ローランドは、小型ビデオスイッチャーのロングセラー「V-1シリーズ」の新モデル「V-1-4K」を2026年4月9日に発表した。同シリーズで初めての4K対応機種となる。発売日は 2026年6月25日、価格はオープンプライス。
近年、カメラやPC、ディスプレイなどで4K対応が進む一方で、4K対応のスイッチャーは大型で高額な製品が多く、小規模イベントやライブ配信、企業セミナーなどで手軽に使える製品がなかった。そんな状況を打ち破ってくれそうな可能性を感じる新製品だが、今回PRONEWSでは発表前にレビューの機会を得られた。早速、V-1-4Kを詳しく見ていこう。
コンパクトな本体、信頼性の高い操作パネル
V-1-4K本体の横幅は330mmとなっており、既存機種のV-1HDの313mmからほとんど変わらない。奥行と高さが伸びているため、全体としてはV-1HDから一回り大きくなった印象ではあるが、十分に「コンパクト」なサイズ感となっている。
操作パネルは既存機種のV-1HDに比べ傾斜がついており、視認性の高い照光式のボタンとV-1シリーズではおなじみの小型のTバーにより、ライブスイッチャーとして安心して操作が行えるレイアウトとなっている。ボタンは押した感覚がしっかりわかるので、ミスオペレーションなく操作ができそうだ。
柔軟性の高い入出力仕様
映像の入出力はHDMI入力×5、HDMI出力×5となっている。すべての入力にはスケーラーが搭載されており、4K・HDの解像度と最大60pまでのフレームレートの混在が可能となっている。
このスイッチャーを使用する現場では、入力としてカメラは4K/30pでパソコンはHD/60pといった組み合わせがよくありそうだが、前段にコンバーターを用意しなくてもそのまま入力できるのはローランドならではの安心感がある。
5系統あるHDMI出力はOUT1がPGM、OUT2がPVW、OUT5がマルチビューと出力できる映像が固定となっているが、OUT3と4はPGM、PVW、クロスポイント1~8の映像を選択して出力できる。
クロスポイントに立ち上がっている映像をダイレクトに出力できるので、特定のカメラの映像をバックアップ収録するためにレコーダーに接続したり、パソコンの画面を返しモニターに表示したりといった際に、V-1-4Kの手前に分配機やマトリックススイッチャーを用意することなく信号をルーティングできるのはとても便利だ。またOUT3・4にはダウンコンバート機能が搭載されており、4Kの映像をHDに変換して出力可能。
入出力ともに柔軟性が高く、小規模なイベント、セミナーなどの現場であればV-1-4Kだけでシステム内のかなりの部分をカバーできそうだ。
UVC対応USBストリーミング端子を搭載
既存のV-1シリーズには搭載されていない、USBストリーミング出力が搭載されており、こちらも4K/60pに対応している。UVC対応のためパソコンへのドライバーのインストールは不要で、パソコンからはWebカメラと同等のデバイスとして認識されるため、OBS、Zoom、Teamsなど一般的な配信、Web会議用のアプリへの映像入力用に利用できる。
また、USBストリーミング用に個別にスケーラーが搭載されているので、HDMI出力は4K、USBストリーミング出力はHDといった運用が可能だ。なお、USBストリーミング出力にはHDMI OUT4と同じ映像が出力される仕様となっているため、システムを検討する際には注意しておきたい。
現場の省力化に貢献するROI(Region of Interest)専用モード
V-1-4Kで最も特徴的な機能と言えるのがROI専用モードである。ROIとは4Kカメラ1台からHD解像度で映像を切り出し、まるでカメラが何台もあるかのような疑似的なマルチカメラ演出を実現する機能である。これまでのローランドの4K対応スイッチャーやコンバーターでもROIは可能ではあったのだが、今回のV-1-4Kでは専用モードが搭載され、より使いやすくなっている。
V-1-4KではHDMI IN1に入力された映像から最大4つのショットの映像を切り出しできるのだが、マルチビューにROIモード専用のレイアウトが用意され、元の映像からどのエリアを切り出しているのか、マルチビュー上で一目瞭然で確認できるようになっている。また、PGM/PSTの状態が赤と緑のタリーの枠でマルチビュー上に表示されるため、非常に直感的なオペレーションができる。
ROIを現場で使用する時に、リハーサルで切り出し範囲を合わせていても、本番で演者が動いてしまって微調整が必要といったケースが多々ある。その際に、iPadアプリのV-1-4K Remoteを利用するとiPadのタッチパネル上でROIの切り出し範囲を指先で簡単に調整できる。リモートカメラをコントロールしているような感覚で、ほとんど遅延も感じずにスムーズに操作ができるので、V-1-4KのROI機能を使用する際にはiPadアプリの併用をおすすめしたい。
