米Amazonから新しいKindleファミリが登場する。先週木曜日(現地時間)の10時30分から行われた記者発表会にて、タブレットKindleでもハイスペックなモデルが発表された。最高峰の8.9インチサイズKindle Fire HDは、Gorilla社製のフルHD 1920×1200 1080pディスプレイにフロントHDカメラ、HDMI 、Bluetooth 、そして4G対応版とWiFi専用版が用意されている。オペレーションシステムは残念ながら、Android 4.1 (Jelly Bean)ではなく、Android 4.0 (Ice Cream Sandwich)になる。プロセッサは、Texas Instrument社製 OMAP 4460 デュアルコア(1.2GHz)で、グラフィックエンジンはImagination 社製のSGX544を搭載。

ディスプレイは現行と同じGorilla社製ではあるが、独自開発でグレアを25%ほど抑えてある。今までにない、タッチセンサーとLCDパネルをシングルレイヤーとして積層することで、タッチセンサーからくる光がLCDに反映されることを防ぎ、よりクリアなディスプレイを実現するという。True Wide偏光フィルターがLCDに採用されており、どの角度からもピクチャーが同じように見える。オーディオはデュアルステレオスピーカー、ドルビーサウンドを搭載。

Kindle Fire HDには1280×800の7インチモデルも揃っており、両モデルにおいて、デュアルバンド・アンテナのWiFi(802.11 a/b/g/n) を搭載。また複数のアンテナを組み合わせてデータ送受信の帯域を広げるMIMO (Multiple In/Multiple Out )無線技術を実装し、市場初のトリプル技術でGoogle Nexus7やApple iPadを差し置いて31Mbsという高速転送を可能にするという。なおKindle製品には、NFC(近距離無線通信)は実装されていない。

Kindle Fire HD 4Gモデルは32GBが499ドル、64GBが599ドル。WiFiのみのモデルは299ドルから。7インチモデルは199ドルから。発売日は8.9インチモデルが11月20日、7インチモデルが今週の9月14日を予定している。英国、ドイツ、フランス、イタリア、スペインなどでも同時に発売されるが、英国では7インチモデルのみ販売されるという。

ユニークな仕様としては、X-Ray機能が映画やゲームにも使えるようになったことだ。既存の書籍データベース検索X-Rayと同様に、例えば映画ではInternet Movie Database (IMDB)のデータベースを使って映画出演者や監督などさまざまな情報を瞬時に得ることができる。

またオプトアウト(opt-out)オプションという、米国では15ドル支払えば、すべてのスクリーンにおいて広告を送り付けないよう拒否することができるという。さらに書籍やビデオ、ゲームなどカテゴリごとにプロテクション設定は勿論、時間制限も設定できる。4人の子供を持つアマゾン最高経営管理者のジェフ・ベゾス氏自身、子供を持つ親にとって非常に便利な機能だと記者発表のステージで説明していた。

新電子書籍モデルとして迎えられた、ライトがビルトインのKindle Paperwhiteの最大の特徴はそのバッテリー持続時間8週間にある。LEDの低消費電力を可能にするディスプレイ照明技術の特許によるものだという。現行のファミリよりも高解像度、そしてページをめくるスピードを25%ほど早くさせてリアルスティックに近づけた。Kindle PaperwhiteはWiFiモデルが119ドル、追加3G実装モデルが179ドル。出荷は10月1日を予定しており、既に購入予約を受け付けている。

ベゾス氏曰く、Kindle Fireモデルは8月在庫切れになったという。しかしアマゾンは言い続けているが、Kindleハードウェアで利益を得ることが目的ではない。

ベゾス氏はバックステージの記者会見で、「Kindleを買っても机に置きっぱなしでは意味がない。Kindleでコンテンツを楽しんでもらわないと」と語っていた。電子書籍を読むユーザーは4年前から比べて2011年で4.62倍にも伸びているという。 Kindleでは18万以上のタイトルの書籍に出会える。先月にはダウンロード数が一億回を突破したという。同社では、Kindleユーザー向けにアマゾン・インスタント・ビデオというオンデマンドビデオサービスを提供している。最近同社は新しくViacom(パラマウント)MGMとLionsgate社が共同出資しているオンデマンドサービスEPIX社と提携したことを発表した。また、ESPNやNBCUniversalとも同時期にテレビ最新シリーズなどで提携し、テレビ番組や映画作品のタイトル数を2万5千と一昨年前から2倍にしている。「このサービスは我々にとっては相当の巨額投資だ。これはオーナーズ貸出図書館みたいなもの。ハリーポッターのライセンスは高額だが、オーナーには無料で貸出をする。オーナーはこういったサービスが受けられることを求めているし、我々はそれらニーズに対して投資することが賢明だと考えている」(ベゾス氏談)

(山下香欧)