NASA.gov Videoより
NASAは、宇宙打ち上げシステム(SLS)のロケットブースターテストの機会に、開発中(プロトタイプ)の「High Dynamic Range Stereo X(HiDyRS-X)」というスーパーカメラシステムの能力を試すテストを行い、その結果を公表している。
NASA.gov Videoより上:従来のカメラシステムの場合
下:HiDyRS-Xシステムの場合
HiDyRS-Xシステムは、同時に複数の露光でハイスピード&HDRの映像を撮ることができ、NASAの「ゲームチェンジング・デベロップメント・プログラム」の一つとして開発されている。ゲームチェンジング・デベロップメントは、実現や既存の概念を大転換するような新科学的・技術的知見に基づく革新的技術を創出していくというような意味だ。
2014年5月に公表されたHiDyRS-Xプロジェクト資料の一部
従来のハイスピードカメラは一度に1フレームを撮影するが、HiDyRS-Xでは複数のハイスピードおよび露光を同時に収録することができ、スローモーション映像で細部を視認することができるという。今までは、小規模ロケットエンジンのテストでハードウェアテストを行っており、今回のような、5.5トンの噴射剤を燃焼させ160万kg以上のスラストを発生させる大規模なブースターでのテストは初めてであった。
HiDyRS-Xプロジェクトは、業界リーディングイノベーターと一緒にハードウェアを開発できるよう設計された、NASA宇宙技術ミッション本部のキャリアイニシアティブ(ECI)の一環として始まった。現在、ゲームチェンジング・デベロップメントプログラムに移管され、プロトタイプの完成を進めている。
QM-2 © NASA /ビル・インガルス
今回の巨大ロケットブースターのテスト(QM-2、モーター資格テスト2)は、2018年後半に実施する試験飛行前の最終テストで、ユタ州のオービタルATKの試験施設で実施された。あわせて行われたHiDyRS-Xのテストは、ブースターの威力のおかげでいくつか障害が発生し、不完全な結果で終わっている。しかし、数分間の記録は収めることができ、今までのテストでは観ることのできなかった映像シーンを収めることができたという。
NASAの報告ページで主任研究員ハワード・コンヤーズ氏は、「タンブリング地上支援ミラーブラケットとプルームの渦を視認できたことに驚いている。そして通常のカメラでは観測不可能だった、排気プルームとノズル、そしてノズルファブリックがジンバルパターンを通過していくのがはっきりと確認できる」と説明している。
(山下香欧)