国際電気通信連合(ITU)は1月25日(現地時間)、H.264/MPEG-4 AVCコーデックの次世代版、High Efficiency Video Coding(HEVC)=ITU-TH.265(ISO/IEC 23008-2)を承認したことを発表した。
詳しく言えば、ITUの機関の1つ、ITU-T(ITU電気通信標準化部門)で標準作成作業を行う研究委員会の一つ、Study Group16 (VCEG: ビデオ符号化専門グループ)というマルチメディアに関する課題について作業を行う委員会が取りまとめた。今回の標準化までの作業は、VCEGのコーデック専門委員会とISO/IEC MPEGが共同で結成したJoint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC)が行った。
HEVCの開発は2004年のH.264/MPEG-4 AVCが標準フォーマットとして認証された直後から開始されていた。ITUによると現在、H.264は映像業界において80%が採用しているという。ちなみにAVCとHEVCはISO/MPEG側の呼び名であり、H.264とH.265(HEVC)はITU-T側の呼び名である。
HEVCは圧縮能力がITU-T H.264/MPEG-4 Part 10’Advanced Video Coding'(AVC)の2倍、MPEG-2の4倍で、QVGAから8K4K(UHD 8192×4320)まで対応できる。
現在のデジタル放送は、MPEG-2 TSが基本であり、HEVCであれば同じビットレートでHDの4倍の解像度である4K-UHDの伝送が理論的には可能となる。BSデジタル放送の1チャンネル分で現在の4倍の高画質データが十分送信できる。
HEVCはメインプロファイルで8ビット4:2:0、メイン10プロファイルでは10ビット、および静止画符号化ではイントラフレームと同様の扱いのメイン静止画プロファイルが含まれる。JCT-VCでは引き続き、12ビット(4:2:2/4:4:4:クロマフォーマット)まで拡張できるよう作業を進めていくという。また3D映像委員会とも共同で、3Dビデオコーデック対応へも研究を重ねていく。
仏ATEME、ブロードコム、サイバーリンク、エリクソン、フラウンホーファーHHI、三菱、NHKなどの企業では既に、HEVCのサンプル値で開発した参考製品を公に紹介しており、商品化するためにもHEVCの標準化を待っているところだ。
HEVCのプロセッサへの負荷はH.264と比較し、エンコードが2倍、デコードが1倍強程度とされている。CES2013での講演にて、クアルコム社のポール・ジェイコブCEOが、同社の最新モバイル用プロセッサSnapdragon 800を例にとり、年内にもモバイルデバイスで4K-UHDのコンテンツを楽しめる環境が整うことを確信している。
放送市場では、AVC-ULTRAおよびXAVCといった4Kに対応できるコーデックが登場してきているが、このコーデックでのコンテンツを既存のファイルベースのワークフローとして賄うには、H.264ベースでは帯域不可がかかりすぎた。HEVCの標準化により、コンテンツ供給側の4K環境も次のステップへと進められる。
(山下香欧)