今年で5回目を迎えた「ライブ・エンターテイメントEXPO」は、昨年同様千葉・幕張メッセにて2月21~23日の3日間開催している。主催者や制作会社がコンサート、フェス、スポーツ興行などを開催する際に必要な機材やシステムの展示会で、「ライブ配信・収録」や「演出・機材」などのゾーンでは毎年映像業界で機材を取り扱う企業が多数出展している。
また、同時開催展として「第1回 スポーツビジネス産業展」も開催された。同展示会は、「クラブ経営」、「ファンサービス」、「選手の育成」、「最新テクノロジーやITを活用したトレーニングやスカウティング」、「スタジアムソリューション」を求めて、プロスポーツ、トップリーグ、トップアスリートなどが導入や選定のための商談を目的としたスポーツビジネス産業の専門展となっている。キヤノンやアスク/ディストーム、ソリトンシステムズなども出展しており、今後注目の分野と言えるだろう。
初開催の「スポーツ ビジネス産業展」
■キヤノン
キヤノンブースでは、スポーツ関係者やスタジアムなどの施設関係者、スポーツ映像制作者などを対象にした、スポーツビジネスに関連する映像技術・ソリューションを展示。開発中の自由視点映像や、8Kカメラシステム、小型多目的モジュールカメラ「MM100-WS」などが展示されていた。
開発中の自由視点映像生成システムを用いて制作したサッカーの試合映像を上映。会場ではタブレットを用いたタッチ&トライができ、審判やゴールキーパーなどの視点で観戦可能(写真はゴールキーパー目線の映像)
どの選手がどの方向を向いているかも表示できる
参考出展として、8Kカメラ1台で撮影した映像に、視聴・撮影環境に合わせた変換を施し、3面に出力する映像空間ソリューションを紹介。3面大型スクリーンの視野を覆う臨場感映像と音響が合わさり、その場にいるような空間を再現
小型多目的モジュールカメラ「MM100-WS」を参考展示
MM100-WSとソリトンシステムズ社のZao-Sを組み合わせたモバイルライブ中継。競技の審判が装着することで、迫力ある映像をライブ中継が可能だとしている
■アスク/ディストーム
同社が取り扱うNewTek社のライブ映像制作システムとして、TriCasterや3Playなどが展示されていた。
TriCasterは、複数のカメラで撮影した映像を取り込んで、映像合成機能、レコーディング、ライブストリーミング、ソーシャルメディアパブリッシングなどのライブ番組制作には欠かせない様々な機能やワークフローを持つ映像制作システム
国内初展示となるリプレイ・スローモーションシステム「3Play 3P1」は、2チャンネルの独立したプレイリストからのリプレイとスロー再生ができるプロダクションサーバー。ゲーム中にスローモーションやリプレイ、ハイライトシーンをスタジアムのモニターや視聴者に見せることができ、ソーシャルメディアにも画像を配信可能
■JVCケンウッド
JVCケンウッドブースでは、競技団体やスポーツ施設運営者に向けて、より効率的なライブ映像の制作・表示を実現するスポーツエンタテインメント・ソリューションや、アスリートのパフォーマンス向上をサポートするスポーツコーチング・ソリューションを展示。競技会場のショーアップを演出する場内エンタテインメントシステムとして、GY-HM200BBとPTZカメラKY-PZ100をStreamstar社製ライブプロダクションシステムと連動させ、ライブコンテンツを制作し、アリーナ・体育館などの大型ディスプレイでの使用を想定したブース構成となっていた。
撮影クルーの省人化と設営工数削減を実現する「リモートプロダクションシステム」。スタジアムなどの遠隔地に設置した当社製カメラシステムを、スタジオにあるStreamstar社製ライブプロダクションシステムからネットワーク経由でリモートコントロールすることにより、撮影クルーの省人化と設営工数削減を実現。ブースでは外部よりライブ中継デモンストレーションを行っていた
株式会社スポーツセンシングが開発したスコアアプリと、スコア重畳機能搭載カメラ「GY-HM200BB」を組み合わせてモニターにスコアを表示。アプリのスコアがモニターのスコアボード、カメラのスコアと連携するため、ワンマンオペレーションでも簡単に運営可能だとしている
GY-HM200BBとスコアアプリを連携させることで、カメラの映像にスコア表示が可能
■ソリトンシステムズ
ソリトンシステムズブースでは、スポーツイベントにおける中継や、会場警備等でのデモンストレーションを行っていた。
