興行的に成功する邦画が近年増え、各映画会社はこぞって撮影所の設備増強を行っている。2008年に松竹の100%子会社になった松竹京都撮影所(京都市右京区)も、事業費20億円をかけてスタジオと事務棟を改修。この春、撮影から試写までを一貫作業できる新たな環境をオープンした。

松竹京都撮影所は、商業映画作品やテレビ時代劇の撮影に使う約150平方メートルのスタジオ2棟と、立命館大映像学部の学生の実習用施設のスタジオ2室を新設した。事務棟には立命大用の講義室や研修室も用意されている。

ポストプロダクション施設では、IMAGICAウェストが運用するオンライン編集室や、「貸しスタジオ」でのラッシュ試写に対応すべく35ミリフィルムとデジタル両方に対応した、スクリーニング(試写室)が設けてある。

IMAGICAウェストは、撮影所と密な連携がとれるよう、撮影所内にこのサテライトスタジオ「京都スタジオ」を設立。これは撮影所からの依頼でもあったという。大坂本社でも採用しているオートデスク社「Smoke」で、本編集・カラコレから合成まで、様々な映像制作に対応している。同じ地区では東映京都撮影所も来年までにスタジオなどを建設予定で、こちらも大学の映像関連の研究機関などが入居する施設がある。

東京では、東宝、角川や日活撮影所でも大規模な改修工事を実施、また近々予定をしているが、人材育成の機能はほとんど強化しておらず、この点では京都の2撮影所と対照的だ。松竹や東映は、自社製作のテレビ時代劇も主力とするため、専門スタッフのニーズがある。松竹京都撮影所では、松竹グループのインターンシップも行っており、新たな施設で人材育成を強化しつつ独立性を高めたい意向だ。