DaVinci Resolve Studio事例：映画「デッドプール2」の場合

2018.07.12

Blackmagic Designの発表によると、映画「デッドプール2」がEFILM所属のシニアカラリスト、スキップ・キンボル氏により、DaVinci Resolveを使ってカラーグレーディングされたという。

ライアン・レイノルズが皮肉屋で反抗的なスーパーヒーローを演じる「デッドプール」シリーズ。同シリーズの舞台は、X-Menの世界と隣接しているという設定ではあるが、この2つの世界は全く異なるルックとなっている。同作ではVFXが多く使用されており、また様々な条件下で撮影されたため、キンボル氏はジョナサン・シーラ撮影監督と緊密に協力しあうことで、カラーに対するシンプルなアプローチを確立したとしている。

キンボル氏：ジョナサンとはこれまでにも何度か一緒に仕事をしました。彼との仕事はとても楽しいですね。ジョナサンは極めて均一でわかりやすく撮影するため、作業にあたって彼の意図をすぐに汲み取ることができます。

同作の撮影にあたり、シーラ撮影監督は独自のルックの作成を意図していたため、それを反映する上でキンボル氏は全く新しい手法を取り入れることになった。

キンボル氏：本作のルックは、ジョナサンの希望により、コントラストが弱くソフトで、サチュレーションもそれほど高くありません。

これまでに様々なフォーマットを扱ってきた経験から、キンボル氏は「デッドプール2」の制作において、多様な素材の組み合わせやマッチングにも問題なく対応できたという。

キンボル氏：本作のルックをバランス調整する上で一番大変だったのは、多くのVFXスタジオから納品される膨大な量のビジュアルエフェクトのショットをシームレスに統合することでした。

撮影は、数週間に渡って様々なセットやロケ現場で行われたため、すべてがスムーズで一貫性があるようにすることがメインのゴールでした。例えば、車列の場面は10分に及ぶアクションシーンですが、それを構成する要素はブルーバックや、様々なロケ現場の異なる時間帯に撮影されました。

車列のシーンは、最終的にキンボル氏のお気に入りの場面で、シーケンスの流れを生み出すチャレンジを楽しんだという。

キンボル氏：外部マットとPower Windowを多用しました。また、カメラシェイクやブラーなどのDaVinci Resolveのプラグインを使用して、すべてが一体化するようにしました。

DaVinci Resolveを使用して、多種多様な素材を扱うことになった同作のワークフローを簡素化したという。

キンボル氏：DaVinci Resolveでは、カメラRAWフッテージを扱え、またVFXを様々な解像度でEXRフォーマットで書き出せます。また、DaVinci Resolveのプラグインはルックの作成に非常に便利ですね。OpenFXプラグインでは、ルックを作成する上でのクリエイティブな開始点を無数の中から選べます。

カラーグレーディングに対するキンボル氏のアプローチは、業界に足を踏み入れた当初にハワード・A・アンダーソン氏の会社でアシスタントとして様々なことをこなした当時に由来している。アンダーソン氏の会社でカラリストとしてのキャリアを始めて以来、キンボル氏は業界トップの監督や撮影監督の作品に多数関わってきた。カラリストとしての代表作には、「ゴーン・ベイビー・ゴーン」、「ネブラスカふたつの心をつなぐ旅」、「きっと、星のせいじゃない。」、「LOGAN/ローガン」、「ダウンサイズ」などが含まれ、すべてのカラーグレーディングにキンボル氏は1989年よりDaVinci Resolveを使用した。

キャリアを通して、キンボル氏は様々なテレビシリーズ、劇場映画、短編に携わってきており、その違いを楽しんでいるという。特に全く異なる作品に関わることに大きな喜びを得ており、Netflixの人気シリーズ「ストレンジャー・シングス未知の世界」や、ジェームズ・キャメロン監督の「アバター」もキンボル氏が手がけた作品だ。多様なジャンルのプロジェクトに携わってきたキンボル氏だが、現在でも基本を学ぶことは職業を学ぶ上で欠かせないことだと語る。