必要な表示機能はすべて搭載。使いやすいユーザーインターフェースと美しい発色が魅力
OSEEはコンパクトなビデオスイッチャー「GoStream Deck Pro」やフィールドモニター、スタジオモニターなど映像機器のメーカーだ。高機能・高品質でありながら、メーカー直販に近い流通で、非常に安い価格で販売されているのが特徴だ。
今回紹介するのは、カメラの上に取り付けるオンカメラ・モニターシリーズだ。HDMI入出力の5.5インチの「Lilmon」(画面タッチタイプ 4K入力HDMI 1000nits)、同じく5.5インチの「T5+」(十字キー操作 4K入力HDMI 1000nits)、7インチの「G7」(十字キー操作 4K入力HDMI&SDI 3000nits)、7インチの「T7」(十字キー操作 4K入力HDMI 3000nits)である。カッコ内のスペックからもわかるように、5.5インチは操作方法が違う2種類で、通常のロケ撮影に適した製品だ。
一方の7インチは3000nitsと非常に高スペックのモニターパネルを採用した、マスターモニター級のフィールドモニターだと言える。
全ての製品に共通するのは、高輝度(5.5インチは1000nits、7インチは3000nits)で広視野角、HDRとユーザーLUTに対応。波形モニター、ベクトルスコープ、ヒストグラム、ピーキング(10段階のレベル調整)、フォーカスアシスト(10段階)。
D65の標準発色と、アナモルフィックレンズのデスクイーズ、シネスコなどのマーカー表示と表示クロップ(半透明のレターボックス)、ゼブラ表示、フォールスカラー表示、ソニーNP-Fバッテリー対応、D-TAPなどからのDC電源入力(6.2~16.8V)などというように、プロが要求する機能はほぼ全て搭載されていると言っていいだろう。
5.5インチのLilmonは、スタジオモニター級の機能を搭載した、タッチパネル方式モニター
5.5インチのLilmonは、操作を画面タッチで行うタイプだ。HDRやLUTなどを内部22bit処理で正確かつ精細に表示できる。今回紹介するモニターの中では唯一、ユーザーによるキャリブレーションにも対応している。キャリブレーションはATOMOS社の「Ninja V」と同等で、X-RiteプローブとOSEE専用のキャリブレーション ソフトウェアによって、正確な表示が可能になる。これは、同社の17インチのマスターモニターと同じである。
カメラへの取り付けは付属しているアームか、標準の三脚ネジでの取り付けと柔軟性が高い。
用途としては、正確な色表現が必要とされるCMや企業VPが想定される。また、消費電力は8.1Wとかなり省電力だ。ちなみにNinja Vは18.5W程度なので、同じバッテリーで2倍は動作してくれる。
メーカーサイトでは189ドル。残念ながらこの製品にはフードが同梱されておらず、サードパーティ製を買うしかない。また、サードパーティーから金属ケージも販売されており、このモニターの人気の高さがわかる。
5.5インチT5+は低価格、省電力のドキュメンタリーなどの長時間ロケ向き
T5+は十字キー操作の高画質5.5インチモニターだ。アマゾンで15,000〜17,000円程度と、びっくりするくらいリーズナブルだ。しかし、発色や明るさはプロ用モニターそのものである。もちろん、波形表示やデスクイーズ、フォーカスアシストなどの機能は全て搭載されている。この価格にもかかわらず、1000nitsも輝度があるのは驚きとしか言いようがない。
さらに、このモニターは、映画の現場でかなり流行っていると言うか、照明部や録音部が自分専用のモニターとして持参することも増えているのだ。この価格でプロ用のマスターモニターに劣らない性能があり、しかも、消費電力は5.5Wしかなく、ソニーのLバッテリーなら12時間近く動作し続ける。つまり、1日のロケがバッテリー1本でOKなのだ。しかも、175gと携帯電話ほどの重さだ。
この製品にはチルトアームとフードも同梱されており、まさに、これ1台だけでほとんどのロケ現場に対応できると言える。
7インチモニターは3000nitsの高輝度、1200:1の高コントラスト。映画制作にはもってこいのモニターだ
7インチはG7とT7の2つがあるが、違いはSDI入出力の有無だけだ。どちらも十字キーによるメニュー操作になる。
