日本では想像がつかないほどアメリカ国民が大熱狂するプロアメリカンフットボールNFL優勝決定戦「スーパーボウル」。アメリカ最大のスポーツ祭典と言っても過言ではない。スーパーボウルが開かれる一週間は「スーパーボウル・ウィーク」と呼ばれ、アメリカ全土はスーパーボウル一色に染まる。今年で49回を迎えたスーパーボウル(Super Bowl XLIX)が2月1日にアリゾナ州グレンデールのフェニックス大学スタジアムで開催された。

今年の放送権はNBCで、試合当日は13時間ほどのオンエアを実施した。スーパーボウル・ウィークではネットワークやローカル局から様々なイベント番組が繰り広げられる。プリゲームからポストゲームまで決勝戦のイベントは長い。プライマリプロダクションのNBCスポーツとNEPは、プリプロダクションを前回の担当から3年越しで企画したという。スーパーボウルの生中継はNFL放送権利を持つネットワークが持ち回りで行う。NBCは2012年に担当し、次回は2018年のミネアポリス開催時となっている。

NBCスポーツは今回のイベント会場外内にオンセットスタジオを2つ設営したほか、フィールドにもオープンスペースのステージやインタビュースペースなどを設置した。スタジアム内には別途Avid編集施設も設けた。

NEPは、最新設備で整えた中継トラックND1を含め13台のリモートプロダクションが出動した(プロダクショントレーラー数は24台)。スタッフは400名以上が現地に派遣された。カメラはプリゲームショーでは26台のソニーHDC-2500(レンズはキヤノンのDIGISUPER)を使い、本試合からはスーパーモーション撮り用ソニーHDC-3300を2台とGVG LDX HSを4台(レンズはキヤノン86×9.5)や、I-MOVIX 4Kカメラを5台(レンズFuji Cinematic 85x300mm)を含めて45台の収録カメラを揃えた。ソニーカメラは3台のクレーンや4台のステディカムにも搭載され、4KカメラはHD(1080i)にダウンコンバートして中継に使ったり、EvertzのDreamCatcherのソースとしてインスタントリプレイで利用した。

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NEPリモートプロダクション

NEPのND1プロダクションユニットはスタジオとの間を光ケーブルで繋いでプロダクション中核の運用を果たしたが、番組によってはカメラソースをNBCスポーツの本施設(スタンフォード、コネチカット州)に伝送してライブプロダクションしている。

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NEP ND1

NBCが2006年から始めた試合直前に放送するプリゲームショー番組「Football Night in America」もオンセットで正午から6時間放送された。今回、NEPのSupershooters 24(SS24)に積んだアベカス社製のプロダクションサーバMiraからオンセットのディスプレイへコンテンツを送出。SS24では全スタジオショーの運用とテープリリースの作業を担う。Miraサーバを現地の運用システムに組み込む案は、Football Night in Americaのテクニカルディレクターからの指示によるものだったという。

NABスポーツはスタンフォード施設にある4室のコントロールルームでMiraサーバ(48チャンネル分)を中核的プロダクションサーバとして活用している。現地とスタンフォードでやり取りが発生する今回の運用では、現地の中継車で違うシステムを使うよりも迅速に対応できる。スポーツ中継では仕込んでおいた素材を急遽新しい素材に入れ替えたり、選手交代などでグラフィックスを変更したりすることは日常茶飯事だ。スタンフォードのグラフィックス部門で作業した素材が送られてきても同じシステムであれば、そのままオンエアできる。スーパーボウル中継ではNABスポーツ施設内でのワークフローを拡張し、WAN経由でSS24中継車と繋いでオペレーションの連携をとった。

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オンセットスタジオ © Abekas Inc,NBC Sports

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「Football Night in America」のホストを務めるのはBob Costas氏 © NBC Sports

NBCの発表によると、今年のスーパーボウルの視聴者数は全米で1億1440万人越えとなり、史上最高の視聴率49.7%を記録した。

(山下香欧)