© Photo courtesy John Meloy

Blackmagic Designの発表によると、シアトルを拠点とするPunch Drunk Productionsが、URSA BroadcastおよびATEM Camera Control Panelを始めとするBlackmagic Design製品ですべて構成されたワークフローを用いて、ホーランド・アメリカラインの最新客船であるニュースタテンダム号の進水式をライブストリーミングしたという。

フロリダ州フォートローダーデールのエバーグレーズ港に停泊したニュースタテンダム号のWorld Stage Theaterからのライブストリーミングでは、同船の公式進水式の様子を伝えた。

進水式は、造船における古くからの儀式で、新造の船舶とその乗員や乗客に幸運と安全をもたらすものと信じられている。式では、ホーランド・アメリカラインのCEOであるオーランド・アシュフォード氏、ニュースタテンダム号の船長および乗員に加え、ホーランド・アメリカラインなど多数のクルーズブランドの運行会社であるカーニバル・コーポレーションのCEOであるアーノルド・ドナルド氏がスピーチを行ない、シャンパンボトルを船首で割る儀式で幕が落とされた。

式の様子は、ホーランド・アメリカラインのウェブサイト、Facebookページ、YouTubeチャンネルでライブストリーミングされ、世界各地から数十万におよぶ人々により視聴された。

生放送およびマルチカム制作会社であるPunch Drunk Productionsは、ライブイベントで生じる多様な問題を解決する手腕に長けた会社だ。ニュースタテンダム号の進水式の制作には、同社の創設者/クリエイティブ・ディレクターのジェイコブ・ストーン氏を筆頭に13名のスタッフが、制作における3つの課題を乗り越えられるソリューションを構築した。その過程において、Blackmagic Designの製品が、その使いやすさや画質、搬入のしやすさの面で優れていると判断され、ワークフローに導入されたという。

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ストーン氏:最初のハードルは、メインステージとコントロール室の設置場所が離れていたことです。ステージはクルーズ船内、コントロール室は陸に設置されました。

2番目のハードルは、放送当日の朝に船は海から港に戻り、その日の午後にライブストリーミングが行われたためスケジュールが非常に厳しかったことです。ステージとコントロール室の機器の接続を非常に短時間で行う必要がありました。

最後のハードルは、シャンパンが船の外側に打ち付けられたことです。ワイドショットに映り込まないように、船外にカメラを配置し、オーディオ収録用のマイクを設置する必要がありました。

Punch Drunk Productionsのチームは、4台のBlackmagic URSA BroadcastにFUJINONのHD放送レンズを取り付け、船の内外から映像をキャプチャし、ATEM Camera Control Panelでそれらのカメラのコントロールを行った。

また、各カメラにはVideo Assist 4Kがマウントされ、追加のモニターとして使用された。そしてエバーグレーズ港のコントロール室には、信号管理用のSmart Videohub 40×40ルーター、メインスイッチャーとしてATEM 4 M/E Broadcast Studio 4K、バックアップスイッチャーとしてATEM 2 M/E Broadcast Studio 4K、スイッチャーのコントロール用にATEM 1 M/E Advanced Panelが設置された。

ストーン氏:URSA BroadcastとATEM Camera Control Panelの組み合わせは画期的ですね。カメラは、ネイティブHDで、かつリモートで調整でき、サーボズームに対応したパーフォーカルレンズを取り付けられるB4マウントを搭載している必要がありました。この価格帯で、これだけの機能を搭載したカメラは市場に存在しません。

ATEM Camera Control Panelは、4つの独立したリモートコントロールパネルで構成されていて、Auxバススイッチが内蔵されているので、追加のSDI入出力を用意する必要はありません。イーサネットでシステムに接続するだけです。Blackmagic Designの製品は、高価な他社製品に搭載された機能と同等の機能を使用できます。

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同氏のチームはTactical Fiberを使用して、船内から陸上へのカメラフィード、インターコム、オーディオ、Auxリターンの24データチャンネルを送信した。そして各機器のテストを何度も重ね、船内での設置方法を事前に計算していた。さらに、ファイバーの全チャンネルはコントロール室の誰もが即座に識別できるようにラベル付けされた。

ストーン氏:この点でSmart Videohub 40×40ルーターは非常に活躍してくれました。パッチした後、ルーティングを瞬時に変更でき、船が海上を航行中に行なったリハーサルの際に適用した変更にも即座に反応してくれました。ATEM 4 M/E Broadcast Studio 4Kも、このプロセスにおいて欠かせない役割を果たしました

シャンパンを割る儀式のキャプチャには、テントの下にURSA Broadcastを設置し、海岸近くに配置したワイヤレス・ショットガンマイクの2チャンネルを使ってオーディオを録音した。また、コントロール室の外には長距離パラボラアンテナがマウントされた。このビデオフィードは、Mini Converter Optical Fiber 12Gを使用して、500フィート(150m)のTactical Fiberでコントロール室に直接送信され、その後、ISO収録した船外のショットは船のコントロール室にラウンドトリップされた。ここで船外カメラからのライブフィードが船内の出席者に向けて、巨大なLEDウォールに映し出された。

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さらに、コントロール室では、UltraStudio Mini RecorderでWirecastとOpen Broadcast Softwareを使用してウェブストリーミングを行った。グラフィックエフェクトの再生用に、カスタムソフトウェアを併用したHyperDeck Studio Miniが、1つはフィルの出力、もう1つはキーの出力に使用された。また7台のHyperDeck Studio ProでマスターおよびISO収録が行われた。

ストーン氏:HyperDeck Studio Miniの潜在能力の高さに最近になってようやく気づきました。例えば、グラフィックス担当者がHyperDeck Studio Miniでアルファチャンネル付きのProRes 444ファイルの再生をトリガーするソフトウェアを作成したのですが、これにより2つの個別のSDI出力が得られました。メディアはHyperDeck Studio Miniに保存され、ATEMのDVEシステムに直接フィードされます。つまり、類似した機能を搭載した機器に多額を費やす代わりに、わずか数万円の再生機器で専用のキー&フィル出力が使用できました。

今回のコントロール室はこのイベントのために特設されたので、このようなプロジェクトにはモジュール式のBlackmagic Designの製品は大変重宝します。Pelicanのキットに、それぞれ異なる構成で事前にカメラ一式を梱包して、準備万端の状態にしておきました。それを受け取ったカメラマンは、現場でカメラの位置に応じて、必要なアクセサリやツールを選んでセットアップしました。

Blackmagic Designの素晴らしい点は、放送機器を今まで触ったこともなかったような人にも手の届く存在にしたことですね。Punch Drunk Productionsのような放送会社でシステム一式を所有することができれば、実際の放送制作がいかに行われているかを次世代の人々に見せることができると思います。