モバイル回線を利用して高画質の動画をライブ中継するSmart-telecaserシリーズの最新モデル「Zao-S」
ドローンや無人ロボットにも搭載できるような設計思想や、従来の受信機で受信した映像を配信する機能も追加されている
■IMAGICAWEST
IMAGICAWESTブースでは、「Motion Archive」の体験が行われていた。Motion Archiveは、スポーツや伝統芸能などの資料は絵から写真、映像とその時代による最先端技術をもって記録されてきたものを三次元情報として遺すための技術。アスリートや演者の所作をモーションキャプチャで記録し、身体データを3Dスキャンして3DCGを構築。VRデバイスでプレビューする事で二次元の映像では不可能だった細やかな動きを確認、保存する事ができるとしている。
また、三次元データを余す事なく記録することで、将来的にその時代の最新技術に応じた、より高精細な視聴が可能になる。同プロジェクトはIMAGICAWESTのGen8 -GENERATE-が行っている。Gen8 -GENERATE-は、ハイエンド映像制作のノウハウと最先端テクノロジーを組み合わせ、「驚き」「感動」「オモシロイ」をGENERATEするクリエイティブ集団だ。
第69代横綱白鵬関の偉業を後世に残すためのプロジェクトの一環として、Motion Archiveが採用された。ブースでは制作された実際の映像を体験できる
■NGC
NGCブースでは、先日発表されたKANDAOの360° 3D撮影が可能なVRカメラ「Obsidianシリーズ」を展示。
Obsidianシリーズは高精細な映像撮影を目的として開発された「Obsidian R」と、スポーツなどの動きのある被写体を撮影することを目的として開発されたObsidian S「Obsidian S」の2モデル。Obsidian Sでは4K×4Kの120fpsでの撮影が可能。VRライブ配信にも対応しており、PoEケーブル1本をカメラに接続することで簡単にVRライブの配信が可能
イベント業界の“今”がわかる「ライブ・エンターテイメントEXPO」
■スカパー・ブロードキャスティング
4K-HDR/HD対応の大型中継車「SR-1」及び、大型中継支援車「SA-1」を展示。これまでスポーツや音楽等、様々なコンテンツで中継制作の実績がある。
中継車の制作室。様々な出力フォーマットを適正に管理を行なうQC(Quality Check)卓を設置。SDR/HDR信号及び、HD/4K信号の品質管理が同時に行なえる。スイッチャー卓は可動式となっており、フレキシブルな制作スペースが構築できるとしている
中継車内のシステム信号を4K-HDR S-Log3/BT.2020に統一。各種変換機能を有するマルチフォーマットコンバーターを搭載することで制作用途に応じて、4KおよびHDへの解像度変換(4K⇔HD)、放送用HDR規格に合わせたガンマ変換(SDR⇔HDR、S-Log3・PQ・Hybrid Log Gamma)、色域変換(BT.709⇔BT.2020)などのフォーマットの出力が可能
■シネ・フォーカス
ブース内には大型の特設シアターが設置されており、シアター内で3Dホログラムを活用したステージデモが行われていた。同社が代理店を務めるMUSION3D社のMUSION 3Dホログラムシステムを活用した大型ステージ演出向けの3Dホログラムソリューションや、特別コラボレーションとして同社の3Dホログラム技術とカドー空気清浄機が「目に見えないもの」をキーワードに新しいビジネスプレゼンテーションが行われていた。
3Dホログラムディスプレイ3「dreamoc XL3」。3方向から同時に立体的な映像を鑑賞可能なパッケージタイプの3Dホログラムディスプレイ。会場ではコップに水が入っており、そこにクラゲの映像を投影していた
■映像センター(AVC)
日本初導入となる超高精度ビジュアルモーションシステム「Kinesys(キネシス)」を駆使した映像演出を提案。
会場では様々な演出方法で来場客を引き付けていた
■エルテック
エルテックブースでは、軽量かつ精細なディスプレイで様々な環境下において対応可能な製品として、LEDディスプレイや4K/8Kディスプレイを展示。
10mmピッチ超軽量シースルーLED「i-max Light」。美術バトンにも吊ることができる軽量設計。屋外の悪天候時にも使用可能な防水規格IP65を実現