
年々カメラ性能が劇的に進化していくスマートフォン業界。中でも筆者がPRONEWSでメンションをさせていただいている「Apple Log」は業界のブレイクスルーでした。Apple LogはiPhone 15 Proシリーズ、iPhone 16 Proシリーズで撮影・収録が出来るLogです。iPhoneで気軽に収録可能なだけではなく、iPhoneのセンサーに最適化されているのでLogとしての性能も非常に高いです。
筆者がApple Logで撮影した映像のリール
そんな中、新型の「Galaxy S25 Ultra」がSamsungから発表されましたが、なんとそれと同時に「Samsung Log」も発表。iPhoneだけであったLog撮影がGalaxyでも可能になりました。もはやスマートフォンでのLog撮影が普通になりつつあります。今回はS25 Ultraをお借りして、iPhone 16 Pro MaxとApple Logの性能との比較を行っていきたいと思います。

Galaxy S25 Ultra、何が進化した?

先代のGalaxy S24 Ultraと比較すると、プロセッサがQualcommのSnapdragon 8 Gen 3 for GalaxyからGalaxy S25 UltraはSnapdragon 8 Elite for Galaxyに変更になっています。肝心のカメラは、超広角カメラの画素数が約1200万画素から約5000万画素にアップデート。メインの約2億画素の広角カメラ、約5000万画素の5倍、約1000万画素の3倍の望遠カメラ、そしてインカメラの約1200万画素のアップデートはありません。

メモリは12GB、ストレージは256GB、512GB、そして1TBから選択できます。iPhone 16 Pro MaxとS25 Ultraの筐体を比較すると、サイズはほぼ一緒と言ったところでしょう。

本体の厚みもほぼ同じです。ただ重量が若干iPhone 16 Pro Maxの方が重いです。

Galaxy S24 UltraとiPhone 15 Pro Maxが最新だった去年では、ハードウェアの進化を目指すGalaxyと、自社のソフトウェアを自社のハードウェアに最適化するというAppleならではの進化というそれぞれの方向性の違いが出ていましたが、今回はGalaxyも独自のLogを持つことによって、iPhoneとGalaxyの方向性に似たところも出てきました。
Samsung Log
スマートフォンによるLog撮影はApple Logの登場以前からサードパーティーのアプリなどで不可能ではありませんでしたが、自社オリジナルのスマートフォン用Log撮影はApple Logがブレイクスルーでした。これに続きSamsungもSamsung Logを発表したというわけです。Galaxy純正のプロモードカメラアプリにも、画面左上にLog撮影のオン/オフが可能なボタンが出現しました。

Apple Logと比較してみた
前置きが長くなりましたが、iPhoneのApple LogとGalaxyのSamsung Logを比較してみました。iPhone 16 Pro Maxの使用アプリは、以前PRONEWSでもレビューさせていただいたFinal Cut Camera。このアプリはAppleからリリースされている無料のカメラ撮影アプリで、シャッタースピードやISOなどの細かい設定がiPhone上で可能なだけではなく、iPad用Final Cut Proと連動させればiPhoneをマルチカムとしても使用できるアプリ。

一方のGalaxy S25 Ultraは純正のカメラアプリで、詳細な設定が可能なプロモードを使用して撮影しました。それぞれApple Log、Samsung Logで撮影し、Apple、Samsung公式からそれぞれリリースされているLUTを適用してカラーコレクションをしています。
iPhone 16 Pro Maxから

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続いてGalaxy S25 Ultra

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どちらのスマートフォンでも撮影時の色温度は固定で、コーデックはHEVCで統一して撮影しました。iPhone 16 Pro Maxによって撮影された映像は物体のエッジが目で見たものと同じように自然である一方、S25 Ultraの映像は物体のエッジがシャープになっているように見えます。

右:Galaxy S25 Ultra
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この比較を踏まえた上でApple Log、Samsung Logを表にまとめるとこのような形になりました。
項目 | Apple Log | Samsung Log |
ターゲット機器 | iPhone | Galaxy デバイス |
目的 | キャプチャデータの忠実な保存、ポスプロ向け | ダイナミックレンジ最大化、カラー編集柔軟性 |
トランスファー関数 | 対数+パラボラ(負信号保持特化) | S字カーブ(暗部階調保持特化) |
カラースペース | BT.2020-2, D65, 独自 RGB座標 | BT.2020-2, D65, 他色空間比較図示 |
エンコード/デコード | 浮動小数点対数関数、逆数は指数関数 | 2つの対数関数、逆数は指数関数 |
ポスプロ対応 | 専門的なグレーディング向け | Galaxy端末でのRec.709補正ガイド |
実用例の有無 | なし | 3D LUT適用、端末内編集ガイド |
つまり、Apple LogとSamsung Logでは大きな違いは無いものの、Apple Logはポストプロダクションにてグレーディングが前提のものに対し、Samsung Logはスマートフォン内でのLog撮影の映像へのLUT適用を前提としているようです。

上の画像のように、S25 Ultraではカメラアプリ内でLogの映像をRec.709に変更することが可能です。
また、Apple Logはミニマルなプロセスで映像収録するのに対し、Samsung Logはダイナミックレンジを最大化するのが目的とのこと。S25 Ultraの映像内の物体のエッジがシャープだったのもこれで合点がいきます。同じLog撮影だからと言って、各社の方向性は必ずしも同じではないということがよく分かります。
さらに分析してみた
続いて暗所性能を比較して、2つのLog撮影の比較をさらにしてみたいと思います。

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どちらの映像にもあまり違いはないように見えますが、iPhone 16 Pro Maxの撮影による映像はノイズが少なく、S25 Ultraの撮影による映像は逆に暗部のディティールを保てているように見えました。さらに言うと、日中の撮影はS25 Ultraによる撮影の映像の方が高輝度域のハイライト保持が得意ということでしょう。
Galaxy S25 UltraとiPhone 16 Pro Maxの比較、いかがでしたでしょうか?iPhoneだけではなく、Galaxyからも登場したLog撮影。近い将来、カメラはスマートフォンに取って代わられるのか。iPhoneographerの筆者がしばらくその行方を追ってみたいとさらに思えるようなレポートでした。
takumifone(山﨑拓実)|プロフィール
iPhoneographer 、ビデオグラファー、ライター、ディレクター、エディター(日本語・英語両対応)。企業のプロモーション映像やミュージックビデオなどをiPhoneで撮影し、iPhoneで撮影したようには見えない映像を制作することが主なお仕事。他にも、iPhoneでいかにシネマカメラのような映像を撮影するかのセッティングに関するセミナーや記事執筆なども行なっている。
Webサイト●takumifone.com Instagram / X●@takumifone
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