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はじめに

デジタル映像の無線伝送技術の普及が進み、一般ユーザでも手軽に使えるようになってから数年経ち、昨今では制作の現場以外にもスポーツ中継や配信イベントにおいて幅広く使用されている。

2024年にDJIから発売された「DJI SDR Transmission」は、SDR(ソフトウェア無線)方式による安定した伝送と小型なボディ、手頃な価格設定で、中小規模の制作現場から高い支持を集めてきた。

そんなDJIのワイヤレス映像伝送システム「DJI Transmission」シリーズに、新たな選択肢が加わる。その名も「DJI SDR Transmission 2」だ。

今回の後継機は、単に伝送性能を底上げしただけでなく、従来トランスミッター・レシーバと用途が分かれていた機器を「トランシーバー」化することにより、「送信機と受信機を1台に集約する」という設計思想の転換を打ち出している点が最大のトピックだ。発表前のDJI SDR Transmission 2をお借りすることができたので、本製品が制作現場にもたらすインパクトの片鱗に触れていく。

製品仕様

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従来機との比較

DJI SDR Transmission 2はDCI 4K/60fps・10bit HDRのモニタリングに対応し、H.265コーデックで最大50Mbpsのビットレートを扱える。映像伝送の遅延は最短で約35ミリ秒とされ、初代モデルからの伝送安定性・耐干渉性・障害物透過性の向上もDJI自身がアナウンスしている。また、伝送距離は最大4kmとされ、屋外ロケや広いスタジオでの運用も視野に入る仕様だ。

従来のDJI SDR Transmissionは1080p/60fps 20Mbps、伝送距離は3kmという公称値のため、基本性能が大幅に向上していることがわかる。

接続台数まわりも初代から大きく強化されている。従来機では3台の受信機およびWi-Fiを使用した2デバイスでの受信が可能だった。しかし、今回のSDR Transmission 2ではWi-Fi機能が映像伝送をより安定化させるために削除され、また、映像遅延が増えるデメリットはあったが台数無制限で受信機を接続できる「配信モード」がなくなった。

しかし、ハードウェア同士の映像伝送だけを見れば1台の送信機に対して最大8台の受信機を同時接続できるほか、複数経路伝送(マルチパストランスミッション)を用いれば、最大5台の送信機と40台の受信機を同時に稼働させられ、より業務機器として有利になっている。マルチカメラでのドラマ撮影やCM制作、ライブ配信など、複数のカメラ・複数の確認モニターを同時に運用したい現場にとっては、これまで以上に柔軟な布陣が組めることになる。

入出力端子は本体標準でHDMI×1・電源用およびUVC接続用のUSB-Cを2つ備え、別売りの拡張ボードを装着することでSDI×1・HDMI×1・USB-C×4まで拡張可能だ。

外観

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外観面での最大の特徴は、送信機・受信機が同一筐体に統合され、本体の物理スイッチでTX(送信)/RX(受信)を切り替えられるようになったことだ。初代モデルは送信機・受信機がそれぞれ独立した製品として展開されていたが、SDR Transmission 2では1つのユニットを状況に応じてどちらの役割にも割り当てられる。例えば1台を送信、残り4台を受信に設定するといった柔軟な機材構成が、追加の専用機材なしに実現できる計算になる。

本体は折りたたみ式アンテナとステータス表示・操作が可能なタッチパネルを備えたコンパクトな金属筐体で、重量は約136gと携行性を意識した仕上げになっている。電源はNP-Fバッテリ(Lバッテリ)、USB-C PDのほか、同社製ジンバル本体からの給電にも対応し、既存の周辺機材と組み合わせやすい設計だ。ロケ撮影や車載運用を想定したNATOレールのついた保護ケージも別売される。

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NP-Fバッテリープレートを介してUSB-C給電する

本体サイズもSDI端子がなくなった分わずかに小さくなった。またアンテナの構造が変わり、収納時には画面を保護する役割も持つようになった。バッテリープレートは着脱式となり、プレートをつけていない場合はRONINスタビライザーに取り付けるためのシューが現れる。

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HDMI入出力は1ポートのみ。受信機・送信機兼用のため、モードによってHDMIの入出力が切り替わる。

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反対側には電源とUVC出力用のUSBが2つ並ぶ。UVC用のポートにはケーブルロック用のネジ穴もついている。

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本体(右)とEXPANSIONアクセサリキット(左)

本体底面には別売りのEXPANSIONアクセサリキットと接続するためのコネクタがあり、普段はカバーが取り付けられる。カバーには1/4ネジがついており、これでカメラなどに取り付けることができる。

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本体およびEXPANSIONアクセサリそれぞれの端子カバーのネジを付属レンチで外し接続する。カバー取り付けネジがそのまま本体とアクセサリの固定ネジとなるので堅牢性を維持して取り付けられる。

