海外において、モバイルデバイスのカメラを使うフォトジャーナリストや報道記者は珍しくなくなった。一般的にも、子供の運動会の様子など、日常の動画撮影にしてもハンディカムに替わってスマートフォンで手軽に撮る人も多いだろう。今ではスマートフォンカメラ自身の機能向上と共に4K収録もできるモデルも登場している。
映像を撮影する機能を最大限にするには、露出、ホワイトバランスなどのパラメーター調整がマニュアル制御できることが望ましい。このあたりを解決してくれるアプリとして一翼を担うのはCinegenixのFiLMiC Proだろう。既にモバイルビデオ制作ツールとしてスタンダードなアプリで、ベントレーモーターズのドキュメンタリー作品から、最近ではサンダンスで高い評価を得た「TANGERINE(タンジェリン)」で使用されたことで知られている。
ベントレーモーターズのドキュメンタリー制作背景
タンジェリンのPV
本作の撮影カメラはMoondogのアナモフィックレンズを装着したiPhoneカメラのみ。FiLMic Proツールにてカメラコントロールを行っている。
iOS専用アプリとしてリリースしてしばらく経ったアプリだが、昨年秋にはUHD対応版のバージョン5に合わせて、Android 5.0(Lollipop)のAPIに対応させたAndroid版が登場している。
FiLMiC Proでマニュアル設定ができる基本的なものは、ホワイトバランスや露光、露出、ISO、フォーカスやシャッタースピード、など。最新のiOSデバイスでは240fpsまでのフレームレート可変もでき、エンコードクオリティを変更することも可能(最高1080p@50Mps)。サードパーティのレンズではMoondogのアナモフィックレンズアダプタ(2.40:1)や35mmレンズ、そしてカメラレンズを下向きにしても撮影できるプリズムレンズ「COVRレンズ」に対応する。
ズームコントロールでは、最適なズームクオリティを色で指標し、プリセットのズームでは倍率を表示してくれる
フォーカスと露出のレティクル調整がスムーズになり、直接タップすることでピント合わせや露出をロックすることができ、フォーカス・レティクルとターゲット十字で今までよりもフォーカス精度を上げることが可能
新しいピークリミッターや音声処理の最適化がなされた
一番の醍醐味は画角をシネマスコープ(2.59:1)やスーパー35(2.39:1)といったサイズまで対応していることだろう。最新のiOS9対応版5.1では、ライブレコーディングをレジュームする機能が追加された。つまり停止を一時停止として見なし、レコーディングを再開する機能で、自動で前後をつなぎ合わせる処理が行われる。
またMoondogのアナモフィックレンズをスマートフォンにマウントして撮影した場合、プレビュー画面でデスクイーズして再生することができるようになった。
Moondogのアナモフィックレンズ
ケースと一体型になったCOVRレンズ
1月にリリースしたiOS用5.1ではApple Watchに対応できるようになった。撮影モードのほか、タイムコードカウンターやオーディオメーター、そしてバッテリーとストレージレベルのモニターが付く
FiLMiC Proは10ドル(9.99ドル)。App StoreとGoogle Playより販売されている。
FiLMiC Proを使ってiPhone 6s Plusで撮ったミュージックビデオ
(山下香欧)