NHK 技研公開2008」レポート

日本放送協会(NHK)は、東京都世田谷区のNHK放送技術研究所(NHK技研)を一般公開する「技研公開2008」を5月22日から25日の4日間開催した。 1年に1度の最新技術の公開とあって、開場直後から多くの来場者が詰めかけた。

一番の注目は、”スーパーハイビジョン”

先日の記事でも注目を集めていた現行のハイビジョン放送の16倍のデータ量を持つスーパーハイビジョンカメラが展示された。3300万画素(7680×4320)の2.5インチCMOSセンサーを用いたカメラが展示され、毎秒60フレームのプログレッシブ撮影が可能。現時点ではスーパーハイビジョンの全画素を表示できるモニターがないため、アストロデザインのDM-3400(4K×2K)液晶モニタに画像の一部を切り替えて表示できるようにしていた。 3枚の有機膜を重ねた単板式撮像デバイスが参考出品されていました。試作段階のためまだ1,500画素程度しかなく、モニターに映し出される画像は何とか文字が判別できる程度のもの。しかしながら、現在解像度アップのネックになっている色分解プリズムが必要なく、カメラ・レンズとも小型化できるため、スーパーハイビジョンカメラ用のデバイスとして期待されている。 会場では、現行のBSアナログ放送が終了したあとの帯域を用いたスーパーハイビジョン伝送のシステムも展示。AVC/H.264の技術を用い、最大240倍の圧縮を行い約120Mbpsで3300万画素の映像と22.2チャンネルの音声伝送がデモンストレーションを行った。 この技術を用いることで現行放送の伝送も効率化できるという。実際に、現行ハイビジョン放送の8PSK変調を用いての4番組同時伝送や、32PSK変調を用いたスーパーハイビジョン伝送のデモも行われた。 その他、超高精細プラズマディスプレイも参考出品されていました。まだ7インチのディスプレイしか完成していないが、0.3mmの画素ピッチを実現しており、将来的には100インチのサイズのディスプレイでもスーパーハイビジョンの全画素(7680×4320)を表示できるという。同時に発光効率が30%向上し、従来のプラズマディスプレイに比べ消費電力を30%削減している。

電場駆動型エラストマーを採用し極薄スピーカー

電場駆動型エラストマーを用いた薄型スピーカーが展示され、実際に音楽再生を実演。エラストマーとはゴムやシリコンのような弾性を持つ高分子化合物で、非常に薄く広い周波数帯域をカバーできるため、スーパーハイビジョン放送の22チャンネル用スピーカーなどへの応用が期待されている。

100kHzまで収録可能な超広帯域マイクロホン

全指向性と両指向性のカプセルを組み合わせることによって、従来のマイクでは不可能であった100KHzまで収録可能な超広帯域マイクロホンも展示されていた。アーカイブとしてのハイビジョン映像では、音声の収録にデジタルレコーダーが用いられることも多く、24bit/192KHzサンプリングでの収録に適したマイクが必要になってきたとのこと。20KHzでカットされてきたハイビジョン放送の音声が、薄型スピーカーとともに臨場感のある高音質な放送になる日も近いのではないか。

リアルタイム音声認識自動字幕制作システム

こちらは音声認識により字幕放送制作システムだ。耳の不自由な方には欠かせない字幕放送だが、生放送では文字入力スピードの制約もあり、現時点では字幕放送の比率は決して高くない。この問題を解決するため、話している音声を認識し文字に変換することで、ニュースなどの緊急性を持つ情報も文字情報としてリアルタイムに伝えることが可能になるという。

リアルタイム音声認識自動字幕制作システム

1.25インチ890万画素CMOSを用いた小型ハイビジョンカメラも展示された。ライカ・オリンパスなどのデジタル一眼レフカメラに採用されているフォーサーズ(4/3インチ)規格マウントを用いることで、高価なハイビジョン用ビデオレンズを使う必要がなくなり、安価で多彩レンズが使用できるためレンズ込みで約2kgとカメラの小型軽量化が可能になるという。

肩載せENGカメラ用スタビライザー

肩載せENGカメラ用の防振装置も新たに開発。ショルダーパットの部分に防振機構を組み込み、レンズリモートも別途用意することで、防振レンズでは押さえきれなかった歩行中レンズから直接伝わる大きな振動も抑えることができる。

毎秒100万枚!超高速撮影が可能なカメラ

こちらは最大毎秒100万枚の高速度撮影ができる超高速度カメラ。レンズからの光をスプリッタで2方向に分けることで、CCDを2枚配置でき交互に撮影することで超高速度撮影を実現。実際に会場では水の入った風船を割るシーンを実際に撮影し、注目を集めていた。

隠れた被写体を撮影!電波テレビカメラ

霧や煙など遮蔽物で隠れた被写体を電波を利用して撮影する電波テレビカメラ。被写体に向けてミリ波電波を放射し、受信アンテナのビーム方向を上下左右に走査し、その反射を受信することで、被写体を撮影。災害報道や動物の撮影などへの利用が考えられている。

ミリ波モバイルカメラ

伝送エリアの拡大と、とぎれにくい無線伝送を可能にしたミリ波モバイルカメラ。8台の受信機から、受信環境の良いMIMO復調に必要な4台の受信機選択する。 未だ大きいものの双方向伝送用なら、リターン、タリー、インカムなど中継には不可欠な信号のやり取りも可能だ。