キットズームの「RF24-105mm F4-7.1 IS STM」を装着したところ。かなりコンパクト
2026年9月にCanon EOS R8 Mark IIが発表されました(発売は10月29日予定)。
R8 Mark IIはキヤノンのRFミラーレスの中でも軽量、コンパクトさに比重を置いた、カジュアルな普及機のポジションとしてベストセラーとなった「R8」の後継機です。
約2420万画素フルサイズCMOSとDIGIC X、6Kオーバーサンプリングによる4K60Pという基本性能を引き継ぎながら、ボディー内手ブレ補正やマルチコントローラーを追加。バッテリーとカード込み約546gに収めています。
私は普段シネマトグラファーとして、動画撮影におけるカメラや機材についてレビューさせていただくことが多いのですが、今回はこちらのR8 Mark IIで「動画を撮る」という視点でのレビューをしてみたいと思います。見えてきたのは上位機にはない「カジュアルに撮影できる気軽さ」でした。
基本スペックと先代R8からの変化
スペックについて見てみましょう。ただし、今回は動画にのみフォーカスしてみます。動画はクロップなしの4K60Pに対応し、XF-HEVC S/XF-AVC Sで4:2:2 10bit記録が可能。Canon Log 3を含むカスタムピクチャーも使え、フルHD限定ですが最大179.8fpsのハイスピード記録にまで対応します。
4Kと言っても17:9の「C4K」ではなく、3840×2160ピクセルの「4K UHD」限定となります。あまり選択肢が多いよりはシンプルで良いんじゃないかと思います。
可変撮影は通常の動画撮影メニューからも選択することができますが、上部ダイヤルの「S&F」からも選択可能。この時ユニークなのは同じ設定からスローモーションのほか、最大59.94倍の「ファスト撮影」も可能という点。タイムラプス動画のような早送りの表現が可能となります。ただしS&Fモード選択時は音声は記録されないようです。
またプロ向けではない機能として簡単に映画のようなアスペクト比(シネスコ)、フレームレートで撮影できる「シネマビュー」や、カット終わりにフォーカスをジワリとぼかしていく「フォーカスアウト」機能なども搭載。今回あまりきちんと検証できませんでしたが、使い方によっては面白そうです。
Logに関してもCanon Log 3に対応しており、DaVinci Resolveでのグレーディングももちろん可能。軽く触ってみた感触は非常にスタンダードな発色で「キヤノンの色」という印象(Canon Log 3ですから当然ですが)。圧縮コーデックはXF-AVC SもしくはXF-HEVC Sに対応し、All-IntraはなくLong GOPのみが選択可能。限られたストレージではこれで十分ともいえます。Logで撮りつつグレーディングはLUTを当てて最低限、みたいな使い方が向いていると感じました。
先代R8との最大の違いはIBISでしょうか。R8ではレンズISや電子ISに頼っていた手持ち撮影にボディー側の補正が加わりました。実際に動画でもしっかり体に固定すればかなりブレを抑えたフィックスも撮影可能。ユニークなのは「被写体追尾IS」という機能。電子ISの一種ですが、指定した被写体が画面内で安定するようにチューニングされており、並走などでは効果を発揮できそうな機能だと感じました。
背面にはAFポイント操作用のマルチコントローラーが追加され、SDカードスロットもバッテリー室内からボディー側面へ移動しました。独立したメディアスロットがありがたい。動画では、こうした地味な変更が実際の使い勝手に効きます。
重量はR8の約461gから約546gへ増えましたが、IBIS搭載のフルサイズ機としては依然かなり軽量です。個人的には、最近の潮流として増えているファインダーレスでサイズと重量(と価格)を抑えたものよりもファインダーありで撮る楽しさにきちんと向き合っているモデルに好感を持ちます。
端子はどうでしょうか。左側を見るとマイク端子、イヤホンジャックがあり、その下にリモートスイッチ端子。隣にはHDMIとUSB-Cの端子があります。HDMIは最近あまり見なくなった小型のマイクロ端子。ここにもコストとサイズを抑える工夫が見えます。USBは給電撮影にも対応しているようでした。
先代と大きく変わったデザインについて
今回、性能以上に話題になりそうなのが外観です。
従来のEOSは曲面を多用した有機的な造形でしたが、R8 Mark IIは直線と面を強く見せたシャープな形に変わりました。このデザインのルーツには、かつてのFD時代のキヤノンの名機「T80」など、往年のプロダクトデザインの系譜があるとも言われますが、発表直後からファンには「S社のプロダクトに見える」という声もあり、低く抑えたEVF部や直線的な肩のラインには、たしかに某ライバルシリーズを思わせるところがあります。
小型ミラーレスを直線と平面で整理していけば、似た形に収斂する部分もあるのかな、と擁護しつつ、手に持てば手のひらへの収まり具合は全く違い、むしろ最近の高性能かつ肥大化したミラーレスに比べるとすっきりとしていると感じます。スクエアな面の処理も内部を最大限効率よく配置するための方策なのかな、と思ったり。
