米Appleは、今後12ヶ月でオリジナルコンテンツ制作に約10億ドルを投資する計画があるという。AmazonやNetflixといったオリジナル番組を提供するビデオ配信サービスを意識し、競合戦略の強化を見せた。同社はApple MusicやApp Storeなどのサービスを含むサービス事業について、2020年までに収益を倍増させる計画があり、オリジナルコンテンツ制作への投資でビデオの普及を加速させる。
Appleは6月に「Breaking Bad」「Better Call Saul」「The Crown」などのヒット番組を生んだソニー・ピクチャーズ・テレビジョンの共同社長であるジェイミー・エルリヒト(Jamie Erlicht)氏とザック・バン・アムバーグ(Zack Van Amburg)氏を雇用した。彼らが率いるロサンゼルスに拠点を置く新しい番組制作チームが、Apple Musicや事業計画にあるビデオストリーミングサービスのテレビ番組や映画の制作を行い、年末までに10作品ものオリジナル番組をリリースする予定。
同社は今春、2つのテレビ番組のスピンアウトバージョンをiTunesで配信することを発表した。そのうちの1つである、アプリ開発者のオーディション+リアリティ番組「Planet of the Apps」は6月6日から、そしてトークバラエティ番組「レイト×2ショーwithジェームズ・コーデン」の「Carpool Karaoke」は予定より大幅に遅れながら、8月1日より配信を開始している。
■Planet of the Apps Trailer
■CarPool Karaoke trailer
Appleはさらにコンテンツ開発展開を促進する。8月中旬にはWGN Americaケーブルネットワークの社長を務めるマット・チェーニス(Matt Cherniss)氏を雇い、米国を担当するチーフエグゼクティブに任命し、コンテンツ制作チームの構築を強化した。チェーニス氏が米市場を担当し、番組制作の共同責任者エルリヒト氏とアムバーグ氏は国際側に注力する。
Appleが計画している約10億ドルという予算は、NetflixとAmazonがオリジナルコンテンツ制作に注ぐ予算よりも大幅に少ない。Netflixは2017年のコンテンツ制作に60億ドルを投資する計画であり、Amazonによる予算は、JPモルガン・チェース・アンド・カンパニーのアナリストは約45億ドルと見積もっている。HBO(タイムワーナー)は、「ゲーム・オブ・スローン」の1エピソードに1000万ドルを制作費に充てたことも報告されており、今年度は25億ドルをオリジナルコンテンツ制作にかける。
以前、iTunesでの収入の大部分は映画レンタル販売が占めていた。しかしNetflixやAmazonといったサブスクリプション制ストリーミングサービスの登場で、ユーザーはiTunesの映画レンタル販売から離れていった。ウォールストリートジャーナルの報道によると、iTunesが50%を占めていた映画レンタル販売の市場シェアは、2012年には20~35%に低下した。反面、昨年度における市場全体のデジタル映画レンタル販売は、Appleが市場シェアを失ったにもかかわらず、12%増の53億ドルと報告されている。Appleはオリジナルコンテンツを加えることでサービス事業を促進し、ジャンルを広げたサービス展開が行えることで、Appleのエコシステムを広げようとしている。
(ザッカメッカ)