションカムに期待することは、高画質であり機動力抜群であるということだと思う。専用のグリップも握り心地がすこぶる良いので、カメラの固定という面だけでなく、ストラップで手首に止められ、紛失する可能性がなくなるという安心感と、撮影自体がストレスにならないという点は、特に撮影に慣れていないビギナーのダイバーや、シュノーケラーにも非常に大きなメリットなのではないだろうか。

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まとめ

カメラボディは小さいまま、革新的な高画質を実現させたOsmo Action 5 Pro。高次元のカメラスペックもさることながら、今回のフィールドテストでも感じたのだが、バッテリー持続時間もかなり長いと感じた。

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特に水中撮影の場合、潜水中はバッテリーを交換することができないので、バッテリーマネジメントにかなり気を遣うのだが、今回は4K60fpsで撮影していても、十分に一日は持つほどの持続力だった。これは水中撮影に関してはかなりメリットが大きいと言うことができる。

モニターの照度も調整することによって、さらに駆動時間を眺めることもできるようだ。コンパクトでありながら高画質のアクションカム。 これから、まずは気軽に水中撮影を始めてみたいという方にも、うってつけのカメラであり、我々のようなプロフェッショナルの現場にも、一台あると何かと助かるカメラなのかもしれない。

Osmo Action 5 Pro。これから要注目のカメラになることは間違いない。

古見きゅう|プロフィール
1978年生まれ、東京都出身。和歌山県串本町でダイビングガイドとして活動後、写真家として独立。海の美しい風景や生き物、環境問題をテーマにした水中ドキュメンタリー作品を発表している。2016年に撮影プロダクションAnd Nine株式会社を設立。近年は8K水中映像作品の制作に注力。著書に「The Coral Triangle」など。企業やメディア向けの映像提供も多数手掛ける。 2024年より漫画誌ビッグコミックにて連載コラム「海の聲をきく」を毎号掲載中。