1,700社以上の出展社に103,000人という昨年よりも多い来場者数を記録した今年のNABshowでは、放送業界において超高解像度映像の魅力を引き出す技術や、これらに対応できる次世代デジタル放送方式の取り組みをみることができた。そして、それらの規模を超えた宇宙から4K映像をライブで地上に届けるという史上初の実証実験がNAB会場で実施された。
NABオープニング基調講演では、ゴードン会長のスピーチの冒頭で同イベントについての紹介が行われ、事前に4Kカメラで収録したペギー・ウィットソン船長からのコメントもスクリーンにて紹介された。女性として史上初の国際宇宙ステーション(ISS)の船長(コマンダー)を務めた経験のあるウィットソン宇宙飛行士は、今回で3回目の長期滞在を続けており、イベント直前の24日をもって宇宙滞在最長記録を更新した。9月の帰還には650日以上の滞在日を記録する。余談だが、過去の米国での記録はJeff Williams氏が保有する534日2時間48分。
NASAチャンネル
2017年4月26日10時30分に始まったスーパーセッション「Reaching for the Stars:Connecting to the Future with NASA and Hollywood(星への到達:NASAとハリウッドの未来へのつながり)」はNAB、アメリカ航空宇宙局(NASA)、アマゾンウェブサービス(AWS)の共同制作のもと、今年のNABshowで注目されたイベントの1つとなった。
セッションの冒頭では、ISSから4Kカメラで撮影されている第51次長期滞在中のペギー・ウィットソン宇宙飛行士とジャック・フィッシャー宇宙飛行士が会場内のスクリーンに投影され、ラスベガスコンベンションセンター(LVCC)会場ステージに登壇したAWS Elementalのサム・ブラックマンCEO(および共同設立者)とリアルタイムで対談した。ISSからの4K映像がスクリーンに映し出されたとき、会場からは史上初の瞬間を祝うように大きな拍手と歓喜の声が湧き上がった。
ISS内で撮影されている4K映像はリアルタイムで伝送、地上で4Kのままパブリックビューイングすると同時に、セッションの模様を会場から4Kライブ配信し、エンドトゥエンドのライブ4K配信およびマルチスクリーン配信向けのHEVC方式によるクラウドベースのワークフローを実証した。
これらを実施する前段に、NASAとAWS Elementalは長期間にわたり宇宙から4Kビデオをライブ配信する計画に取り組んできた。昨年12月に、NASAによるハードウェア基準にパスしたハードウェアコンポーネントに搭載したAWS Elementalのソフトウェアエンコーダ、および新しいRED EPIC DRAGONカメラシステムがHTV6(こうのとり)に積荷されて種子島から打ち上げられ、ISSへ運び込まれている。
今回のイベントでは、ISS内で設置したRED EPICカメラで撮影しているフィードを、AWS Elemental LiveエンコーダでH.265/HEVCにエンコードし、ISSから地上のジョンソンスペースセンター(JSC)にUDP転送した。JSCでは受信した4Kビデオストリームをデコードし、オンプレミスのAWS Elemental Liveシステムで別ラインのオーディオフィードと合わせ、20MbpsのH.265/HEVCに再エンコード、そして現地のネットワーク事業者経由で衛星Galaxy 17にアップリンク、LVCCへ伝送した。
LVCCに配置したSNG中継車で受信し、スーパーセッションの会場内まで光ネットワークで伝送して会場の4Kカメラソースと共にライブプロダクションしてクリスティ製4Kプロジェクターで投影した。ライブ4K配信向けには、LVCC施設内に設置したAWS Elemental LiveシステムからHLSストリームをAWSクラウドに送り、IP HTTPライブストリーミング(HLS)の出力をAmazon CloudFrontコンテンツ配信ネットワーク(CDN)へ配信している。
エデュケーショナル番組にもストリーミングされることもあり、ISSから3つの無重力環境でしか得られないデモンストレーションを披露した。地上から400kmほど離れているISSとの双方向のやりとりからうかがうと、遅延は約10秒であった。
スーパーセッションでは、ISSで任務を果たしたRED EPICカメラ第一号機がRed Digital Cinema Cameraのリーダー、ジャレッド・ランド氏に戻されるシーンも
同セッションの模様は、オンデマンドビデオとして4Kで視聴可能。
(ザッカメッカ)