ESPN 3Dでは、今後増やす中継番組による、現場の3D中継車不足を懸念して、2Dから3Dへ変換するワークフローをMLS(メジャーリーグサッカー)の今シーズンで実施している。ESPN 3Dでは中継も含め、年間140近い番組を放送している。ESPN 3Dが初めてサッカーを放送したのは2011年にさかのぼる。当時はまだ5Dモデルではなく、2D、3Dと現場クルーは2班に分かれていたという。
予算が厳しい現場の多くは、2Dから3Dへの変換が必要な場合、Blackmagic Design(Teranex)やSterGen社のソリューションに頼ってきた。ESPN 3Dは2D-3D変換システム構築について、詳しいことは明らかにしていないが、現場はHDTV(2D)で行い、ブリストル(コネクチカット州)にある放送センターにて3D変換を行っているという。
今までESPNおよびESPN 3Dでは、NEPの3Dフル対応大型トラックSS32とキャメロン&ペース・グループの5DカメラShadowシステムを使い、2D/3Dを融合したプロダクションワークフローを行っていた。Shadowシステムでは、3Dリグに実装した左目用カメラから通常のHDTV放送用フィードをとる。しかし今回、現場は3D機材を一切使わずに2Dワークフローのみで実施し、コスト面からも2Dから3D変換を行うほうが賢明なのかを合わせて検証している。
MLSの現場フィールドには、8台から10台のHDカメラを設置し、また場合によっては、JIB、ステディカム、ゴールラインカムやゴールネットにPOVカメラも設置する。
サッカーのような大きなフィールドで行われる試合の場合、カメラがフィールドから離れていることもあり、各選手のアクションを的確にとらえて臨場感ある立体3Dを生み出すには、非常に難しいテクニックを要する。ESPN自身でも、2Dのようなフラットな映像とならない技術を長い間探求してきているという。また、BCSナショナル・チャンピオンシップ(カレッジフットボール)においては、5Dプロダクションでは賄いきれないほどの大規模な放送となるため、ESPNとESPN 3Dは従来のワークフローをシェアする方法から離れ、2つのプロダクションを使って行っている。
ESPN 3DではMLS今シーズンのうち5月26日までの毎週日曜日に行われる試合をすべて、2Dから3D変換のワークフローで実施する予定。3月3日放送分は、ESPN 3D初のサッカー試合生中継となった。
(山下香欧)