DutchView Infostradaで展開するクラウドベースのプロダクションプラットフォーム
英フューチャーソース・コンサルティングの調査によると、放送事業者におけるライブプロダクション環境は今後10年間でIPベースへと移行する。
同社が8ヶ国の大手放送局から、各放送局での放送運用ワークフローでの問題点などを調査し、ライブ制作(ライブプロダクション)環境にIP技術を導入することについて各社の意見を聞いた。IP機器やソフトウェアは15年以上をかけて放送業界に浸透し、今ではファイルベースのワークフローにおいて、世界中で広く採用されている。そして次のITベースのシステムとアーキテクチャが導入される先は、ベースバンドが必要なライブプロダクションになるという。
ライブプロダクションは低遅延で映像・音声信号を直接扱うこともあり、コンテンツ制作の中でも複雑な形態になっているが、調査した30%の放送局ではライブプロダクションにIPを使う環境が整っており、41%は既にIPを導入したライブプロダクションへの移行を進めているという。後者は、オリンピックやワールドカップなど国際的スポーツイベントに関わる放送事業者だ。また、フットボールや野球といった、国民的スポーツ試合やライブショーでのライブプロダクションにも関連する。特に大型スポーツイベントやライブショーの放送環境においては2020年までにIPライブプロダクションへ切り替わるとしている。
EBU(欧州放送連盟)とベルギーの国営放送局VRTらで立ち上げた、国際共同プラットフォーム(Sandbox+)を実装するLive IPプロジェクトにより、VRT施設内に世界初の完全IPベースのライブTVスタジオを設立した
ソニーによるIPライブプロダクション構想
SDIインフラを入れ替えするタイミングでIPに切り替えていくなど、IP移行への基礎が徐々に進められており、その活動を支援するSDI/IP変換システム、映像圧縮と帯域確保技術を、各ベンダーが足踏みを揃えながら広めている。現在、ソニーが進めるIPライブプロダクションをはじめ、オープン規格および標準規格を使うTICOアライアンス、ASPEN(Adaptive Sample Picture Encapsulation)コミュニティ、そして新しいAIMS(Alliance for IP Media Solutions)が存在する。NBCスポーツはIPベースのHDプロダクション施設を2016年2月より運用開始する。設備はSDIをSMPTE2022-6に替え、Evertzやソニーと組んでASPENプロトコルベースで構築している。また大手オランダのメディアグループDutchView Infostradaでは、クラウドを利用したAIMSの新システムで2つのライブ番組の放送を行っている。
TICOアライアンスに加入しているメーカー一覧
ASPENコミュニティに加入しているメーカー一覧
(山下香欧)