EOS Mのコミュニケーションパートナーに起用された俳優の妻夫木聡さんと女優の新垣結衣さん。カメラボディがいかに小さいかがわかる

キヤノンは23日、同社初となるミラーレスカメラ「EOS M」を9月中旬から発売することを発表した。EOS Mのボディ(6万9,800円)のほかに、標準ズームとパンケーキレンズの2本、ストロボ、EFレンズマウントアダプタを同梱した「EOS Mダブルレンズキット」(10万9,800円)、「EOS M・EF-M18-55 IS STMレンズキット」(8万4,800円)、「EOS M・EF-M22 STMレンズキット」(7万9,800円)など3種類のレンズキットもラインナップされる予定だ(価格はキヤノンオンラインショップの販売予定価格のもの)。EOSといえば、昨年デジタルシネマカメラのジャンルにも進出したカメラのトップブランドだ。EOSブランドのミラーレスカメラとなれば、映像業界でも気になる人が多いはずだ。東京都内で行われた同製品の発表会の様子を紹介しよう。

レンズ交換式デジタルカメラ市場の4割がミラーレス

まず最初に、キヤノンマーケティングジャパン代表取締役社長の川崎正己氏がレンズ交換式デジタルカメラの市場全体の状況から説明を行った。市場は大きく成長していて、一眼レフカメラとミラーレスカメラを合わせたレンズ交換式デジタルカメラ市場は出荷台数が増加傾向にあり、2012年も前年と比較して大きな伸びを示すものと予測しているという。その中でもミラーレスカメラが顕著な伸びを示していて、ミラーレスカメラが2008年に登場して以来、レンズ交換式デジタルカメラ市場の約4割を占めるほど伸びていると紹介した。

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小型化、軽量化を両立したEOS M

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青の部分がミラーレスのシェア。一眼レフに追いつく勢いで伸びている

続いて語ったのは、製品のターゲットについてだ。現在、EOSシリーズは、使いやすさと高画質を追求した「エントリークラス」、より本格的に撮影をすることができる「ミドルクラス」、プロユーザーやプロのように写真にこだわった撮影を可能にする「ハイエンドクラス」の3段階のゾーンに分けてラインナップされているが、今回のEOS MはEOS Kissと同じエントリクラスの位置づけとなる製品だ。ミラーレスの特徴である小型軽量を武器に、これまでのEOS Kissシリーズでカバーできなかった新しいユーザー層にアピールしていきたいと考えているという。

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EOS Mは入門やファミリーユースがターゲットのエントリー向けカテゴリの製品だ

EFレンズの機能をそのまま使えるアダプタも用意

次に語ったのはキヤノン常務取締役 イメージコミュニケーション事業本部長の真栄田雅也氏だ。まず、新製品の開発の狙いと特徴について説明を行った。高画質化と小型軽量化は相反する要素だが、この2つの要素を両立したのがEOS Mであることをアピールし、高画質化の技術から解説を行った。

EOS Mは、EOS Kiss X6iと同じAPS-Cの大型CMOSセンサーと映像エンジン「DIGIC 5」を搭載。1800万画素の解像度によりトリミングをしても解像度の高い画像を得ることが可能だという。また、EOS Kiss X6i以前の機種ではライブビューや動画撮影機能の際にコントラストAFしか使えなかったが、EOS MではスピードのあるAFが特徴の位相差AFをライブビューや動画撮影機能でも使うことが可能だ。これは、CMOSセンサーを自社開発、自社生産しているキヤノンだからこそ実現できたことであり、画質を犠牲にせずに快速、快適を実現できたとアピールした。さらに、ピント合わせの早い位相差AFと高精度にピントを合わせることができるコントラストAFの両方を併用したハイブリッドCMOS AFを採用しているのも特徴だという。

小型軽量化を実現できたボディについては、マグネシウム製のシャーシーを新しく開発投入したり、主要パーツを徹底的に小型化、静電容量方式のタッチパネル液晶を採用することでボタンなどの操作部材を大幅に削減。レリーズボタンも注目で、ボタンそのものだけではなく、指がかかりやすいようにボディに独特のカーブを採用しているという。

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EOS MのAFは、高速、高精度かつスムーズなピント合わせが可能だ

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シャッターボタンは従来のEOSシリーズの操作感を継承している

EOS Mには、メリットを引き出す新しいレンズラインナップ「EF-M」シリーズが2本ラインナップされている。画質に徹底的にこだわり、クラスナンバーワンの画質や小型化をしたり、EOS Mにマッチするスタイリッシュなデザインが特徴だ。EOS M用の標準ズームレンズでは動画撮影に必須な静音かつスムーズなAFを実現していることも特徴で、ステッピングモーターとリードスクリュータイプを採用することで実現したという。

EFレンズは約60種類以上がラインナップされているが、マウントアダプタを使用することでAFやISなどEFレンズの機能をそのままにこれらの豊富なレンズ群をEOS Mで使用することができるというものだ。着脱式の三脚座も標準装備しており、さまざなEFレンズに対応可能という。

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高画質と小型化を両立した標準ズームレンズ「EF-M18-55mm F3.5-5.6 IS STM」

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小型、軽量のパンケーキレンズ「EF-M22mm F2 STM」

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従来のレンズシステムを継承するマウントアダプター「EF-EOS M」

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マウントアダプター「EF-EOS M」とボディの大きさの比較

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発表会ではすべてのEFレンズに「EF-EOS M」を経由してEOS Mと組み合わせた展示が行われていた

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EF800mm F5.6L IS USMとEOS Mを組み合わせた例

ミドルクラスやハイエンドクラスのミラーレスに期待が膨らむ

他のEOSシリーズ同様、EOS Mも動作撮影機能も搭載している。最大の記録サイズは1920×1080(Full HD)で、この記録サイズの際には30p/25p/24pのフレームレートに対応する。記録形式はMOV形式だ。露出制御は動画自動露出モードと動画マニュアル露出モードから選べる。EOS Mの仕様は、動画撮影機能も含めて6月8日に発表したEOS Kiss X6iと類似している箇所が多いのも気になるところだ。

気になるのは今後登場するであろう、メインカメラとして使用できるようなミドルクラスやハイエンドクラスのミラーレスだ。これらの製品が登場すれば、EOS 5DやEOS 7Dが登場した時のように映像業界の撮影事情にも影響を与えるかもしれない。製品の発表までまだまだ時間はかかると思うが、キヤノンのミラーレス機の今後の動向が楽しみだ。