ついにハリウッドメディア産業が期待する共通フォーマットを支援するサービスが立ち上がる

今週、米ラスベガスで開催されているCESにて、米アマゾンの執行副社長であるビル・カー氏が、ハリウッドにあるスタジオと提携してウルトラ・バイオレットを採用した映画コンテンツを提供する準備をしていることを明らかにした。

ウルトラ・バイオレット(UV)とはDECE(Digital Entertainment Content Ecosystem)コンソーシアムが推進している、ビデオ・コンテンツのオープン化クラウドDRMシステム。デジタルロッカーというサーバーを中核に、市場で採用されている5つのDRM方式に対応し、ダウンロードフォーマットにはCommon Encryption (CENC)という暗号鍵を使ったCFF(Common File Format)を策定している。DECEでは昨年夏から、コンテンツ事業者向けにライセンスを発行しており、UV方式を採用したメディア配給サービスの啓蒙を期待している。

Appleストアから購入した映画コンテンツは、他のメーカーの端末では観ることができない。またPCでダウンロード購入した映画はそのままではテレビで見ることができない。DECEコンソーシアムではUVを通して、そういった現在の端末多様化によるサービスフォーマット多様化を収束した、ビデオコンテンツの「オープン化」を試みている。

DECEコンソーシアムには、ソニー・ピクチャーズ、フォックス、パラマウント、ワーナー・ブラザーズといった、ディズニー以外のハリウッド大手映画スタジオがすべて加入している。ビデオ配信事業者では、米国三大ケーブル局、ケーブルテレビの規格標準化団体CableLabs、Netflixやソニー、富士通、東芝、パナソニック、HP、IBMなど、大手ではApple以外が加入しており、現在、業界の垣根を越えて70社以上の企業が支援している。

このUVを使ったサービスとはどういうものになるだろうか?たとえば、購入したDVDをウルトラ・バイオレット側に登録しておけば、DVDが破損しても同じタイトルをダウンロードしてデータとして保存してほかのデバイスで視聴することができ、またダウンロードした端末が壊れたり、誤ってハードディスクから削除してしまっても、ほかの端末でもダウンロードすることができる。

アマゾンは、昨年のクリスマスシーズン商戦で爆発的な売り上げをあげた新タブレット「キンドル・ファイア」の成功により、コンテンツ配給社側の著作権利をいかに保守しながら、消費者が保有するマルチデバイスへ提供できるかに着目しているようだ。「我々は消費者側と同じようにUVの可能性について非常に興味を持っている。」とし、「消費者にとってベストな映画&テレビ番組サービスというのは、多様な選択ができることだ。」とカー氏は語っていた。

タイム・ワーナーの「モンスター上司(Horrible Bosses)」と「グリーンランタン(Green Lantern)」のほか、3月までにはウルトラ・バイオレットを採用したハリウッド映画作品が50作品以上に増える。

アマゾンのほか、ウォルマートやバーンズ&ノーブルでもUVを採用しようと準備しているという。DECEは昨年の10月に正式にUVサービスを開始してから、米国内で75万件が登録をしていると公表している。UVは米国だけでなく日本を含む世界への浸透も間近とみられている。

(山下香欧)