コンパクトなビデオスイッチャー1台にROIに必要な機能が使いやすくまとめられており、特にセミナーやインタビューの収録・配信の現場では、なにしろカメラが1台で済むので、機材の設営や調整の時間を大幅に短縮できるだろう。V-1-4Kの登場によって業界にROIのワークフローが一気に浸透しそうな期待を感じさせる機能である。
電子楽器メーカーならではの高機能オーディオミキサー
V-1-4Kには電子楽器メーカーであるローランドならではの高機能なデジタルオーディオミキサーが搭載されている。入力は14チャンネルで、内訳はHDMI入力ステレオ5系統、XLRステレオ入力1系統(ラインレベル)、USBステレオ入力1系統となっている。映像と音声のタイミングを揃えるためのディレイや、ノイズゲート、イコライザー、コンプレッサーなどの豊富なエフェクトも備えている。
また、出力バスが4系統あり、MAIN、AUX1、AUX2、MONITORという構成になっている。リアル会場とライブ配信のハイブリッド運用を行う場合に、音声の取り回しが複雑になり苦労した経験がある方も多いと思うが、V-1-4KにはAUXが2系統あるので、会場と配信で個別にマイナスワンを作って出力するといった、音声のルーティングに対応できる。このサイズのビデオスイッチャーに内蔵されているオーディオミキサーとしては、十分すぎる仕様と言えるだろう。
使いやすい画面合成機能
ビデオスイッチャーでは欠かせない、画面合成機能もV-1-4Kには搭載されており、DSK、PinP&KEY、SPLITを用いて最大3レイヤーの合成が可能だ。上位機種と比べてレイヤー数は少なくなっているが、例えばプレゼンテーションの現場で、講演者を映したカメラ映像の上にパソコンの画像をPinPで重ね、企業のロゴをDSKで乗せるなど、シンプルな絵作りであれば十分に対応できるだろう。
PTZカメラリモートコントロール、アサイナブルパッド
V-80HDなどの上位機種で搭載されている機能の一部がV-1-4Kにも搭載されている。
まず、LAN端子が搭載されPTZカメラのリモート・コントロールに対応。スイッチングハブ経由で最大5台のカメラに対して、パン、チルト、ズーム、プリセット呼出しなどの操作をV-1-4Kから行える。ローランドのカメラ・コントロール機能はカメラのメーカーが混在していても、1台のスイッチャーから複数のカメラを操作できるのがユニークなポイントである。
そして、操作パネルに8個のアサイナブルパッドを搭載。A~Dまでの4つのバンクを切り替えることで32種類のよく使う機能をショートカットとして登録できる。8個のボタンにオーディオのミュート、HDMI OUT3・4に割り当てる映像の選択、PTZカメラのプリセット呼出しなど、使いたい機能を自由に並べることができる、非常に便利な機能だ。
さまざまなアプリケーションに対応
ローランドは最近、スイッチャーと合わせて使用するアプリケーションに力を入れているが、V-1-4Kはそれらにもフル対応となっている。
まず、テロップやグラフィックの合成を行うGraphics Presenterに対応。インストールしたパソコンとV-1-4KのHDMI IN5をHDMIケーブル1本で接続するだけで、アルファチャンネルを含んだ高品質な合成を行えるソフトだ。V-1-4Kの発表に合わせてVer. 3.0が公開され、4Kでの合成にも対応となった。
また、リモート・コントロール用のアプリは選択肢が多い。昨年リリースされたカスタマイズ対応のアプリVenuSetに対応。操作に必要なボタンとフェーダーだけが並んだ操作画面を簡単に作ることができるので、イベントなどでクライアントが機材の操作に慣れていなくても、VenuSetから安心して操作してもらえる。
加えて、V-1-4Kのほとんどの機能を操作できるiPad用のV-1-4K Remote、Windows、Mac用のV-1-4K RCSがそれぞれ用意されている。詳細な設定を行う時にはアプリも合わせて使用すると作業の効率化が図れるだろう。
配信エンジニア サカイアキヒロ氏による製品レビュー動画を公開
PRONEWS YouTubeチャンネルでは配信エンジニア サカイアキヒロ氏とローランド株式会社のビデオ製品プロモーション担当 伊藤美幸氏による現場目線のレビュー動画を公開中。パート1がV-1-4Kのスペックと主な機能の紹介、パート2がROI専用モードのデモを中心とした内容になっている。この記事を読んでV-1-4Kが気になった方は、ぜひ動画をご覧いただきたい。
動画パート1
動画パート2