バスケットの撮影を通じてα9のブラックアウトフリーやAFの性能を体験する

ソニーは、5月24日に東京都江東区のスポーツ施設で同社のソニー・イメージング・プロ・サポート会員を対象とした体験イベント「α9プロフェッショナル向け撮影体験会」を開催した。α9は2017年5月26日発売で、希望小売価格はオープン、市場想定価格は税別500,000円前後(ボディのみ)。

同イベントは、スポーツ施設のコートにてバスケットボールの選手がプレーを行い、その様子をα9の高速な連写や動体追従性が特徴のAFを活用した撮影体験できるというもの。ソニーは2016年11月に都内の会場を借り切ってプロフェッショナル向けのデジタル一眼カメラαの展示会を行ったことがあるが、新商品をメインにスポーツ選手のような被写体を撮影できる体験会は今回が初めてだという。

コートでは国内リーグの選手が実際にプレーを実演

バスケットコートの周りには、先日発表されたばかりで7月に発売予定の「FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS」や「FE 70-200mm F2.8 GM OSS SEL70200GM」「FE 24-70mm F2.8 GM SEL2470GM」などのズームレンズとα9を組み合わせた機材がテーブルの上にズラリと並べられていて、自由にカメラを選んでプレーの様子を撮影ができるようになっていた。自身でSDカードを用意すれば撮影データを持ち帰ることも可能。

7月に発売予定のGマスターの超望遠ズームレンズ「FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS」も豊富に取り揃えられていた

α7R IIやα6500などの発売中の製品も用意されており、こちらも体験が可能。また、300mm F2.8や500mm F4といったEマウントにはラインナップされていないAマウントのレンズも展示されていた。5月25日にアップデートが発表された、EマウントカメラボディにAマウントレンズを装着するための35mmフルサイズセンサー対応のマウントアダプター「LA-EA3」も展示されており、さっそくα9で試せるというのも貴重な機会であった。

同社のレンズ交換式一眼レフカメラのAマウントのレンズも展示。アップデートされたマウントアダプタを使って体験が可能

α7R IIやα7S II、α99 II、α6500など、既存αモデルもα9と比較できる形で展示

ブラックアウトなしのEVFでしっかり目視できるというのが利点

実際にバスケットのプレーを通じてα9を使ってみると、20コマ/秒をブラックアウトフリーがいかに驚異的な機能なのかがわかる。また、AFの性能はα7シリーズよりも向上されているうえに、瞳AFの効果も高いことも実感した。そのあたりの具体的な感想として、スポーツカメラマンとして活躍しており、すでにα9の使用経験もある小橋城氏の話を聞くことができたので紹介しよう。

スポーツカメラマンとして活躍中の小橋城氏

――α9をスポーツ撮影で使ってみて、特に気に入ったところというのはどこでしょうか?

小橋氏:EVFを使うのはα9が初めてでした。正直なところ開発当初はモニターを見ているような違和感がありました。しかし、順次改善されてきて現在ではEVFでもしっかり被写体が追えるようになっています。

一方、従来のOVFは、現在各社から一眼レフカメラのフラグシップモデルとして約12コマ/秒や約14コマ/秒のモデルがリリースされています。しかし、ミラーの明滅が目に入ってきて酔ってくるような感覚があったり、被写体が見えなくなってしまうこともあります。やはりブラックアウトなしのしっかり目視できるという利点がEVFにあると思います。ミラーレスカメラはソニー以外からもさまざまな機種が発売されていますが、α9はミラーレスで20コマ/秒、ブラックアウトフリーという画期的な仕様で革命を起こすような機種だと思っています。

――無音・無振動のサイレント撮影はどのように感じられたでしょうか。

小橋氏:やはり静かにしなければいけないというスポーツがあります。テニスやゴルフで、カメラマンはシャッター音を気にせずに撮影に入れるというのはすごくいいと思います。例えば、フィギアスケートのあるアイスショーの話ですが、プレス席が一般の観客席の隣にある時がありました。そのプレス席で一眼レフカメラをカメラマンが数十人の束にって使うと凄い音になります。その音が観客からの苦情になったということがありました。あとは、テニスのサーブの時など、レフリーがカメラマンに注意しているところを見たことがあります。

――α9の連続撮影時はおよそ12秒間でバッファがフルになります。スポーツの内容にもよるでしょうが、実際のスポーツの撮影現場ではどれぐらい連続撮影を活用するようになるのでしょうか?

小橋氏:いくらα9が20コマ/秒の仕様であってもシャッターを押したいときにしか押しません。連続撮影によって今まで見えない世界観が撮れるかもしれませんけれども、「押しすぎる=いらないものがいっぱい増える」ということになります。α9を使っていても撮りたいときに1枚1枚撮っていくという感覚は変わりません。

例えばバスケットのゴールの瞬間ですが、シュートを始動から撮り続けているかというとそうでもありません。自分は一番どこを切り取りたいか?というところもをちゃんとわかっています。そこを粘ってシャッターを押す、という感覚です。ただし、20コマ/秒によってシュートをしたボールの軌道の位置に幅が生まれ、セレクトは広げられるようになると思います。

体験会の会場のコートには小橋氏がα9を使って撮影した作品も多数展示されていた

画素加算のない全画素読み出しによる4K動画を生成可能

ここまで紹介した通り、α9はスポーツなどの撮影シーンでの利用を前提としたカメラだ。しかし、読者の方はα9の動画撮影の機能も気になるところであろう。今回の体験会を機会に、α9の動画機能についてもソニーに聞いてみた。

結論からいうと、α9の動画機能はα7S IIやα7R IIから進化はなく、α7S IIやα7R IIに搭載されていたS-Logがα9では搭載されていないのはマイナスポイントといえるだろう。α9は先月行われたNABに展示はされなかったが、その事実からもα9は動画向きではないというソニーの態度が伺える。

ただし、純粋にフルサイズ領域からの4Kの撮って出しの映像で比べるならば、α9はα7S IIやα7R IIよりもクオリティが高い映像になるという。

  • α7S II→1200万画素センサーのフルサイズ領域から全画素読み出しで800万画素の4K動画を生成
  • α9→2400万画素センサーのフルサイズ領域から全画素読み出しで800万画素の4K動画を生成
  • α7R II→4000万画素センサーのフルサイズ領域から画素加算で800万画素の4K動画を生成

α9は、4Kに必要な画素数の約2.4倍の情報量を収縮するために、同じ全画素読み出しで4Kを記録するα7S IIより綺麗な4K画像になるという。

このほかにも、α9は動画撮影時でも「ファストハイブリッドAF」と呼ばれる像面位相差AFとコントラストAFをダブルで使うことができる機能を搭載しており、コントラスト検出方式のみのα7S IIよりα9のほうが上になるという。また、α6000シリーズに搭載されていたフォーカスのピントをゆっくり合わせるか、早く合わせるかという設定を搭載したり、動画撮影時のフォーカス位置選択/変更をタッチパネルで指定することができる。α9は、液晶モニタの端側であってもフォーカスを指定することができてとても便利だ。

AFエリアの選択にタッチパネルを使用できる。像面位相差AFが画面のほぼ全域をカバーしているので、タッチパネルのAFの指定もほぼ全域を指定可能

αシリーズの動画機能に関しては、S-Logが使えるα7S IIやα7R IIのほうが機能は充実しているといえるが、報道やスポーツカメラマンなど速報性を重視されるような現場でその場で綺麗な動画を撮ってすぐに納品すしたいといったケースもあるだろう。そのようなシーンにα9の動画機能は最適で、十分なクオリティを実現できるはずだ。