特徴はなんと言っても3000nits & 1200:1の高画質パネルだ。実際に映画撮影の現場で使っているのだが、晴天の中でも非常に見やすい。単に見やすいだけでなく、露出やピントが周囲の明るさで誤魔化されない。人間の目は周囲の明るさによって見え方が違ってしまう。それゆえ、明る場所ではハイライトが正確に把握しにくくなる。この場合は3000nitsの高輝度が非常に正確な露出判断をもたらしてくれる。
もちろん、より正確に露出を見るのであれば波形モニターやフォールスカラーを使うべきだが、忙しい現場ではモニターの映像を見て判断することが増えるわけだから、このモニターのように輝度が広いことは失敗を回避する上で重要だ。
一方、暗い場所ではシャドー部が見えすぎる。この場合、パネルのコントラスト比が重要になる。黒がより黒くみえることが望ましく、このパネルの1200:1は、他の標準的なパネルのコントラスト比を大きく上回っている。
さらに、パネルサイズが7インチの利点も大きい。まず、ピントだが、パネルが大きいほど、より正確なピント合わせが可能になる。実際のパネル解像度は1920×1200のFHDで5.5インチモニターと同等だが、画素ピッチが大きい分だけ視認性が高い。つまり、人間の視力が上がったのと同じ効果がある。また、筆者のように老眼が進んでいると、やはり大きなモニターの方が良いのは共感いただけると思う。
視認性の良さと高輝度により、映画のようによりMFによるフォーカスが必要となる場合、正確なピント合わせが求められるわけで、そのような意味でも7インチはありがたい。7インチモニターとしては500gを切っているのもありがたい。
全製品共通、カスタム可能なメニューが現場の作業効率を高めてくれる
全製品に共通して、独自のオペレーションシステム(ユーザーインターフェース)が採用されており、これが非常に使いやすい。
十字キータイプで解説すると、十字キーを押すとメニューが表示される。このメニューはユーザーが自由にカスタム可能で、例えば波形表示のオンオフやタイプ変更、ベクトルスコープの表示やタイプ変更、フォーカスアシスト表示など、何を表示するか、その順番をどうするかなどをカスタムすることが可能だ。
そして、このカスタムメニューはG7、T7、T5+では5個、Lilmonは8つ記憶できる。通常位表示で十字キーを左右に動かすと、このカスタムメニューが切り替わる。ちょっとわかりにくいと思うが、バンク1では、フォーカスアシストをオン、波形モニターをオン、80%ゼブラをオン。バンク2では非常に弱いピーキングだけオン。
というように、十字キーを左右に動かすことで、何を表示するかを瞬時に切り替えられる。通常のモニターであれば、それぞれの機能を個別にオンオフすることになるが、OSEEのモニターでは、左右にキーを動かすだけで、自分が使いたい機能表示が簡単に切り替えられるわけだ。
さらに、メニューがオフの場合には、上へ押すと拡大表示モードに入り倍率や拡大位置の変更ができる。つまり、メニューを開くことなく、カスタマイズされた機能表示が簡単に呼び出せるのだ。
ちなみに、デスクイーズや画質調整などの詳細設定は、十字キーを左へ長押しすることで呼び出せる。
映画のような長時間のロケの場合、バッテリー残量がいつも悩みの種になっている。そのストレスを解消してくれると言う意味ではT5+は画期的なモニターだ。カメラマンとしても、露出やピントで失敗することなく撮影ができるだけの性能も備えているし、軽いのもありがたい。
一方、ディレクター用のモニターとしてはG7かT7がいい。もちろん、17インチ以上のマスターモニターを使うべきなのだが、グレーディングすることが前提の映画制作の場合には、現場である程度の画質やピントの確認が可能であれば十分とも言えるし、波形モニターなどの測定器も搭載されているので、3000nitsの7インチがあれば、輝度が低い17インチ以上の仕事をしてくれると筆者は思うし、実際に今撮影している映画でも、G7は非常に便利である。
G7は、専用のペリカンケースタイプのハードケースが付属し、フード、AC電源アダプター、自在クランプ、モニタークランプ、Vバッテリープレートまで同梱されている。価格はアマゾンで5万円台だが、マスターモニターに匹敵する性能と付属品が付いてこの価格なのだから、驚きである。
筆者のおすすめとしては、通常のロケモニターにはT5+、正確な色を求めるならLilmon、映画用にはG7をお勧めしたい。