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txt:宏哉 構成:編集部

音響機器メーカーのAZDENから、新しいマイクが発表された。

超高音質を謳った、モノラルとステレオをバランス良くミックスして、超指向性の——ではない。いわば、何の変哲もない「鼻マイク」である。

「AZDEN SGM-PX」
特徴がないのが特徴な(賞賛)、普通の鼻マイクである。

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音に味付けをせず、しかし様々な環境下で確実に音を捉え続け、ただ愚直に音声収録現場に安定と安心をもたらすことを主眼とした、単一指向性ショットガンマイクロホンとなる。

結論。
とりあえず鼻マイクが必要で、とりあえず普通に音が録れてたらいい——というのなら、このSGM-PXは安心して導入してほしい。

では、この特徴のないSGM-PXを紹介していこう(なんて難しい製品のレビュー担当をさせるんだ!)。

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AZDENのロゴもなく主張の少ないデザイン

SGM-PX

SGM-PX は、いわゆる「鼻マイク」である。鼻マイクに関しては、前回のレビューを参考にしていただきたい。

まずはざっくりとSGM-PXの仕様を見ていこう。

  • 単一指向性ショットガンマイクロホン
  • バックエレクトレットコンデンサー型式
  • 周波数特性:20 – 20,000Hz
  • ダイナミックレンジ:112dB
  • 最大入力音圧レベル:130dB SPL. (1kHz at 3% T.H.D)
  • S/N比:76dB (1kHz at 1Pa)
  • 本体寸法:直径21mm×長さ140mm
  • ケーブル長:360mm(コネクタ含む)
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本体全長140mmとショートボディー

SGM-PXの指向特性は「単一指向性」となっている。
前方に広く指向性を持っており、カメラのレンズが向いている方向の音を捉えながら、周囲の環境音を抑制する。

前回紹介したAZDEN SGM-250シリーズは「超指向性」であり、前方に強く指向性を持っている仕様だったが、SGM-PXではもう少し広く前方の音声を捉える作りになっている。

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超指向性特有のスリットがないため、比較的広い指向性を持つことがわかる

ある程度のグループショットインタビューなどで、レンズが向いていない方向の人物が発言しても、自然と拾ってくれる印象だ。

周波数特性やS/N比といった数値は、実はAZDEN SGM-250シリーズとほとんど差がない。
SGM-PXの系譜と思われるSGM-PDIIは、周波数特性が80-18,000HzとSGM-PXよりも狭い。またS/N比においてもSGM-PDIIが70dBに対して、SGM-PXが76dBと向上しており、簡単に言えばノイズレベルが半分ほどになっていると言える。

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上:SGM-PDII/下:SGM-PX

SGM-PXでは新設計のECMユニットを採用し、マイク性能が一気に向上。SGM-250シリーズにも採用されている特殊フィルム素材を振動膜に使用し、高温多湿な環境でも安定した動作を実現するとしている。

マイクの心臓部にあたるユニットが、実績のあるSGM-250シリーズに由来する物であれば、耐久性や性能なども期待できる。

その他の特徴としては、携帯電話やデジタル機器などの外来電波の影響を大幅に低減する回路を採用。昨今、ユーザーが多い 2.4GHz系のワイヤレスマイクとの併用などでも効果を発揮することを期待したい。

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上:SGM-250/中:SGM-250CX/下:SGM-PX

使用感

さて、実際の使用感だ。先ほど、SGM-PXの音響特性はSGM-250シリーズとほとんど差がないと記した。
また、新設計ECMユニットの振動膜もSGM-250シリーズで採用されている特殊フィルム素材を使っているとした。では、この両者は同じような音質で収録しているのだろうか?

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実際に聞き比べてみると、両者には明確な違いがあった。

SGM-PXはSGM-250に対して、低音が薄く、人の声が明瞭に聞こえる。高音部も適度に抑えられている感じだ。
人の声を基準に考えると、全体的にはスッキリとした印象だ。カリカリシャリシャリはしていないが、少しだけ声にエッジを感じる立ち方をしている。

一方で、SGM-250は全体的に厚みのある音の印象で、人の声を基準に考えると、例えば部屋の空調やパソコンのファンノイズなどをしっかりと感じる。原音再現性という点ではSGM-250の方がより近く思える。
ただし、SGM-250の超指向性に対して、SGM-PXは単一指向性のため、収録環境によってはSGM-PXの方が環境ノイズをより拾いやすい条件も考えられる。
指向性の違いで入ってくる音の範囲と、チューニングの差で聞こえやすい/聞こえにくい音の差があることは、理解していた方が良いだろう。

総じて「鼻マイク」の最も多い用途は、インタビューなど"人の声"を収音することだ。
それを考えると、SGM-PXのチューニングは使い易いユーザーが多いのではないだろうか?
極端な味付けがされているわけではなく、あくまでもマイクの個性といったぐらいには、中庸に押さえられており、幅広い用途で使えることには変わりはないと思う。

スペクトル表示で比較してみると、SGM-PXは低音域が抑えられており、声の帯域が全体的に上がっている。一方、SGM-250は低音がしっかり出ており、特徴の差がはっきりと見てとれる。

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まとめ

SGM-PX。すごく普通の「鼻マイク」であった。

しかし、上位機種ゆずりの性能がしっかりと盛り込まれており、音質面や堅牢性の点でも安心して使えるマイクに仕上がっている。
人気のL字コネクタを採用することもなく、パッケージも質素なダンボール製。付属品も最小限で、スポンジ風防とマイクスペーサーだけが用意されている。
そうしたメーカーのコストダウンの努力もあって、SGM-PXは定価14,960円(税込)と安価に押さえられ、手に取りやすい「鼻マイク」となっている。

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ダンボールの無印刷パッケージにスポンジ風防とマイクスペーサーと付属品も最小限

昨今は、ハンドヘルドビデオカメラ——デジにも鼻マイクが付属しない。以前なら、性能の優劣はともかく、デジに付属する鼻マイクがデファクトスタンダートとも言える地位にあった。

しかし、鼻マイクが標準付属しなくなった現在は、ユーザーはカメラ購入時に鼻マイクを自らチョイスする必要がある。
今や鼻マイクは、高音質を謳った物から安価な製品まで幅広く揃っており、用途や撮影スタイルに合わせて選択可能だ。

一方で、マイクの評価は難しく、何を選んだら良いのか分からない。「鼻マイク」にあまりお金は掛けたくない…という思いの方もいるだろう。

その場合は、AZDEN SGM-PXは安心な性能感、そして使い易い音質を安価に提供してくれるマイクと言える。
ファーストチョイスの鼻マイクとしてはピッタリであると思うし、令和時代の標準鼻マイクとしての十分な実力を持っているショットガンマイクロホンであると思う。

WRITER PROFILE

宏哉

宏哉

のべ100ヶ国の海外ロケを担当。テレビのスポーツ中継から、イベントのネット配信、ドローン空撮など幅広い分野で映像と戯れる。