キーノートで人口知能の「Adobe Sensei」で実現するデザインワークフローを披露

アドビは11月28日、パシフィコ横浜でクリエイティビティカンファレンスイベント「Adobe MAX Japan 2017」を開催した。米国の「Adobe MAX 2017」は3日間開催で参加者数が1万人を超える世界最大級のクリエイティブカンファレンスとして有名だが、「Adobe MAX Japan 2017」も負けてはいない。国内のAdobe MAXは1日間開催だが、約40のセッションやワークショップに3,000名以上のクリエイターを集めて行われた。

Adobe Maxはキーノートでスタートする。今年は昨年より会場が約2倍広くなり、横幅25メートルのスクリーンに驚く。

キーノートの会場。大型スクリーンに圧倒される

キーノートは、佐分利ユージン社長の挨拶でスタート。その中で、「アドビコミュニティエバンジェリストプログラム」と呼ばれる日本独自のプログラムを開始を発表し、8人のエバンジェリストを紹介した。ビデオ部門はPRONEWSの連載「All About Premiere Pro」でもお馴染みで、アドビ製品の勉強会を積極的に開催している山下大輔氏が就任した。

社長の挨拶の中でアドビ公認の8人の外部エバンジェリストを発表

続いて、アドビの各製品担当者がAdobe Creative Cloudの新製品や新機能を紹介。各製品紹介の中で特に気になったのは、多くの製品で人工知能の「Adobe Sensei」が中核を担う存になりつつあるところだ。

例えばアドビの岩本崇氏は、iPhone/iPad用キャプチャーアプリ「Adobe Capture」にフォントを検索する「文字」機能を搭載したことを紹介。デモでは、スマートフォンのカメラでドリンクのラベルを撮影して、そのラベルのフォントをAdobe Senseiが1万以上あるTypekitの中から近いものを探す実演した。

「Adobe Capture」のアップデートが行われ、「文字」の機能が追加された

スマートフォンの「Adobe Capture」からドリンクのラベルを撮影し、文字を選択

Typekitフォントの中から近いフォントを探し出してきてくれる

アドビの栃谷宗央氏は3Dの知識なしでも2Dのフォトリアルな作品の制作が可能な新ソフト「Adobe Dimension」を紹介。特徴は、Adobe Stockに素材が準備されており、モデル、ライト、マテリアル、3Dのモデル、ライティング、質感といった素材をダウンロード可能で、Dimensionの中のアセットパネルから入手ができる。また、DimensionもAdobe Senseiと連携をしており、背景に素材を入れた際に、位置合わせ、ライティング、環境光、反射をAdobe Senseiが自動的に行ってくれるという。

「Adobe Dimension」は、Adobe Stockからモデルデータをダウンロード可能

Dimensionは3D制作経験のないデザイナーでも3D表現をAdobe Senseiで支援してくれる

栃谷氏は続いて「Adobe Photoshop Lightroom CC」を紹介。Lightroomのデモで特に目を引いたのは4,000枚以上の写真から「鳥」という日本語のキーワードで検索を行い、鳥をの映っている写真を抽出するデモを行った。Adobe Senseiの技術を使えば、タグの情報がなくても検索をすることが可能であることを紹介した。

Adobe Photoshop Lightroom CCにはAdobe Senseiに基づく検索機能を内蔵。「鳥」と入力をすれば鳥の写真だけが表示される

ビデオ製品を担当する古田氏は自身のデモの中で今回のAdobe Creative Cloudから製品版になった「Character Animator」を紹介。Adobe Senseinの技術によって母音や死因の種類に合わせた口の動きがより正確になったことを紹介した。

Adobe Senseiを利用したリップシンクアルゴリズムを搭載。発声された音に対応する正しい口の形状が正確に選択される

最後にCCエバンジェリストの仲尾氏が、アドビのラボで研究開発中の次世代のAdobe Senseiを使ったテクノロジーをプレビューした。次世代のPhotoshopのプロトタイプにビジュアルスケッチを読み込み、Adobe Senseiで解析行って最終的にはポスタービジュアルを実現するデモを行った。

最初に用意したビジュアルスケッチ

ラフ画の解析を実行すると、コンセプトや男性、女性、宇宙船、惑星、星などの要素の情報を解析し、その結果を元に画像を検索。光の強さや星の数といった要素をスライダーで設定して検索結果を絞り込んで完成させることができる。履歴がオブジェクト式に記述されているので、完成後でも初期に戻って女性のビジュアルを男性に変える作業も瞬時に実現できることを紹介した。

このデモをみると、「将来、クリエイティブな作業はAIが作業してクリエイターは不要になる」と思われるかもしれないが、仲尾氏はAIを使うことによってクリエイターはさらにクリエイティブに集中ができるようになるという。いずれにせよ、Adobe Senseinはクリエイティブの現場に欠かせないものになりそうだ。

ラフ画から操作だけで壮大なポスターが完成。さらに、完成してから作業を辿って戻って、女性を男性に変えたバージョンも制作してみせた

メイン会場の見逃せないブースをレポート

Adobe MAXの見どころはセッションやワークショップだけではない。展示ホールのメイン会場には、楽しく過ごせる展示ブースや工房などが多数出展していて、会場を見て回るだけでも楽しめるようになっている。

お昼のセンターステージには大人気の漫才コンビ「ザ☆健康ボーイズ」がステージに登場するシーンも。盛大にすべっていたのが印象的だった

展示会場の目玉のブースは、アドビグッズの販売を行う「MAX STORE」だ。前回よりも大幅にグッズを増やして今年も出展。お昼の販売開始と同時に長蛇の列ができていて、列を整理するスタッフは「1時間待ち」とアナウンスをしていた。

MAX Storeは物販スタートと同時に待機列が大変な長さになっていた

Adobe MAXは国内でアドビグッズを入手する数少ない機会で、クッションやマグカップなどをラインナップ

展示会場には8社のスポンサーブースが出展。そのうちの1社のティー・エム・エスブースではCinema 4Dでお馴染みのマクソンのIllustratorプラグイン「Cineware for Illustrator」のデモを行っていた。米国のAdobe MAXでお披露目をした製品で、国内のイベントでは初公開だという。

これまでは、Illustratorで2Dのパッケージデザインをしたら、Cinema 4Dなどの3Dソフトで読み込んで作業をするという流れが一般的だったが、Cineware for Illustratorを使えばIllustrator上で3Dのパッケージデザインができるというものだ。

Adobe Illustrator CC 2017で直接3Dオブジェクトを追加や編集が可能になる「Cineware for Illustrator」プラグイン