ウォールストリートジャーナル(オンライン)の説明によると、リバース・ブレークアップ・フィー(リバース・ターミネーション・フィー)という買い手側の事情により契約が解除に至った場合に支払われる違約金は、プライスタグの20%の米25億ドルに及ぶ。2013年の2月迄に買収手続きが完了しなかった場合にも効力があるという。
Motorola Mobilityの株主の一人、ジョン・W・キーティング氏は、2万件に近い特許を125億ドルで売却するのは不当だとして、既に会社と代表者サンジェイ・ジャ氏に対して訴訟を起こしている。また、モトローラの大株主で億万投資家であるカール・アイカーン氏の支援で同社役員となっていたビル・ハンブレクト氏は役員から辞任した。アイカーン氏は、以前にMotorolaに対してモバイルデバイス事業のスピンオフと訴え、最近では公共で特許をマネタイズするよう求めていた人物である。
セットトップボックス市場
Motorolaは2009年にMotorola MobilityとMotorola Solutionsに企業分割を行った。この分離は彼らが保有するAndroidとモバイルの特許と、セットトップボックス(STB)製品の資産を明らかにすることになった。余談だが、市場に精通しているリサーチ会社によると、マイクロソフト社も、Motorola Mobilityの特許売却を促していた1社だという。マイクロソフト社は以前からハードウェアを自社でもたないと宣言しており、ただMotorola保有の特許だけに興味があったと言える。
MotorolaはGeneral Instrumentを買収して以来、Scientific Atlanta(Ciscoの一部)と共にSTB市場を独占しており、世界にまたがる大規模な有料TVオペレーター達と友好なビジネス関係にある。Googleはつい先日までGoogle TVによるOTTテレビサービスの展開で広告収入シェアを奪われるとして、米国放送局やケーブルオペレーターから敵対視されていた。しかし今回の買収のニュースでうって変わり、ケーブル市場最大の技術サプライヤーとなった。コンテンツサーチエンジンは有料TV技術でもキーの部分だ。MotorolaのSTBはLinuxベースで、有料TVでのコンテンツサーチやナビゲーションは優秀なものではない。これがAndroidへ移植して改善される可能性も出てきた。
またGoogle TVにおいても、ソニー、Logitechなど数社以外に展開していく企業もなく、米国市場で成功しているとは言えない。Google TVはテレビ向けプラットフォームとして、AndroidとChromeブラウザを基盤とし、テレビやSTBに組み込んでテレビでのWebサイト閲覧やコンテンツ検索を可能にする。新しくSTB技術を実装し、Google TVをソフトウェアとして搭載できるようにするなど、Motorolaの技術資産を用いてGoogle TV自身の立て直しも予測される。
(山下香欧)