国立大学法人東京工業大学とソニー株式会社は、世界最高速6.3Gb/sのミリ波無線データ伝送を実現する高周波 (RF) LSIおよびベースバンド (BB) LSIを共同開発したと発表した。本成果の詳細については、2月19日からサンフランシスコにて開催されているInternational Solid-State Circuits Conference (ISSCC) に採択され、論文番号12.3にて発表される。この技術が実用化できると、ケーブルにつなぐことなくモバイル機器間で高速にデータを送受信したり、高画質な映像を非圧縮で送りながら見たりする事が可能になるとしている。

共同開発を進めるにあたり、ソニーがBB LSIのデジタル部の設計とチップ全体の開発を担当し、東京工業大学がRF LSIとBB LSIのアナログ部の設計を担当。ソニーが開発を担当したレート14/15 Low-Density Parity-Check (LDPC) 誤り訂正符号によって、誤り訂正を行うために必要となる付加データ量そのものを大幅に削減し、世界最小というビット当たり消費電力11.8pJ/bit (6.3Gb/s動作時74mW) でLDPC復号処理を実現したという。このLDPC符号は60GHz帯ミリ波標準IEEE802.15.3cへ提案し採用されている。

RF LSI (左) およびBB LSI (右) のチップ写真

また、東京工業大学の松澤昭教授と岡田健一准教授らの研究グループが開発したRF LSIは、60GHz帯ミリ波ダイレクトコンバージョン無線機で、高速な無線通信を可能とする16Quadrature Amplitude Modulation(16QAM)に、世界で初めて、各種60GHz帯無線標準規格において規定されているすべての周波数チャネルで対応したもの。これまでにも東京工業大学では、周波数チャネル2チャネルまで対応する注入同期型局部発振器を開発していたが、今回は注入同期型局部発振器を独自の折り返し型構造にすることで、周波数チャネル全4チャネルへの対応を可能にしたという。

また、BB LSIに搭載したアナログデジタル変換器では、変換誤差を増加させずに比較器を簡略化できる技術を開発。60GHz帯無線機に搭載されたアナログデジタル変換器として世界最小の消費電力12mW(2.3G samples/s動作時)を実現したとしている。