© フジテレビ
Blackmagic Designの発表によると、現在オンエア中の株式会社フジテレビジョン(以下:フジテレビ)のドラマ「ブスと野獣」の撮影にBlackmagic Cinema Camera、ならびにBlackmagic Pocket Cinema Camera、DaVinci Resolve StudioなどのBlackmagic Design社製品が制作の現場で使用されているという。
「ブスと野獣」はフジテレビが制作し、現在毎週土曜よる11時40分から放送中の連続ドラマ。ブサイクな大学生の男女が主人公で、その2人が恋に落ちた相手がお互いの親友である美男美女。恋愛未経験の2人が協力しあいながら、恋を成就させるべく悪戦苦闘するラブコメディだ。制作およびポストプロダクションは、フジテレビ系列の制作会社である、株式会社バスクが担当している。
撮影監督を務める株式会社バスク貝谷慎一氏は次のようにコメントしている。
貝谷氏:今回は複数のカメラを使いたかったため、Blackmagic Cinema Camera MFT、EFモデル、そしてPocket Cinema Cameraを使用しました。Blackmagic DesignのカメラはLog収録ができるので、日本のテレビドラマでよく使われるシステムカメラと比べて、ハイライトの表現に優れています。例えば、木漏れ日の下で撮影すると、通常のカメラで撮った場合、日陰と日向の陰影の差がありすぎて、ハイライトが飛んでしまいますが、Blackmagic Designのカメラで撮れば、その部分もきちんとディテールが表現できるんです。
AカメラであるBlackmagic Cinema Camera MFTには、Speed Boosterとヤシカ/コンタックスマウントのカールツァイスレンズを装着して使用した。BカメラのEFモデルは、キヤノンレンズを装着し、主に寄りのショットの撮影に使用。Pocket Cinema Cameraの出力はBlackmagic DesignのMini Converter HDMI to SDIを使ってSDIに変換し、Aカメラ、BカメラであるBlackmagic Cinema CameraのSDI出力とともプレビュー用のモニターに送られた。また、モニタリング時にLUTを当てるためにHD Linkが使用された。
貝谷氏:Pocket Cinema Cameraは、大学内のロッカーの中に設置して撮影するなど、このカメラでないと撮れないような使いかたをしました。小型カメラは他にもありますが、画質があまりよくないので使えません。その点、Pocket Cinema Cameraは心配がありません。
Blackmagic Designのカメラを使うことによって演出の幅が広がりました。従来のカメラを使っていたら、予算的に1台のカメラしか使えないところを、3台回せる。さらにダイナミックレンジが広いため、暗いところと明るいところの差が大きいような場面でも照明を焚かずに撮影できてしまうのです。
シーンごとに撮影が終わると、次のシーンの準備中に、撮影で使ったSSDやSDから素材のコピーを取り、DaVinci Resolve Studioにその素材を読み込んで、グレーディングを行った。
グレーディングを担当した株式会社インターセプターの田巻源太氏は次のようにコメントしている。
田巻氏:カメラごとにレンズや絞り値が違ったり、同じカメラでも日の光によって色味が変わるので、その色合わせをしました。場合によっては、DaVinci Resolve 12のショットマッチ機能を使ってある程度色を合わせてから、ショットごとに微調整をしました。全体的な色のトーンを整えるほかに、昼間に撮ったものを夕景に変えたシーンもあります。
現場でのグレーディングのために、可搬性のある機材ラックに、MacProとUltraStudio 4K、SmartView 4K、MultiDockを設置して持ち込みました。SSDの読み込みにはMultiDockを使い、DaVinci Resolveをインストールしたmacの出力は、UltraStudio 4Kを経由してSmartView 4Kでモニタリングしました。
さらに、ショットリストの作成にもDaVinci Resolveを使用したという。
田巻氏:その日撮った素材のファイル名、タイムコード、ショットナンバーなどの情報がすべて一覧で確認できるものを、DaVinci Resolveから作りました。タイムライン書き出しの時にALEを選んでおくと、タイムライン上の各クリップのメタデータを書き出すことができます。それをExcelなどで開くと、一覧表で見られるので、検索もすばやくできて便利です。
同作のプロデューサーである株式会社フジテレビジョン ドラマ制作センターの池田拓也氏は次のようにコメントしている。
池田氏:限られた予算の中で、よい作品を作るために方法を探っていたところ、Blackmagic Designのカメラを使ったワークフローに辿りつきました。今までドラマで使っていたカメラよりも圧倒的にきれいな画で、社内でもカメラは何を使っているのかと問い合わせがあったほか、俳優陣も喜んでいます。また現場でグレーディングすることで、最終のルックをその場で確認できるワークフローは革新的でした。他の番組でもこのワークフローを採用していきたいですね。