英国FilmLight製品の扱うフィルムライト株式会社は7月20日と21日の2日間、東京都中央区のテクノハウスで技術セミナー「誰も教えてくれなかった〇〇セミナー」を開催した。講師は同社代表取締役の松井幸一氏。
同社はカラーに関するセミナーを不定期に開催しているが、今年3月に行われたセミナーでは1時間の授業時間に複数の内容を詰め込みすぎたという。その反省から、今回は一日を6時限に分割して項目ごとに時間を分けて行った。セミナーの内容は以下の通り。
- 第1時限 午前10時~:アナログからディジタル、ファイルベース
- 第2時限 午前11時~:圧縮と非圧縮、コーデック
- 第3時限 午後1時~:RAW/Logの利点と欠点
- 第4時限 午後2時~:カラースペースとLUT・CDL
- 第5時限 午後3時~:画質を高める5要素とHDR/WCG
- 第6時限 午後4時~:カラーグレーディング入門
各回の定員は30名でセミナーを発表してから1週間で満席になり、急きょ補助席を追加して定員を増やしたという。当日はテーブル席のほかに通路に椅子も用意して行われた。
7月20日に行われたセミナーのハイライトを紹介をしよう。第3時限の「RAW/Logの利点と欠点」では「RAWとは何か?」から「RAWのメリット」「ダイナミックレンジ」などの専門用語についての解説をした。
その中で特に興味深かったのは、Baselightを使ってハイライトのオーバーを修復するデモだ。Baselightの「Base Grade」と呼ばれる新機能でハイライトを100%以内に収める実演と共に、同じ素材を使ってDaVinci Resolveでも実演をした。DaVinci Resolveではゲインを下げてオーバーしたハイライトを修正するが、ゲインは画面全体に影響してしまう。しかし、BaselightのBase Gradeは、ハイライトのみやシャドーのみ別々にコントロールが可能で、全体のトーンを維持したまま修正が可能とアピールしていた。
Baselight 5.0ではBase、Exposure、Tintの組み合わせによって色を調整する新機能「Base Grade」が搭載された
また、RAWとlogはまったく異なるものだが、RAWとlogが同じものであるとか、似たものと誤解されることが多いという。そこで「logとは何なのか?」についても解説をしていた。
第4時限の「カラースペースとLUT・CDL」では、カラースペースとは何なのか?について詳しく解説が行われた。ここの講義で印象的だったのは、以前までは「素材のカラースペース」と「納品のカラースペース」「通常のシステムカメラ」はRec.709に対応しており、カラースペースを考える必要はなかったとのことだ。現在はカメラの数だけカラースペースが存在し、出力する側にはテレビ放送の「Rec.709」、Webの「sRGB」、デジタルシネマの「DCI-P3」などの種類があるという。
上の「S-Log/S-Gamut」「Log C/Wide Gamut」「Canon Log/Cinema Gamut」「RedLog/RedColor2」はカメラごとのカラースペース。下の「Rec.709」「sRGB」「DCI P3」は表示側のカラースペース
第6時限のカラーグレーディング入門では、色に関する基礎知識や映画で使われるカラーセオリーの紹介や実際にBaselightを使ったデモなどが行われた。
ここの講義ではカラーコレクションとカラーグレーディングの意味の違いについても紹介をしていた。カラーコレクションは単純に日本語翻訳すると色補正で、ビデオの制作の過程で色を修正することを指す。RGBのコントロールで正規の100%を超えていないかや暗部が潰れないか、ホワイトバランスがとれていない状態を修正するのをカラーコレクションと呼んでいる。
一方、カラーグレーディングとは、色をコントロールすることによって映像の質を上げることを指す。ただ、カラリストの人たちにカラーグレーディングとカラーコレクションの違いを聞くと、両方関わっているので同じではないか?という話もあると紹介をした。
色によって引き起こされる連想作用を解説
セミナー終了後に松井氏に、メインのソリューションであるBaselightの近況についても聞いてみた。競合製品のDaVinci Resolveは統合的な方向に進化しているが、Baselightはグレーディングオンリーのシステムではあることが評価されてきているという。海外ではDaVinci Resolveからの乗り換えが増えてきているとのことだ。今後のフィルムライトが主催する技術セミナーやBaselightに関しては、フィルムライト株式会社のFacebookページをチェックするとよいだろう。