ただ少し贅沢を言えば、それでももうひとまわり小さくできなかったのか、とも思います。近年はプロダクトにも作り手の「想い」を見出す傾向があります。その中でキヤノンは比較的「優等生」的です。大きさ、重さ、操作性を含め、すべてを破綻のない範囲に収めてくる。その完成度の高さは、R8 Mark IIにもよく表れていますが、もう一声頑張ってみてほしかった。
RF45mm F1.2キットが面白い
今回惹かれるのがRF45mm F1.2 STMとのレンズキットです。
RF45mm F1.2は個人的に所有していますが、コンセプトとそれに見合った描写性能、そしてお手頃な価格の揃った近年稀に見るヒットレンズ。
便利な標準ズームではなく、45mmの単焦点、それもF1.2を最初の一本として組み合わせる。これは往年の一眼レフを思い出させます。
かつてフィルム一眼レフを買うと、50mm F1.4やF1.8の標準レンズが付いてくるのが定番でした。ズームできないので、広く撮りたければ下がり、寄りたければ自分が近づく。その中で画角や距離感、絞りによる描写の変化を覚えていく。標準単焦点一本が、カメラを覚える入口でもありました。
そこへ2026年にR8 Mark II+45mm F1.2です。しかもF1.8ではなくF1.2。
小さなカメラに標準単焦点一本だけを付けて出かけるという楽しみ方には、デザイン以上にフィルム一眼レフ黄金時代へのちょっとした憧憬を感じます。
ここにもう一本、同じく小型軽量の「RF28mm F2.8 STM」があれば標準ズームいらずのベーシックセッティングが完了。「レンズセット」で出してもいいんじゃないかとすら思います。
テスト撮影
今回お借りできた期間が短かったので本格的なテストというよりは、このカメラのコンセプトに寄せていくようなイメージで「カメラ一つ、レンズ一本で街を気軽に切り取っていく」というのをやってみました。最近自分のインスタなどで「street cinematography」と称して、ストリートフォトを映像に落とし込む試みをしており、ストリートに溶け込むというコンセプトにこのカメラはぴったりだと感じます。
街角で構えても誰も気にしない、威圧感がない、溶け込んでいく。確かにスマホやコンデジに比べれば大きく、他にもっと小さな選択肢もあります。ただ、フルサイズでちょっと欲張る。そのくらいの贅沢がこのカメラにはあると思いました。
描写にも危なげがなく、安心感があります。今回撮影にはCanon Log 3を使いましたが、全く問題ない画質。6Kからダウンサンプリングした4K UHDの解像感も良い。Cinema EOSやR5 Mark IIといった上位機種と比べると、RAWやCanon Log 2が使えないという違いがありますが、「この設定でしか撮れない」という制限がむしろ撮影していて割り切れる。
写真ならjpgでしかとれないカメラの方が露出や構図に敏感になれるような感覚かな、と思います。
また、発色傾向としてもややあっさりめな印象があります。ここは好みの問題かもしれません。AFはストリートでは狙っていない人物を追いかけてしまったりとやや動きすぎる時もあります。動画であればMFを活用しても良いかもしれません。また、バッテリーの持ちもなかなか良い。1日撮影で3本もあれば十分ですし、USB給電撮影を活用すればモバイルバッテリーだけでも対応可能だったりします。
ちなみにこれも欲張ればの話ですが、こういったカジュアルな入門機にこそ「オープンゲート」機能があっても面白いと思います。動画、静止画の切り替えスイッチがありますが、動画に切り替えた途端に上下に黒帯が出て見た目まで変わってしまうという今までのあり方から、「動画も静止画も垣根なく同じ見え方」というスタイルにそろそろなってもいいんじゃないかと思ったり。
まとめ
今回R8 Mark IIを紹介させていただきました。
フルサイズのミラーレスカメラとして100点満点を目指すのではなく「80点のカメラとして100点満点」を出すカメラ、そんな感想を持ちました。
いつも持ち歩く。すっと取り出す。何気なく撮る。
大きなカメラを持ち歩く時とは違う心持ちになれるのもまた、カメラの力だと思いました。
だからこそ、少し惜しいと感じる部分もいくつかあります。このカメラの「カジュアルさ」についてもっと追求するのなら、という視点なのですが、前述したサイズ感やオープンゲートに加えて、例えば暗所での撮影の利便性を高める調光可能な小型LEDなど、何か一つ、ちょっとしたプラスワンがあってもよかったのではないかなと思いました。
シネマビューやフォーカスアウトなどのソフト的な試みがそれに当たるといえばそうなのかもしれません。
もちろん、何か一つでも追加すれば価格にも反映されるわけですから、簡単ではないということはわかります。そう思ってしまうのは、完成度が高いカメラに対する贅沢な不満なのかもしれません。
フルサイズ最初の1台としても、すでに上位機を持っている人の2台目としても、あるいは他社からの「ファーストCanon」としても、気軽に手を出せる、いい意味で存在感を消せる、それでいてしっかり使い心地のあるカメラなんじゃないかな、と思いました。
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