吉積情報株式会社は、5月17日にG SuiteとCmosyに関するセミナーを東京・六本木にあるグーグル・クラウド・ジャパン合同会社 東京オフィスにて開催した。

「Cmosy(クモシィ)」は、放送・映像メディア・コンテンツ制作に携わるユーザーの作業効率の向上を目指して作られ、G Suite BusinessとGoogle Cloud Platformで構成されたクラウド型動画共有サービス。同セミナーでは、Googleのオフィスツアーや、Cmosyの紹介などが行われた。また、ゲストセッションでは、株式会社TBSテレビの峯松健太氏をゲストに招き、Cmosyを活用した事例紹介が行われた。

Googleセッション:G Suite Businessの紹介

Googleセッションでは、「G Suiteで実現する新しい働き方:GoogleのAIを徹底活用した業務効率化」と題し、グーグル・クラウド・ジャパン合同会社 アカウントエグゼクティブより、Cmosy上でも機能連携するドライブ・カレンダー・Groupsをはじめとするe-discovery(海外訴訟時の電子情報開示)など、Cmosyを活用するうえで知っておくべきG Suiteの機能を具体例を交えながら紹介を行った。

創業21年目を迎えたGoogleは、創業当時から「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」をミッションに事業を行ってきたという。そんなGoogleがもうひとつのミッションとして「AIを、すべての人に」をミッションに掲げてAIに投資しており、検索、Android、Gmail、Chromeなどの様々なサービスでAIを活用している。

Googleがコンシューマーのビジネスで提供している安心・安全なインフラ、そして人々の生活が便利になるようなAIの技術をプライベートの場ではなく、ビジネスの場でもユーザーに活用してほしいという想いから法人向けの事業部「Google Cloud」が作られた。そのGoogle Cloudの最たるものが「G Suite」だ。

無償版で提供しているツール・サービスを、企業ユースに合わせて最適化したものがG Suiteとなる。もうひとつの特長としては、色々な機能がオールインワンになっており、それぞれの機能が連携していることだという。

G Suiteの導入効果は「効率的なチームワーク」「データへのアクセスもスマートに」「AIで実現する作業効率化」の3つに分けられる。

■「効率的なチームワーク」

Googleでは1人で仕事をするのではなく、チームのみんなで仕事を行う方針となっている。「よい仕事というのは1人で行うよりも、チーム1人1人、多様性を持った人が、コミュニケーションを取って連携を取りながら行った方が、個人で行った仕事よりもより良い成果がでるということを信じています」。“個人の力よりもチームの力を最大化”とGoogleは考えているようだ。

この考えを仕事のケースで活用できる場の例として資料作成が挙げられる。資料作成に使用するアプリケーションは個人差業を前提に作られた製品が多く、個々の作業の進捗がみえない、マージ作業の工数、変更箇所が不明瞭、面倒なバージョン管理など、個人作業の連鎖による手間が発生する。

G Suiteでは考え方を変え、1つの資料に対してみんながアクセスし、みんなで資料作成を行うことが可能な「コラボレーション」機能を用意した。お互いの作業進捗が確認でき、他の人が編集しているのを待つ必要もないため、みんなが一気に、同時にアクセスすることで、編集の待ち時間がなくなり、仕事がより効率的になるとしている。

今年の4月に発表されたG Suiteの新機能では、フォーマットやファイル形式を変えずに、Microsoft Officeファイルの編集、コメント、共同作業が可能になる

その他にも、オフィスでのコミュニケーション不足による様々な弊害(気軽に話かけられない、ツールばバラバラ、物理的な移動を伴う会議など)の解消として、チャットを活用したコミュニケーションや、ビデオ会議での効率化を推奨している。

■「データへのアクセスもスマートに」

業務の中で情報を検索することに多くの時間を費やしていることを示すグラフ

人々は業務の中で、情報を検索することに多くの時間を費やしており、この時間をできるだけ短くすることをGoogleは考えた。また、データを探す際に、社内のPCのみでしか検索できないと業務がはかどらないため、G Suiteでは社外にいてもモバイルデバイスから社内の中のデータを探して見つけることが可能だ。

G Suiteでは、ドライブ内にあるファイルは“ググって”検索可能。検索はファイル名だけでなく、ファイルの中身まで検索し、文字を認識して検索結果を表示する

社内でGoogle検索を使用でき、社外からでもモバイルデバイスで検索できるため、必要なデータにすぐアクセス可能。また、Googleの技術を使うことで、情報が記載されていなくても、動画、画像、PDFなどに入っている文字の情報もAIが認識して簡単に検索できるようになっている。

最後に「今日ご紹介した機能はG Suiteでできることのほんのわずか一部ですが、一部だけでもかなりお客様の現場のスピードや作業効率が劇的に変わるような機能がたくさんございます。G Suiteを使うことによってより皆様の仕事をより早く、スマートに、そしてみんなで仕事をする環境を実現するのがG Suiteという製品です」とコメントしてた。

Cmosyセッション:クラウドフル活用で番組制作Cmosyの紹介

吉積情報株式会社 Cmosy事業部 セールスリーダー 塚本翔太氏

同セッションでは、Cmosyの機能や活用方法、機械学習の取り組みについてをデモを交えながら紹介。

Cmosyは、大容量の動画を共有するために必須の4つのキーワード「安全」「無制限」「高速」「便利」全ての機能が備わった「映像制作のためのグループウェア」として生まれた、G Suite BusinessとGoogle Cloud Platformで構成されたクラウド型動画共有サービス。