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ケージ取り付けも付属レンチでネジをつけ外しして装着する。HDMIやUVCの端子保護やNATOレールなど、より安心して柔軟に本製品を運用することができる。
一方でEXPANSIONアクセサリキットやケージ取り付けに工具が必要なのは現場で即座に取り付け・取り外しをする際に少々問題になりそうではある。

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EXPANSIONアクセサリキット底部

アクセサリ底部にはカバー付きのSDI端子、HDMI端子と3つのUSB-C端子を備える。

従来機との比較

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従来のDJI SDR TransmissionはSDIが標準で搭載されていたが本製品では省略されている。SDIを使用する場合は必然的にEXPANSIONアクセサリキットを使用する必要があるが、そうなると全体のサイズは従来機よりかなり大きくなってしまうので注意が必要だ。従来機よりも解像度・画質などの向上はあるものの、どちらを選定するかは実際の使用状況を確認した上で行うとよさそうだ。

RONINシリーズとの接続性

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SDR Transmission 2はDJIのジンバル「RONIN」シリーズとの連携を前提に設計されている点も見逃せない。RS series(Ronin RSシリーズ)のスタビライザーに対するワイヤレス制御と、接続された対応カメラのコントロールに対応し、受信機に接続されたスマホやタブレットからのパン・チルト操作、ジンバルのリセンタリング、そしてカメラのリモート録画トリガーまでを、送受信ユニット経由で扱える。また、Force Mobileも使用できるため、スマホ等をカメラの向けたい方向へ傾けるだけでジンバルを制御することができる。

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DJI RS4 proに背面コールドシューを使って取り付けることができる
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RS4 proとは別売のUSB-C to CANケーブルを使用する(最新のRS5ジンバルの場合は付属USB-Cケーブルが使用可能)
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受信機からHDMI出力でモニター(右)に映像を出力できる。また、USBケーブルでタブレットなどと接続すればジンバル経由で対応カメラの露出制御なども行うことができる

このジンバルとの連携は、単なる映像伝送機能にとどまらず、SDR Transmission 2が「モニタリング+カメラ/ジンバル制御のハブ」としての役割を担うことを意味していると考えられる。ジンバルオペレーターから離れた場所にいるディレクターやフォーカスプラー、ビデオエンジニアが、映像を確認しながらカメラの露出調整や、ジンバルの向き、録画のオン/オフを遠隔操作できるようになれば、少人数のクルー構成でも従来より高度なカメラワークが狙える可能性がある。RONINシリーズを主力機材として運用している制作会社にとっては、既存のワークフローに組み込みやすい強みになるだろう。

DJI SDR Transmission 2がもたらす制作現場のメリット

DJI SDR Transmission 2の最大の狙いは大規模な放送用無線伝送システムの代替ではなく、限られた予算・人員の現場に、業務レベルの安定性を持つ映像伝送環境を届けることにあるだろう。

具体的なメリットとしては、まず送受信機を1台に統一したことによる機材管理・在庫コストの簡素化が挙げられる。予備機を送信・受信どちらにも転用できるため、現場でのトラブルや急な人員増にも柔軟に対応しやすい。

次に、最短35ミリ秒という低遅延と4K/HDR対応により、ディレクターズモニターやクライアントモニターでの確認作業がよりリアルタイムに近づき、フォーカスや芝居の確認精度が上がることも期待できる。

さらに、最大40台という多台数受信への対応は、複数部署(撮影・照明・監督・クライアント)が同時に同じ映像を確認する体制づくりに寄与する。受信機の台数を気にせずに済むため、監督・照明部・クライアントなどすでに多数の受信機を使用している現場でも、モニターを気軽に増設できる。

大画面のタブレットと受信機を用意し、DJI RONINアプリでローカル録画を行えば、50Mbpsという高いビットレートによる簡易バックアップ収録やプレイバック確認といったDIT的業務も担うことができる。RONINシリーズとの制御連携も含め、「伝送」「モニタリング・収録」「カメラ制御」を1つの機材エコシステムに集約できる点は、配線の削減にもつながり、セットアップ時間の短縮という形で現場の生産性向上に直結する。

まとめ

DJI SDR Transmission 2は、初代モデルの強みだったコストパフォーマンスと安定性を土台に、「送受信一体型」という設計転換によって現場での柔軟性を大きく引き上げた製品として登場する。4K/HDR対応、低遅延、多台数接続、そしてRONINシリーズとの制御連携という組み合わせは、中小規模の映像制作チームが直面しがちな「人員不足」「機材コスト」「セットアップの手間」といった課題に対する現実的な解になり得ると感じさせる。

サカイアキヒロ|プロフィール

1984年生まれ。映像カメラマン/配信エンジニア/録音技師。
業務用音響機器メーカーでエンジニアとして培った音響とネットワークの知識を活用しライブ配信現場でテクニカルディレクターからCMやWebドラマの録音技師として幅広く活動中。YouTubeでは機材レビューや配信技術などの動画を発信中。