去る3月16日、JVCケンウッド本社において業務用4Kメモリーカードカメラレコーダー「GY-HMQ10」の発表が行われた。
HDが一般化し、更なる高画素化が期待される昨今、すでに民生機のテレビモニターに4K対応の製品が発売になり、4K視聴の環境が整いつつあることから手軽に4K撮影が行えるカメラとして開発されたもので、4kの画像は4つのSDHCメモリーカードにHD解像度で4分割された画像ファイルとして独立して記録される。現状では4Kのファイルをリーズナブルな価格で記録できるメディアがないためこうした記録形式になったという。
コーデックはMPEG-4 AVC/H.264で、ハイビジョン記録時はAVCHDとなっており、4Kでの最大ビットレートはトータルで144Mbps(36Mbps×4)、HDで最大28Mbps。4Kのフォーマットは3840×2160 60p/50p/24pとなっている。
レンズは6.7~67mm (35mm換算:42.4~424 mm)10倍ズームで光学手ブレ補正機能を搭載している。撮像素子が1/2.3型ということもあり、ワイド側がもう少し欲しいところだが、周辺部まで高画質を維持するため、イメージサークルの広いレンズの中心部を使っているという。現在適合するワイコンのテストをしており、満足のいく製品があれば公開していく予定だ。
カメラからの出力はHDMIで、HDでは1系統、4KではHDMI4系統で接続する。会場では東芝のREGZA 55X3にHDMIを4系統接続して表示が行われていたが、同社のDLAプロジェクター(DLA-SH4K、DLA-SH7NL)にも対応製品があるので(DVI-HDMI変換による接続)、イベント会場などで4K画像を大画面で披露することが可能だ。
価格はオープンとなっているが市場想定価格は75万円ほど。カメラは3月21日から出荷が開始されるが、4つのHD画像から4Kの画像ファイルを生成するソフトウェア「JVC 4K クリップマネージャー」は3月末から同社のWebからユーザー向けに無償提供される。
4K対応のカメラとしてはREDやARRI、F65といったデジタルシネマ用途のカメラがすでに発売となっており一定の地位を確保しているが、今回発表となったGY-HMQ10は業務用とはいえ、かなり民生機を意識した作りとなっている。
同社でもGY-HMQ10をメインにしたデジタルシネマ撮影は念頭においているわけではなく、そうしたデジタルシネマ用カメラでは撮影できないアクションシーンや車載等の特殊用途や、文教、メディカルなどを主なターゲットとしている。ガンマはメタデータとして保持されないが、スタンダードとシネマの2つを選択でき、それぞれ10段階の設定が可能となっており、シネライクな撮影は可能だ。
撮影されたファイルはハイビジョンサイズのファイルが4つできるので、一見後処理など面倒な印象を受けるが、HDのパネルを組み合わせるデジタルサイネージ用の素材撮影などデジタルシネマカメラではコスト的に合わないような用途には最適と思われる。特に撮影された4つの画像ファイルは単純に4Kの画像が4つに分割されたHDの画像ファイルなので、特別なソフトを用意することなく手軽にHD×4や横HD×2や縦HD×2という組み合わせによるディスプレーができる。
HDから3Dの次に来るトレンドとして4Kが有望視される。すでにテレビモニターが発売され、CESでもビデオカメラの試作品が出品されている。JVCケンウッドは他社に先駆けて4K解像度での記録が可能な小型ビデオカメラGY-HMQ10を発売する
NABやIBC、CESなどで出品した試作機(写真奥)と今回発売するGY-HMQ10。多少幅広になったものの当初の計画通りのサイズで4Kカメラを開発
GY-HMQ10の記録フォーマットはHDの4倍の3840×2160でプログレッシブ(59.94p/50p/23.98p)記録となっている
記録されたHD×4のファイルは専用ソフト「JVC 4K クリップマネージャー」により4Kの1つのファイルになる。4つのHDファイルはそれぞれのりしろを設定することができる
このカメラ用に開発されたIDX製のバッテリー。同社ではこのIDXのバッテリーを採用し、充電器などの周辺機器もIDXが担当するという
本体側面の4基のSDHCメモリーカードスロット。4K撮影・再生時には4枚が揃っていないと撮影・再生できない。HD記録時は1スロットのみ使用
JVC 4K クリップマネージャーはGY-HMQ10で記録された4つのHDファイルをProRes422(MOV)に統合する変換ソフトでMac OS X 10.6.8/10.7.2に対応。変換したファイルをFinal Cut Pro X/7で編集するデモが披露された
JVC 4K クリップマネージャーによる変換は実時間の1/3ほどで、ProRes422(HD)、ProRes422(LT)、ProRes422(Proxy)を選択可能
4つのHDMI端子から東芝のREGZA 55X3に接続(3月末に発売のオプションが必要)してデモが行われた
カメラのLCDディスプレーをタッチすることで、4K画像からHD出力する部分を選択することができる
オーディオユニットを装着した状態でも幅139mm×奥行き198mm×高さ271mm、質量 約1.67kg (付属バッテリー装着時)というのは業務用の小型ビデオカメラの中でも小振りな作りだ。グリップによる手持ち撮影でも充分対応できる
主な仕様
- 撮像素子:1/2.3型 829万画素(有効) 裏面照射CMOSセンサー
- 同期システム:内部同期
- 手ブレ補正:光学手ブレ方式(ROIS)
- レンズ:F2.8~4.5、10倍、f = 6.7 ~67mm (35mm換算42.4 ~ 424 mm)
- フィルター径:フードなし時46mm (スクリューピッチ0.75mm) フィルター/アングルコンバーター用。フード付き時 72mm (スクリューピッチ0.75mm) フィルター用
- シャッタースピード:1/2~1/4000秒
- ゲイン:0dB、3dB、6dB、9dB、12dB、15dB、18dB、AGC
- LCDモニター:3.5インチLCD、92万画素、16 : 9、カラー、タッチパネル
- ビューファインダー:0.24インチ LCOS 26万画素、16:9、カラー
- 記録メディア:SDHC/SDXC (クラス6/10推奨)、SDHC/SDXC スロット×4
- 記録フォーマット:4K 時MPEG-4 AVC/H.264 ( .MP4)。HD 時AVCHD(.MTS)
- 記録モード:4K設定 3840×2160/60p/50p/24p。VBR、144Mbps(Max) MPEG-4 AVC/H.264、Audio (AAC 2ch 48kHz 16bit 384kbps)
- HD設定:1920×1080/60p/60i/50p/50i、60p/50p mode (VBR、最大 28Mbps)、UXP Mode(VBR約24Mbps)、XP Mode( VBR約17Mbps/)、SP Mode(VBR約12Mbps、(EP Mode(VBR約5Mbps)、Audio(AC3 2ch 48kHz 16bit 256kbps)
- フレームレート:NTSC設定 4K(3840×2160/59.94p、23.98p)、HD (1920×1080/59.94i、59.94p)
- ビデオ/オーディオ出力:Mini HDMI出力×4(4K:HDMI×4)、HD (HDMI ×1)
- オーディオ入力:XLR ×2 (MIC、+48V/LINE) (内蔵ステレオマイクあり)
- リモート端子:φ3.5mm ミニジャック (4極)
- ヘッドフォン端子:φ3.5mm ミニジャック (ステレオ)
- USB :USB2.0、Type-B
- 電源:DC 12V (ACアダプター使用時)、DC 7.4V (バッテリー使用時)。約17.5W
- 外形寸法 :幅139mm×奥行き198mm×高さ271mm(オーディオユニット装着時)
- 質量 :約1.67kg (付属バッテリー装着時)