放送局のニーズに合わせて作成されたCmosyは、放送局を中心に導入が増えているという。放送局の場合、容量無制限で使用できるGoogleドライブにより、安全にファイルを共有することができることが一番の導入ポイントだと、吉積情報株式会社 Cmosy事業部 セールスリーダー 塚本翔太氏はコメントしていた。

Cmosyでは映像制作や放送業界に特化したサービスはそのままに、各ニーズに対応したラインナップが用意されている

Cmosyを利用するメリットとして、G Suiteの単体だけだと「社外ユーザーとの共有」「ファイル一元管理」「セキュリティ」の面が難しいと塚本氏は語る。

社外ユーザーとのファイル共有については、Googleドライブの設定で基本的には外部ドメインとの共有を禁止する設定になっているかと思いますが、そうなるとG SuiteのGoogleドライブの共有が社内共有用になってしまう傾向にあり、G Suiteを使って社外と共有するのはG Suite単体では難しいです。また、ファイルの一元管理をしまして、社内用にはG Suiteを使用し、社外とのやり取りに関してはまた別のクラウドサービスを契約して運用している場合があります。

また、セキュリティに関しては社外とやり取りするうえで必要な機能です。Cmosyにはパスワードやダウンロードの有効期限を設定したり、アクセスログを残すなどの機能が搭載されています。

また、Cmosyを導入するにあたって特にお伝えしたい強みはファイルの一元管理ができることです。Cmosyを使用すればGoogleドライブに保存したファイルを社外のユーザーとセキュアなやり取りができますので、外部のクラウドサービスを契約する必要がなくなり、二重管理が不要で、クラウドの費用(コスト)も二重になることがありません。Googleドライブにファイルを集約しながら、社外のユーザーとやり取りができるのが強みではないかと思います。

Cmosy Professionalの機能一覧

Cmosy Professionalでは、上記写真にあるように9つの機能が使用可能。同セミナーではその中からファイルの共有機能が紹介された。ファイル共有機能は下記の通り。

■ファイル便

ドメイン外の社外ユーザーにファイル送信
G Suiteのセキュリティポリシー(外部共有拒否)を保持しながらファイルをセキュアに送信する。

「いつ・誰が・誰に」送信したログが残る
無料のファイル宅配便ではファイルの送信履歴などが残らないが、Cmosyのファイル便ではユーザーの利用ログが全て残るため、責任の所在を突き止めることが可能。

■共有便

ドメイン外の社外ユーザーとファイルを共有
G Suiteのセキュリティポリシー(外部共有拒否)を保持しながら、ファイルを外部ユーザーと共有できる。

ホワイトリスト機能で接続ユーザーを制限
外部公開を許可する対象のドメインに制限をかけることが可能。

■集荷便

ドメイン外の社外ユーザーからファイルを受信
G Suiteのセキュリティポリシー(外部共有拒否)を保持しながらファイルをセキュアに受信する。

直接ドライブでファイル受信が可能
集荷先の社外ユーザーから集荷したファイルが、直接任意のGoogleドライブフォルダにアップロードされる(アップロード通知あり)ため、PCのローカルにダウンロードしてからクラウドにファイルをアップロードする作業が不要となる。

ファイル共有機能の導入事例として、アニメPV一気観イベント「つづきみ」でのCmosy活用方法が紹介された。

「つづきみ」での集荷便使用のワークフロー

新作アニメのプロモーション映像をイッキ観する「つづきみ」は、2016年に有志によりスタートしたイベント。

イベント開催の際には複数の人から動画素材(ファイル)を受け取る必要がある。その際の問題点として、「メールに気がつかない」「ダウンロードの有効期限が切れてしまう」「外出先での対応が難しい」「ダウンロードファイルの整理がめんどくさい」「ファイルサーバーを立てる資金がない」などの課題があった。

「つづきみ」では主にCmosyの集荷便を使用しており、Cmosy導入後には課題となっていたダウンロードの有効期限切れの解消や、Googleドライブ上で取り回し可能になったことで指定のフォルダに格納できるようになったこと、最低限での予算で運営可能になったとしている。

松永氏は「イベントを継続するにあたり、インフラを整えるというところで、Cmosyさんには非常にご協力いただいているので、これからもCmosyを使用していきたいと思います」とコメントしていた。

また、吉積情報の塚本氏は、今後のCmosy開発予定(ロードマップ)として、AIパートナーであるV-NEXTとの連携による「スポンサーロゴの自動摘出」と、「YouTubeとの連携」(7月中にリリース予定)の紹介を行った。

G SuiteとCmosyの活用事例紹介

株式会社TBSテレビ 峯松健太氏

TBSテレビでは、G Suite Business、Cmosyを全社で導入し運用している。

最初に、「今回Cmosyを紹介する理由は、Webサービスはみんなが使えばより便利になっていくので、是非参考にしていただければと思い、ご紹介させていただくことになりました」と、株式会社TBSテレビの峯松健太氏はコメント。

Gogole Driveで社外共有を禁止していながらも、Cmosyの機能をフル活用することにより、利便性を損なうことなくセキュアにやり取りできる運用方法について紹介した。

現在ではG suiteのIDは7000(Cmosy:約1000人が利用)となり、使用されているドライブの容量は635TB(取材時時点)と、1営業日につき約1TB増加しているという。TBSテレビ内の利用者からは「速い。サクサク動く」「容量無制限がよい」「スマホで確認できて便利」「グループ機能便利」などの声が上がっているようだ。